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第4回AICESセミナー「学び直しの肺保護戦略」開催報告

2026年1月29日、秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻看護学講座の工藤光生先生をお招きし、第4回AICESセミナー「学び直しの肺保護戦略」を開催いたしました。

「肺保護」というパラダイムについて、多職種で共有することが大切ですね!

セミナー概要

本セミナーでは、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)における肺保護換気戦略について、基礎から最新の個別化医療まで幅広く学びました。工藤先生は急性・重症患者看護専門看護師として、臨床現場での豊富な経験を基に、わかりやすく丁寧にご講演くださいました。

主な内容

1. ARDSとbaby lungの理解

ARDSは炎症によって肺の密度が増加し、重力方向に沿って肺の含気が不均一に分布する病態です。仰臥位では背側が虚脱しやすく、換気できる肺は通常、腹側の非依存性肺領域に限定されます。その容量は5〜6歳児の肺容量に相当することから「baby lung」と呼ばれています。

最近の研究では、活発な炎症領域は虚脱した領域ではなく、換気されている正常な肺領域に観察されることが明らかになっており、この知見が肺保護戦略の重要性を裏付けています。

2. 人工呼吸器関連肺損傷(VILI)

「baby lung」へのストレス(圧力)とストレイン(伸び)が増加することで、過伸展、炎症の悪化、肺損傷の進行という悪循環が生じます。このメカニズムの理解が、適切な換気設定の基盤となります。

3. ARMA試験から学ぶ標準的戦略

2000年のARMA試験は、一回換気量を12 mL/kgから6 mL/kgに減らすことで、死亡率を39.8%から31.0%に低下させることを示しました。これは肺保護換気の有効性を証明した歴史的転換点です。

肺保護換気の基本原則は:

  • 一回換気量を予測体重あたり6 mL/kgに制限

  • プラトー圧を30 cmH₂O以下に維持

  • PEEPで背側の無気肺を予防

4. 個別化医療への展望

しかし、ARMA試験以降もARDS患者の死亡率は劇的には改善していません。これは、ARDSという多様な病態を持つ集団に対して、一律の治療法を適用しようとした結果と考えられています。

たくさんの臨床試験が行われましたが、なかなか打開策は打ち出せず…

そこで注目されているのが個別化戦略です:

一回換気量とPEEPの個別化とそのためのモニタリング技術の進歩

駆動圧(ΔP)
一回換気量を呼吸器系コンプライアンスで正規化することで、実際の肺のサイズを反映。駆動圧は生存率と最も強く関連しています。

リクルータビリティの評価(R/I比)
PEEP 15から5 cmH₂Oにしたときの呼気一回換気量に基づいて計算されます。R/I比が0.5-0.7以上の場合、高PEEPの恩恵を受けやすいと考えられます。

食道バルーン測定法
気道内圧を経肺圧と胸腔内圧に分離するための技術。特に肥満患者(BMI > 30 kg/m²)での有効性が報告されています。

電気インピーダンストモグラフィー(EIT)
肺換気をリアルタイムで可視化し、虚脱領域と過膨張領域を定量化することで、最適PEEPの決定に役立ちます。

EITを使うことで、暗黙的にやっていたケアの効果を確認できます

5. 機械学習によるフェノタイプ分類

最新の研究では、機械学習モデルがARDSを「高炎症型」と「低炎症型」に分類し、それぞれのフェノタイプに応じた治療戦略の有効性が確認されています。

まとめ

換気戦略は、特定の介入に反応する可能性の高いサブグループの特定により、個別化されるべきです。標準医療から個別化医療への移行は、ARDS患者の予後改善に向けた重要な一歩となるでしょう。

工藤先生の講演は、基礎から最先端まで網羅的でありながら、臨床での実践を見据えた実用的な内容でした。参加者からは「駆動圧やR/I比など、明日から使える知識が得られた」「EITの可能性に興味を持った」といった声が寄せられました。


次回のAICESセミナーもお楽しみに!

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