時代劇が好き、という話。
別に今の時代が悪いというわけではないが、江戸の侍全盛の時代劇を見ると、やはりかの時代は素晴らしい人情と風情があったのだなあと思う。
町人や農民たちにとってはまだ世界が日本列島で完結していた頃だが、だからこそ彼らの言動には、広く強力な社会に対する無常観は感じないし、まあなにかと無邪気なのだ。生活は、苦しかったのだろうが。
何か一つ薦めるなら、やはり『鬼平犯科帳』だろう。中村吉右衛門がかっこよすぎるのだ。前に挙げた無邪気さとはまた違うのだろうが、醸し出されるおおらかさと底しれない恐ろしさのバランスが絶妙である。
おまけに、料理がうまそう。流石健啖家・池波正太郎。
このような名作は、かの時代について私は無知であるから、小説で読んでもあまり妄想の解像度が高くならないというのもある。そんな同朋にも、時代劇はおすすめだ(歴史小説が嫌いなわけでは決してない。いずれ語ってみよう)。
そういえば、時代劇に出てくる路端の小さな蕎麦屋。今でいう屋台の感覚なのだろうが、そこで酒を一杯ひっかけ、夜風を黙って眺め、静かに代金を置いてのれんを抜ける、というのが私の密かな夢だ。
