<AI小説>もしフレミングが右手でジャンケンしたら
一章 帝国ホテル、明治四十一年の夏
「Mr. Fleming, 日本へようこそ」
案内役の東京帝大・山田助教授が深く頭を下げた。
白い髭をたくわえた英国の老学者は、汗ばむ額をハンカチで押さえながら答える。
「いやはや、ロンドンより湿度が凄いね。電気の研究どころか、私が蒸発しそうだ」
学会の合間、学生たちが中庭で輪になっている。
「さいしょはグー、じゃんけんぽん!」
パー、チョキ、グー。勝った学生が「やった!」と駆け出す。
フレミングは目を丸くした。
「Wait, wait!それは……Rock, Paper, Scissors ではないか!」
二章 右手がうずく
「まったく同じだ!石はハサミに勝ち、ハサミは紙に勝ち、紙は石に勝つ。三すくみ構造、実に見事。わが国ではRock, Paper, Scissorsという」
フレミングは興奮して学生の輪に割り込んだ。
「よろしい、私も参戦しよう」
学生が笑う。「先生、掛け声は “じゃんけんぽん” ですよ」
「Janken-pon, eh? よかろう」
「さいしょはグー、じゃんけんぽん!」
フレミングはニヤリと笑い、右手を突き出した。人差し指だけを立て、親指を横に、中指を直角に曲げる奇妙なグー。
「Rock!……いや違う、これは電流だ!」
学生たち「?」
「諸君、よく見るのだ。私の右手の人差し指が磁界 B の方向、親指が電流 I の方向、すると中指が力 F の方向を示す!つまり君たちのグーは……」
「先生、それパーです」
「なに? ペーパー? 違う、これはフレミングの右手の法則!モーターが回る原理だ!」
学生は困惑しながらもパーを出す。フレミングの三本指は、どう見ても反則負けの謎ポーズ。
「私の勝ちだ。科学の勝ちだ」胸を張るフレミング。
三章 学会発表
翌日の学会で、フレミングは熱弁をふるった。
「日本の諸君はすでに電磁気学を遊戯に組み込んでいたのだ!Janken とは、Junior Ampere’s Kinetic Energy Notation の略に違いない!」
会場、静まり返る。
山田助教授が小声で囁く。「フレミング先生……それは違います」
「なに? ならばなぜ右手を使う?」
「いえ、右手を使うとは決まってません。左手の人もいます」
「Left hand……だと?」
フレミング、蒼白になる。
「Left hand rule……それは……ジェラルドの……弟の……フレミングの左手の法則……発電機……」
終章 オチ
その夜、帝国ホテルのバー。
フレミングはウィスキーを煽りながら呟いた。
「私が右手でじゃんけんをしたせいで、学生たちは今ごろ電磁気学の単位を落としているかもしれん」
山田助教授が慰める。
「でも先生、今日のじゃんけん大会、先生の優勝ですよ」
「勝敗はどう決めたんだ?」
「先生が “右手の法則” を出した瞬間、全員が “意味わからん” でパーを出して負けを認めました」
フレミング、グラスを掲げる。
「科学とは、時として暴力であるな」
翌週、東京帝大の物理科掲示板に貼り紙が出た。
『今後、じゃんけんに右手の法則、左手の法則、およびビオ・サバールの法則の使用を禁ず』
以来、イギリス紳士が日本でじゃんけんを挑むと、学生は必ずこう言うようになったという。
「先生、普通のグーでお願いします」
おしまい
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解説:ジョン・フレミングとこの小説

小説としての読みどころ
1.「右手の法則」でじゃんけんに参戦
フレミングは「グー」を出すつもりが、職業病で人差し指・親指・中指を立てる「右手の法則ポーズ」をしてしまう。
→ 本人はドヤ顔で「Rock!」と言ってるのに、学生から見れば「それパーです」と突っ込まれるズレが笑いどころ。
2.勝手に学術的意味をこじつける
「Janken とは Junior Ampere’s Kinetic Energy Notation の略に違いない!」
→ 完全にこじつけの大真面目なトンデモ解釈。学会で発表までしてしまう暴走ぶりが、真面目な学者とのギャップでおかしい。
3.右手と左手の混同パニック
「左手の人もいます」と言われた瞬間、「左手の法則……発電機……」と蒼白になる。
→ 右手=モーター、左手=発電機と覚えるのが電磁気学の定番。じゃんけんで左右を指摘されただけで学問的アイデンティティが崩壊しかけるのがシュール。
4.勝ち方が物理的に強引
学生が「意味わからん」でパーを出して負けを認めて優勝。
→ 「科学とは、時として暴力であるな」という本人の締めが、負け惜しみじゃなくて開き直ってて面白い。
5.大学の貼り紙オチ
『今後、じゃんけんに右手の法則、左手の法則、およびビオ・サバールの法則の使用を禁ず』
→ 被害が広がりすぎて大学が正式に禁止令を出すレベル。学生の平和なじゃんけんが、来日した学者一人で物理学の実技試験に変わってしまった後日談が効いてる。
要するに 「偉大な学者が異文化に触れてテンション上がりすぎ、持ってる知識を全部じゃんけんにぶち込んで場を混乱させる」 という、理系あるある×異文化交流のズレが笑いの核になってます。
