二人の父と働いた男が知る「二代目の現実」 職人達のそれぞれの背中
SNSにこんな問いかけがありました。
「自営業の二代目で、父親と一緒に働いたことがある方いますか?」
私は即座にこう書き込みました。
実の父とも、義父とも、両方あります、と。
これは珍しい経験だと思います。
実父は小さな町工場の経営者で旋盤を操る職人。
義父は理容の職人で、お客様の髪と向き合うことに人生を捧げた人でした。
二人とも、子に家業を継がせるという夢を叶え
そして私は、その両方と肩を並べて働きました。
「二代目あるある」と言えば、親とのいさかい。
これは避けられないでしょう。
仕事への考え方、段取りの組み方、お客さんへの向き合い方。
すべてに世代と経験の差があります。
うまくいかないとき、その摩擦は熱を帯び我がぶつかる場面も。
面白かったのはそのいさかいへの二人の対応。
実父はなんとか私と軌道修正しようとするタイプでした。
言葉にして、書いて、図に描いて、説明して来ます。
対外的な仕事も精力的にこなし、考えを表現することを恐れない人でした。
ぶつかっても必ずどこかへ着地しようとしていましたね。
義父は遠くから見守りながら
察して動いてほしいと思うタイプでした。
口数は少なく、仕事の姿勢そのもので語る人。
ひたすらに理容を探求し言葉ではなく手と技で示す。
心配性でハラハラしながらも
気づけば私を肯定する言葉をかけてくれました。
どちらが正しいということではなく
ただ、二人とも仕事への真剣さは本物で、共通していました。
実父は、任せられると感じたら手を引く人。
「もういい」ではなく、「もう信じた」という手の引き方で
任せられると思ったら姿が見えなくなります。
苦手なことは素直に頼る姿勢は今でも覚えています。
義父は、最後まで心配していました。
それでも否定はせずに
私がやろうとすることに対して
正面から反対することはほとんどなかった。
ハラハラしながら、それでも「お前ならできる」という期待をまとっていました。
その優しさは、今思えばひとつの器量だったと思います。
突然の病で不本意にお客様を任せてしまう。
家族を支える責任を負わせてしまう申し訳なさ。
立派な太鼓判は押してもらえませんでしたが
引き継いだ理容は今も続いています。
今も事務室の壁には、実父の直筆が掛かっています。
「日常の五心」は仕事への心構え、かくあるべきという生き方を綴った言葉。
店内には、義父の写真を飾っています。
常連のお客さんが来ると、ふと話題になることがあります。
「そういえば先代は……」と誰かが口を開くしんみりした空気の中に、温かさが。
二人はもういません。
でも、事務室と店内に、それぞれの形で残っているのです。
職人とはどういう存在か、とふと考えます。
旋盤を操りながら考え、書き、表現した父。
理容を探求しながら、口よりも手で語った義父。
二人のやり方はまるで違いましたが、どちらも私の財産。
二人の仕事への姿勢をそれぞれ別の引き出しに入れながら
お客様の悩みに向き合うとき
どちらかの父が影でそっと支えているような気がすることがあります。
二人の魂に恥じない仕事をしたい。
それだけは、ぶれずにいようと思っています。
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守り神こんぺーが見守る理容白石の、小さくてあたたかい物語をお届けしています。サポートはこんぺーの幸運のコンペイトウに変わって、またあなたのもとへ戻っていきます