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天国について考えていたら、玉ねぎに裏切られた

玉ねぎを切って涙が止まらなくなったとき、僕は「これは天国には要らない仕組みだろう」と思いました。そこから1分32秒の曲を作りました。

よければ聴きながら読んでください。

地獄に比べて、天国は語られない

匿名ラジオ「俺達にとっての『最高の天国』と『最悪な地獄』を考えよう!」の回で、天国と地獄の具体的な姿が語られていました。地獄の描写は針山や血の池といくらでもあるのに、天国についてはあまり語られない。天国とはどんなところか考えてみると、ストレスや不満が一切ないのも辛いのではないか。

それを聞きながら、思いどおりにならない今の世界こそ、案外おもしろく調整された場所なのかもしれないと考えました。 不便も失敗も退屈も、長く過ごすために残された余白なのではないか。

台所でその仮説が断ち切られた

そんなことを考えながら、玉ねぎに包丁を入れて何切れか刻んだところで、目の奥がつんとして、視界がにじむ。手を止めても涙は止まらない。

設計された世界なら、こんな仕様があるはずがない。

そう考えると、粗いところが目につきます。
誰かが考えて作ったにしては、大切で繊細な眼球が剥き出しで危ない。
物語の主役の人生にしては、飛行機の中とか暇すぎる。

やっぱりこの世界は誰かが丁寧に作ったものでもないし、自分は世界の主役でもなんでもない。玉ねぎの仕様に文句を言う先はどこにもないけど、僕が何をしても物語を台無しにすることもない。
これは悪いことなのか良いことなのか、考えながら歌詞にしました。

できた歌詞

ここが誰かが作った理想の世界なら
玉ねぎを切って涙なんか出ないよな
ヒトがどこかの誰かの作り物なら
軟骨が消耗品?杜撰な設計だ
考えられてない たまたまの世界や生き物
嫌になったら誰に言えばいい?

全てが僕のための舞台装置なら
夜空を飾るだけの星が大きすぎるだろう
僕がこの世界の主人公なら
撮れ高のない散歩もできない
過大な宇宙に 数多ある命のひとつが
好きに生きている
ただそれだけ

unio

玉ねぎの根に、地球の場所を描く

ジャケットに描いたのは玉ねぎです。背景を黒くして惑星に見えるようにもしました。動画やこの記事の見出し画像に使っています。

根の形には、ボイジャーのゴールデンレコードに刻まれたパルサーマップを引用しています。 地球外生命体向けに太陽系の場所を示す図です。

「ゴールデンレコード」のジャケットと、それに添えられた地球外生命体向けの説明書
https://science.nasa.gov/mission/voyager/golden-record-cover/より引用

遥か彼方の誰かへ向けた印によって、地球や人間だけが特別な存在ではないことを絵にも残せると考えました。

最初はもっとリアルな根を描くつもりでしたが、うまく描けませんでした。それならいっそ、と幾何学的な線に変えたところ、不気味で意味ありげに見えるようになりました。 結果的にこれでよかった、と自分に言い聞かせています。配られたカードで戦うしかない。

音の中にも切った玉ねぎ

「玉ねぎを切って涙なんか出ないよな」の箇所で、左側から奇妙な音が入ります。これは自分が歌った「玉ねぎ」という声を、歪ませ、逆再生し、切り貼りしたものです。歌詞に合わせて音の中でも玉ねぎを切りました。

冒頭から鳴っているアコースティックギターのような音は、実はエレキギターの生音です。作り物ではない世界について歌っているのに、音のほうは作り物から始まっている。ライン出力の音も同時に録音していて、2番ではその音を左側から加えています。二つは完全に同期しているため、一つの音にも二つの音にも聞こえます。

1番で鳴る鐘は、理想の世界である天国から連想した音です。また、サビ冒頭の「考えられてない」の「かーん」に鐘の響きを重ねて、擬音語と音色を合わせました。これは面白い。

他にも歌詞に合わせた音をいくつも入れています。こういうアイデアを取り入れる瞬間が、音楽を作っていて一番楽しいんです。

「unio」になるまで

歌詞を書き終えたあと、内容を一語で表すタイトルを探しました。
今振り返ってみればジャケットも玉ねぎ全面押し出しですが、タイトルを決めるまではこんなはずではなかった。

発想のきっかけは「物語の本質は細部にある」という雑談(積読チャンネル「34歳凡人、自分の人生が最高だと気づく。#84」)。 この動画で、シンデレラをシンデレラらしくしているのは物語の構造ではなくガラスの靴というアイテムである、と語られていました。

この曲だったらアイテムはなんだろうか?
他の歌詞にはあまり登場しないものなら、玉ねぎ、軟骨でしょうか。

ただし、「玉ねぎ」「軟骨」では味気ない居酒屋のメニュー。

少しひねれないかと調べると、英語のonionはラテン語のunioにさかのぼり、その語は「一つ」を意味するunusと結びついていると知りました。
動詞のunioには「一つに結びつける」という意味があります。

そして歌詞の終盤で「数多ある命のひとつ」というフレーズが出てきます。 玉ねぎというこの曲のアイテムと、自分も数多ある命のひとつであるという主張をunioする。

そうして、この曲は「unio」になりました。

初めて作った歌なので、短い曲にできるだけ遊びを詰め込みました。
泣きながら玉ねぎを切ったとき、この世界のバグを見つけたときに、この曲を思い出してもらえたら嬉しいです。

参考リンク


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