460.【WACK峮峮スピンオフ#29】みこちゃんと編集会議
大家好。今回はWACK峮峮スピンオフの29回目、第2部の9回目です。舞台を如水珈琲店に移し、みこちゃんの再登場です。コラボできるところが、noteの良さですね。
今回は「WACK峮峮スピンオフ#28」の続きに当たります。「WACK峮峮スピンオフ#28」は次のリンクをご覧ください。
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如水珈琲店のテラス席。もう外は夜の帳が下りようとしている頃、店内ではレトロなランプが温かさを届けていた。
丸武群は、いつの間にか赤ちゃんから成長したみこちゃんと話していた。昔はやり手の赤ちゃんスカウトだったが、今は出版社で編集者をやっているとのことだった。そこで、趣味で渾身の思いで書いている小説がうまくいかないことを相談したいと、電話で呼び出したのだった。
初めは丸武は編集会議のつもりだったが、次第に人生相談の様相を呈していった。
「それで丸さんはどこをどうしたいの」
みこちゃんはそう聞いてきた。
「峮峮スピンオフを書いてたんだけど、疲れてしまってね。作中の峮峮は暴走してるし、当麻に引っかき回されてる。小説に振り回されて、精神的なバランスを崩しそうなんだが、私がおかしいのかな」
「登場人物が暴れ出すのは、むしろいいことだと思うよ」
「へぇ~そうなの。そう言えば、白さんもそんなこと言ってたけど」
「小説は『書けない、書けない、書けない!』、これに陥ることが、すごく深刻。それよりも、登場人物に振り回される方がよっぽどいい!というか、それが小説を書くことなの」
「いいアドバイス!メモしとく……」
「これね、自分で何もかもコントロールしようとしちゃうから、書けない病になっちゃうの。そういう方が大半ね。小説家のお仕事は登場人物のイタコなの。じっと静かに耳を澄ませて、今この登場人物は何を言いたいのかなと声を聞くことで、それを言葉に置き換える。それが小説家の役割なのね。自分で登場人物をいじっちゃだめ。だから、丸さんの悩みはそれでいいのよ」
「そうか、自分でコントロールしようとしない方がいいんだね」
「それを忘れちゃうと、今度は、登場人物が何も言ってくれなくなっちゃって、小説そのものが停滞するよ」
ここで間を置いてから、みこちゃんは続けた。
「ただ、丸さんが感じてるように、そのまんま声を聞いていると、登場人物がそれぞれしゃべりすぎるのよね。そこをうまく小説として仕上げるにはコツが一つあるの」
「コツ……かあ」
みこちゃんは何を教えてくれるのだろう。丸武はみこちゃんを見た。
「例えば、この間の赤ちゃんみこちゃんが登場する回だけど……。あれは、峮峮さんと親友さんが爆発方向に行くのを、赤ちゃんみこちゃんが抑えるという全体構造になってるのね」
「赤ちゃんが抑える……」
「そう。二人で盛り上がりすぎちゃうと小説の方向が見えなくなっちゃいかねないんだけど、赤ちゃんみこちゃんが一言言うと、ああなるほど、ってふたりとも冷静になっていた。静かにいい形で自然に暴走が抑制されてたよね」
「そうか、赤ちゃんみこちゃん大王には、小説の作り方としてそういう意味合いがあったんだ」
丸武は少し驚いた。
「つまり丸さんは、前回その暴走を抑えることがすでにできていたのよ」
成長したみこちゃんはさらに頼もしくそう言って、丸武を励ましてくれた。
「つまり……。作者がコントロールしようとして抑えつけるのではなくて、登場人物同士に抑制させるといいと思うよ。あくまでも登場人物は自由にやらせる。でも、別キャラで暴走を抑える。そうすれば抑えた側、この間の例で言えば、みこちゃん大王のキャラも立ってくるとね」
丸武は頼んだアイスコーヒーの氷がどんどん溶けて薄まっていくのも忘れてつぶやいた。
「スゴい!登場人物のイタコ、全体のバランスを考えて、登場人物同士に抑制させる……う~ん、うなるしかないなぁ」
「丸さん、コーヒー飲んだら」
みこちゃんは白い歯をこぼして苦笑気味に言った。
「ああ、そうだね」
薄まったアイスコーヒーがなぜだか美味しかった。
「あれですよ、丸さんはアスリートで多摩川の土手走ってる。みこちゃんは、メガホン持って自転車に乗って『がんばれー』と言っている。 そんな感じでゴールまで行きましょう!小説が書けなくなる理由は一つだけ。迷うから。迷いがなくなるアドバイスをするよ。丸さんだったらコーヒーおごってくれたらそれでいいよ」
ここから、ようやく具体的な編集の話に移った。みこちゃんは小説のテクニックではなく、小説を書くということはどういうことなのか、それを教えてくれたのだった。
丸武が言う。
「初めの予定より、分量が増えてる感じで進んでる。やっぱり6月になるかな」
「ああ、それは楽しさ優先で。丸さんのペースでいいですよ」
「じゃあ、それで。で、一番肝心なこと。小説のタイトルが決まってない。タイトル付けるのは、みこちゃんの方がうまいと思うのでやってほしい」
「ラジャー!いいよ。丸さんが最後まで書いてから、一番しっくりいくのを一緒に考えようね」
「ありがとう。あと、一つの小説に仕上げるにあたって必要なことは何かな……」
「ほんのちょっとでもいいから、登場人物が、最初登場したときよりもなんだか成長している、優しくなっている、大人になったね。そんなことがわかるように、登場人物がこの物語のお蔭でもっと幸せになった。それを読者が共有できたらいいね。読者も、丸さんの小説を通じて、それを実感したいと思うはずなんだ」
「最後のシーンは、noteで発表しないで書き下ろしにしようと思ってる」
「いいと思うよ」
「ありがと」
丸武は思った。
(またさらに頼もしくなったな、みこちゃん……)
「小説は最後までできてるの」
「構想はね。Julieが活躍するんだ」
そんな2人に白さんが声を掛けた。
「みこちゃんと群ちゃんも聞いてもらえるかな」
そこには、Julieが浮かない顔で立っていた。
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Julieは何を話すのでしょうか。物語は「転」に向かって進んでいきます。
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峮峮スピンオフは、スピードアップして続きます。
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