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幌加内で楽しむ3つのこと——湯けむり、手打ちそば、廃線の記憶

幌加内町は、旭川市の北西に位置する人口約1,300人の小さな町だ。そばの作付面積・生産量は日本一を誇り、国内観測史上最低気温マイナス41.2度を記録した極寒の地としても知られる。

私が幌加内を初めて訪れたのは、7年前のことだ。旭川空港に降り立ち、天売島行きのフェリーが出る羽幌を目指す途中に通りかかった。最短ルートは留萌経由だが、幌加内がそばの名産地であることは知っていたため、お昼にそばを食べようと幌加内経由を選んだ。羽幌発のフェリーは翌朝の便で、この日は遠別町に宿をとっていたので、時間に余裕があった。

幌加内で入ったのは「雪月花」。確かせいろだったと思うが、キリッと冷たいそばの美味しさに本当に驚いた。思わずお店の方に「おいしいですね~」と話しかけてしまうほどのインパクトだった。そしてその後、せいわ温泉のそばの里で、おそらく人生初のそばのおかわりをした。それが幌加内との出会いだった。

旭川市内から道道72号線で、江丹別峠を越えて275号線に入ると、山々に囲まれながらも視界が大きく開ける。どこまでも続く直線道路の両脇には、北海道らしいおおらかな景色が広がり、走っているだけで気持ちがいい。そのまままっすぐ進むと、日本一のそばの産地、幌加内町に到着する。ここは温泉があり、個性豊かなそば屋があり、そして廃線の記憶が残る町だ。旭川から1時間足らずで、こんなにも濃い旅ができる場所が北海道にある。

ひとっ風呂、まずはここから——せいわ温泉ルオント

道の駅「森と湖の里ほろかない」に併設された「せいわ温泉ルオント」は、フィンランド語で「自然」を意味する名のとおり、三角屋根に時計塔がついた西洋風の建物だ。天塩山系三頭山の山麓に湧く「三頭の湯」は、ナトリウム塩化物泉。湯冷めしにくい「熱の湯」として知られ、露天風呂からは深い森が静かに広がる。

施設は清潔感にあふれ、心地よい雰囲気だ。入浴料は大人600円とリーズナブル。ただし、タオルのレンタルはなく、持参しない場合はタオル200円、バスタオル400円で購入する必要がある。できればレンタルを用意してほしいところだが、事前に準備しておけば問題ない。ロビーには無料の足湯もあり、さっと立ち寄るだけでも十分に満足できる。

温泉の後は、館内の蕎麦ダイニング「そばの里」へ。

手打ちそばはコシがあり、不揃いな太さが歯ごたえの変化と味わいをもたらす。つゆはちょうどよい甘みでそばとの相性が抜群。

かき揚げはあげたてで、サクサクの食感が心地よい。そして食後のそば湯は、幌加内産の「新種ほろみのり」「きたわせ」「きたみつき」3品種を独自にブレンドしたもので、クリーミーでマイルドな仕上がり。お代わり自由なのもうれしい。

幌加内そばをもう一軒——そばごう

せいわ温泉から幌加内の中心街へ向かう道中、ふと視界に緑のトラス橋が現れる。深名線の鉄橋跡だ。川と山と青空の中にひっそりと立つその姿は、もう列車が来ないとわかっていても、確かにここに鉄道があったことを静かに伝えている。

中心街に入ると、国道275号線沿いに、「そばごう」がある。もりそばは、「そばの里」に比べてすっきりとさっぱりした印象で、するすると入っていく軽やかな食べ口だ。たれも甘くない。そば湯もさっぱりしており、口の中がすっきりと締まる。同じ幌加内のそばでも、店ごとにこれだけ個性が違う。はしごして食べ比べてこそわかる楽しさがここにある。

2軒に共通していたのは、美味たるは無論のこと、そばがとびきり冷たいことだ。日本一の最寒記録を持つ幌加内のこと、水そのものが冷たいのかもしれない——などと想像しながら食べるのも、旅の楽しみのひとつだ。

廃線から30年、それでも駅舎は残っていた——深名線の記憶

かつて深川と名寄を結んでいたJR深名線は、1995年9月4日に廃止された。その沿線に、廃止後30年を経た今も木造駅舎が残っている。

実は私自身、廃線前に深名線へ乗ったことがある。中学生のころのことで、前夜の夜行列車での寝不足がたたり、ボックスシートに寝転がってずっと眠っていた記憶しかない。それでも、あの車窓の風景はどこかに残っている気がする。

1929年(昭和4年)開業の沼牛駅は、廃線後に地元の方が個人で買い取り、20年以上にわたってひとりで雪下ろしや補修を続けてきた。その後有志による「おかえり沼牛駅実行委員会」が結成され、クラウドファンディングを経て2016年に現役当時の姿を取り戻している。赤い屋根の木造駅舎が青空に映える姿は、凛としていて、どこか切ない。

深名線の廃駅は沼牛だけではない。鷹泊、政和、添牛内にも木造駅舎が残っており、それぞれが異なる形で保存・活用されている。なかでも添牛内駅は、地元有志がクラウドファンディングで修繕費を集め、2022年に美しい姿を取り戻した。幌加内を訪れるたびに、一駅ずつ巡っていくのも一つの楽しみ方だ。

なお、沼牛駅舎は個人管理の歴史的建造物のため、内部は通常非公開。イベント開催時のみ一般公開される。訪問前に「おかえり沼牛駅」のFacebookページで情報を確認しておきたい。

行くための情報

幌加内町へはJRバス深名線(深川ターミナル経由)でアクセスできるが、便数が非常に少ないため、観光客にはレンタカーがおすすめだ。

せいわ温泉ルオント 📍 北海道雨竜郡幌加内町字幌加内 🚃 JRバス深名線「ルオント」バス停下車、徒歩約3分 🚗 旭川市内から道道72号線、国道275号線経由で約1時間 🅿️ あり ⚠️ 水曜定休、10:00〜21:00(20:30最終受付)

そばごう 📍 北海道雨竜郡幌加内町幌加内1284 🚗 旭川市内から道道72号線、国道275号線経由で約1時間 🅿️ あり ⚠️ 水曜定休(11月〜4月は水・木曜定休)、11:00〜20:00(17時以降は売り切れ次第終了)

沼牛駅 📍 北海道雨竜郡幌加内町字下幌加内 🚗 幌加内市街地から(そばごう)から車で約10分 🅿️ 駅前スペースあり ⚠️ 内部は通常非公開。イベント時のみ一般公開

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