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戯曲・夜光虫【ショートショート#138】(1200字)

▼今週のお題
■セリフ
「見て、光ってる」
■三題
・宇宙
・スープ
・虫よけ


登場人物

浜口 大学生。
水島 大学生。 
荒川 釣り船「荒川屋」の船長。
磯野 近所の釣り人。



船着き場に二人の男が並んで立っている。ラフな服装の若者と対照的に、偏光サングラスをかけた完全装備の男。浜口と磯野である。

そこへ荒川が入ってくる。漁師を思わせる格好。

荒川「え~、乗船予定だった皆さま、申し訳ない。赤潮が大発生しているので船は出せません」

荒川が頭を下げて、去っていく。

磯野「やっぱり。でも、残念だなぁ」
浜口「……」
磯野「君もそう肩を落とさないで。また来ればいいじゃない」
浜口「はぁ。そうですけど」
磯野「君、もしかして大学生?」
浜口「ええ」
磯野「若いのにひとりで海釣りなんていい趣味してるねぇ」
浜口「ひとり……」
磯野「あれ? 誰か連れがいたの?」

そこへ水島が走りながら入ってくる。

水島「ごめんごめん、待った?」
浜口「どこに行ってたの」

水島、ハンドバッグからスプレー缶を出す。

水島「虫よけスプレー。コンビニで買ってきた」
浜口「それ、もう必要ないかも……」

浜口に促されて、海の方を見るなり悲鳴をあげる。





水島「なにこれ」
磯野「赤潮ですよ。全部プランクトン」

水島、磯野に気づいて軽く会釈する。不審そうな表情。

浜口「こちら、釣り船で乗り合いする予定だった方」
水島「だった?」
磯野「中止になっちゃったんです、さっき」
水島「じゃあ、今日どうするのよ」
浜口「……」
磯野「失礼ですけど、お二人はどういう関係で?」
水島「ただの友達です。大学の」

水島、きっぱり言い切る。

磯野「へぇ~、そういうこと」
水島「何か勘違いしてません?」
磯野「いえ、何にも」
水島「じゃあ、今日は解散でいい?」
浜口「ええっと……」

浜口がまごついていると、脇から荒川が入ってくる。

荒川「彼女さん、いま帰っちゃうのはもったいないよ。今夜は船を出すかもしれない」
水島「(苛立ちながら)え、誰?」
浜口「ここの船長さん」
荒川「どっかで時間潰して、夜にまた来なよ」
水島「まだ二時ですけど……」
浜口「そうだ。海鮮の味噌汁で有名な店、見つけたんだ」
水島「いいよ。さっき行った店、微妙だったじゃない」
浜口「そうだけど……」
磯野「そちらさん、もしかして海鮮がお好きなんですか?」
水島「この人たち、何なの?」
浜口「俺もよく知らない……」
磯野「私ね。この辺りで一番うまい店、知ってるんです。ガイドブックにも食べログにも載ってない穴場なんですけど」
荒川「例の店だろ? うまいよなぁ、あそこ」
磯野「ですよねぇ」
水島「……」

水島、何かを考えている様子。

浜口「そ、そうだよ。行ってみようよ。せっかくだしさ」
荒川「じゃあ、今夜七時にここで集合でいい?」

暗転。

夜の船着き場。荒川が船を出す準備をしている。そこへ、浜口と水島が並んで入ってくる。

浜口「あっ、どうも船長さん」
荒川「来た来た。どうだった?」
水島「すごく美味しかったです」
浜口「あのー、昼の釣り人の方は……?」
荒川「磯野さん? 飲み過ぎたからキャンセルだって。さっき連絡が来たよ。二人で夜釣りを楽しんで、だってさ」
水島「やっぱ勘違いしてるよ」
浜口「まぁまぁ。(海を見て息を呑む)見て、光ってる
水島「わっ!?」
荒川「夜光虫。知られざる赤潮の夜の姿だよ」
水島「きれい。まるで銀河、宇宙みたい」
荒川「さぁ乗った。ナイトクルーズといこうか」





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