見出し画像

斜め前の住人、新井さん

今朝玄関を開けた瞬間に斜め前に住む新井さんと目があった。
ゴミ出しのために出ただけだから、すっぴんでダル着だったから焦る。

「三日月さんが出てへんかなおもて見てたんやけど、もうないわ」


新井さんは、確か83歳で、私たちが10年前に引っ越してきた時はご主人がまだご健在だった。
しばらくしてご主人がデイサービスに通うようになった時は「おらんと楽でええねんわ〜」と言ってたけど、3年くらい前にご主人が亡くなられてからは「まだ家にいるような気がする、静かなんは寂しい」と言っていた。

でも新井さんは家の前で息子さんがやってる畑の野菜を売っていて、それが安くて美味しいからなかなかの人気で、絶えず人が来るし、新井さん自身も人を捕まえておしゃべりするのが好きな人だから、まぁ寂しいといっても退屈するようなことはないんだろうなという感じ。
近所の人や野菜ファンの奥さん方だけじゃなく、通学中の高校生の男の子も立ち話をしていてたりする。なんとその子は卒業してから、わざわざ大学が決まったことまで報告に来ていた。たまたま出くわしたわたしも話に巻き込まれ、一緒に大学合格を祝った。

そう。
話が長くて用事の手が止まることがまぁぶっちゃけ面倒くさい時もあるし、居ないか確認して出る時もある。これを夫に話すと、「それもう嫌ってるやん」と言われたけど、決してそんなことはない。
距離感は欲しいだけ。


新井さんが最初に月の話をしてこられたのは半年くらい前だった。その時季節は冬で、朝の8時頃でもまだうっすら暗めの空に満月がわりとはっきり見えていて、そのことを教えてくれた。
「月見るくらいしかすることもないねん、暇やろ」と笑っていたけど、意外と乙女なところがあるなと思った。夜に月を見ようと思うことはあっても、朝に月を見ようと思った事はないから。
しかもそんな寒い中で。

もしかしたら、ご主人と思い出でもあるんだろうか?お空に行ったご主人を思って見上げた時から、朝の月をみることが習慣になったんだろうか。
夜は危ないから。


いや考えすぎか。


「最近目が霞む」と言っていたから、月探すのも一苦労になるんじゃないだろうか。

月が夜のものだけじゃないことを教えてもらえて良かった。
ほんとにただ暇だから見ているのだとしても、朝に月を見るような感性がわたしは好きだ。

いいなと思ったら応援しよう!