IT/ICT系メモ|【Cloudflare(クラウドフレア)の大規模障害】|インターネットが壊れた? 悪意ある攻撃を遮断するシステムが起こしたこの障害の理由とは
2025年11月18日に発生した、Cloudflare(クラウドフレア)による大規模なインターネット障害。
XやチャットGPTが一時利用できない不具合が発生して影響を受けた方も少なくないでしょう。
「何が起きたのか」「なぜ起きたのか」少し書いてみますので読んでみてください。
◆何が起きたのか ― インターネットの“入口”での障害
障害が始まったのは、11月18日21時頃。
この時点で、Cloudflareネットワークを通過するトラフィック(ユーザーアクセスなど)に「エラー」が多発し始めました。
障害の影響は世界規模。多くの著名サービスが影響を受けています。例: ChatGPT(OpenAI)、X(旧Twitter)、Spotify、Uber、 Canva 等々。
Webサイトやサービスにアクセスしようとすると、エラー画面などが出て進まないという状況が世界中で起きたわけです。
◆なぜ起きたのか?「攻撃を遮断する仕組み」が逆に裏目に?
では、このような障害はなぜ起きたのでしょうか。
主な原因として以下の点が挙げられています。
・「異常なトラフィックの急激な上昇」
Cloudflare自身の発表によれば、「異常な/予期せぬトラフィックの急増」が観察されたことが引き金となっています。
このトラフィック急増が、Cloudflareのネットワークを通過する際の「正常なサービス処理」の能力を一時的に超えてしまったようです。
・「設定ファイル/構成ファイル」の肥大化/ソフトウェアのクラッシュ
Cloudflareの「脅威トラフィック(悪意あるアクセス)を管理するための構成ファイル(設定ファイル)が、許容されるサイズを超えて肥大化」し、その結果、この設定を扱うソフトウェアシステムがクラッシュまたは機能低下を起こした可能性があるという事です。
普段は「攻撃と判断されるトラフィック」をフィルタリング/遮断/管理する設定が運用されている。
突然、膨大なアクセスが来た(トラフィックスパイク)→ “脅威管理設定”の対象になる/追加されるトラフィックパターンが増える。
管理用設定ファイル/ルール数が膨大化し、ソフトウェアがその処理を追い切れなくなった。
結果として「通常の(善意の)トラフィック」も遮断、サービス不能または遅延という状態に至った。
・「攻撃(ハッキング・DDoS)ではない」との見解
重要な点として、Cloudflare自身は「外部からの悪意ある攻撃(例えば大規模なDDoS)が原因だという証拠は現時点では確認されていない」としています。
つまり、「自社の防御メカニズムが何らかの形で暴走もしくは限界を迎えた」という“内部起因”の可能性が高いと見られています。
つまり悪意あるサイバー攻撃ではなく、通信機器などの何らかの設定ミスやプログラムのバグが引き金で起きた可能性が高いという事です。
◆何が“インターネットが壊れた”ように見えたか
この障害が“インターネットが壊れた?”と感じられた背景には、以下のような事情があります。
Cloudflareが 世界中のウェブサイト・サービスの入口的役割 を担っているため、ここが機能不全に陥ると“あちこちでアクセス不能”となる。
多数の大手/知名度の高いサービス(ChatGPT、X、Spotify 等)が同時に影響を受けたため、ユーザーにとって「複数サイトが一斉に落ちた」ように映った。
エラーメッセージ(500 や「続行するには、challenges.cloudflare.com のブロックを解除してください。」など)や、アクセスできても極端に遅い/読み込みできないといった症状が確認されました。
障害発生が世界的に同時に起きたため、普通とは違い状況を感じられた。
こうした要素が重なり、「インターネット全体がダウンしたのでは?」という印象を生んだわけです。
◆クラウドフレアは「インターネットの入口」に立つ巨大ネットワーク
クラウドフレアを一言で表すなら、
「世界中に張り巡らされた高速ネットワークを使い、あなたのサイトを守りながら速くするサービス」
です。
一般的なウェブアクセスは次のように動きます。
ユーザーがブラウザからサイトにアクセス
インターネットを経由
対象のサイトデータが保存されているサーバーへ到達
サーバーが応答を返す
クラウドフレアを導入すると、この 2〜3 の間に Cloudflare が“中継地点”として挟まる ようになります。
これにより何が起こるのか?
①サーバーに届く前に 悪意ある攻撃を遮断
Cloudflareは世界中から流入するリクエストに対して、
WAF(Web Application Firewall)、
Bot対策、
DDoS防御システム
など複数のセキュリティレイヤーを持っています。
これらの仕組みにより、Webサーバーに到達する前に
SQLインジェクション
クロスサイトスクリプティング
管理画面への総当たり攻撃(ブルートフォース)
既知の悪質IPアドレスからのアクセス
不自然な頻度でのリクエスト
大量の同時接続を狙うDDoS攻撃
といった 攻撃として判定される行為はすべてクラウドフレア側で止められます。
これにより、Webサーバーは安全な通信だけを処理すればいい 状態になります。
結果として、
サーバーの負荷が激減
攻撃対策の設定がシンプルになる
ダウンのリスクが低減
という、運用上の大きなメリットが生まれます。
②世界中のエッジサーバーがキャッシュ配信 → 超高速化
Cloudflareは、世界100か国以上・300以上の拠点に「エッジサーバー(CDNの末端拠点)」を配置しています。
CDN:コンテンツデリバリネットワーク(content delivery network)とは、ウェブコンテンツをインターネット経由で配信するために最適化されたネットワークのこと。
例えば、あるユーザーが日本からアクセスした場合は、日本国内にあるCloudflareのサーバーがユーザーに最も近い場所で応答します。
Cloudflareは静的ファイル(サーバーが要求されたファイルに対して処理をすることがなくそのままブラウザに送信するだけのもの)をキャッシュできるため、
画像
CSS
JavaScript
HTML(設定次第)
などをオリジナルのサーバーではなくCloudflareから返せるようになります。
これにより、
ページ表示速度が大幅に向上
海外からのアクセスでも速い
サーバー負荷が減る
レイテンシ(遅延)が激減
といった恩恵を受けられます。
つまり、Cloudflareは「サイトを世界中にコピーして通信距離が近いところ置いてくれている」ようなイメージです。
③サーバーのIPを隠すことで 攻撃されにくくなる
Cloudflareを利用すると、外部から見えるIPアドレス(=アクセスの接続先)はすべてCloudflareになります。
本物のサーバーのIPアドレスは外から見えなくなります。
これは非常に強力で、
直接IPに向けて攻撃するスキャン
サーバーへの直接DDoS
管理画面への不正アクセス
未知のポートを狙う攻撃
などの ダイレクト攻撃” がほぼ無効化できます。
インターネット上では、常に無数のボットがIPアドレスをスキャンし、
攻撃可能なサーバーを探し続けています。
Cloudflareを挟むことで、その探索に対して本物のサーバーはスキャン対象から完全に姿を消せる のです。
④HTTPSや最適化が自動で入るため 設定なしでセキュアに
Cloudflareを使うと、サーバー側で複雑なTLS設定(HTTPS化)を行わなくても、Cloudflareが自動で証明書を配布し、ユーザーとの通信を暗号化してくれます。
具体的には、
無料でSSL証明書が発行
有効期限切れの心配がない
最新暗号スイートに自動対応
HTTP/2・HTTP/3(QUIC)も自動で利用
Brotli圧縮などの高速化設定も自動
など、とにかく何もしなくても最新のセキュリティ規格で保護されるのが大きな特徴です。
運用者がやることは、ドメインの DNS(ネームサーバー)を Cloudflare の指定するものに設定するだけで、暗号化・圧縮・最適化・キャッシュ・防御が一気に有効になります。
なぜDNSを変えるだけでCloudflareの機能が使えるのかを簡単に説明すると、DNSにCloudflareを設定すると、
「ユーザー → Cloudflare → あなたのサーバー」
という経路で自動でインターネットの仕組みが判断して通信が流れるようになるから。
これによりCloudflareは中継地点となり、①②③④を行い、本当のサーバーにはCloudflare が検査した後の安全な通信だけが届く仕組みです。
クラウドフレアは単なるCDNではなく、「セキュリティ+高速化+可用性」を同時に実現するクラウド基盤となっているのです。
◆Cloudflareが原因の大規模障害事例
2020年7月17日の大規模障害
発生時刻: 2020年7月17日
影響範囲: Cloudflareの全ネットワーク・トラフィックの約50%がダウン。エッジサーバーがもつキャッシュにより完全停止はしなかった。
主な被害サービス: Discord、Feedly、Shopify、Politico、League of Legends など多数。
詳細:当時、米国ニューアークとシカゴ間のバックボーン回線(主要な通信網)で混雑が発生していました。
エンジニアがこの混雑を解消するため、一部の通信を迂回させようとして、アトランタにあるルーターの設定を変更したところ、その設定変更の中に、「バックボーン全体のすべてのトラフィックをアトランタ経由にする」という指示が誤って含まれていました。
その結果、世界中のCloudflareの通信が、物理的にアトランタのルーター1台に向かって殺到、当然、処理能力を瞬時に超えてアトランタの拠点がダウン。
さらに、その影響が連鎖して世界中のネットワーク(南北アメリカ、ヨーロッパなど)がアクセス不能になりました。
2022年6月21日の「19のデータセンター」ダウン
発生日: 2022年6月21日
影響範囲: 東京を含む世界の主要19都市のデータセンターがオフラインになり、Discord、Shopify、Feedlyなどの大手サービスがダウン。
原因: BGP(経路制御)設定のミス。
詳細: ネットワーク設定の変更作業中、誤った設定が含まれたまま展開されました。
これにより、最もトラフィックの多い主要拠点の通信経路が遮断され、広範囲に影響が出ました。
2024年6月20日のDDoS対策ルール起因の障害
発生日: 2024年6月20日
影響範囲: 全世界(HTTPエラー率の上昇、接続遅延)
原因: DDoS防御ルールのバグ。
詳細: 新しいDDoS軽減ルールを展開したところ、特定のHTTPリクエストに対してシステムが無限ループに陥るバグが含まれていました。
これによりCPU使用率が急上昇し、サーバーが過負荷状態となって正常なトラフィックまで処理できなくなりました。
2025年6月12日:Workers KV の障害
発生日:2025年6月12日~13日
影響範囲:WARP、Access、Gateway、Images、Stream、Workers AI、Turnstile、Challenges、Zaraz など
原因:Google Cloud 側の障害
詳細:Cloudflare の KVストレージがサードパーティ(Google Cloud)基盤に依存していた部分があり、Google Cloud 側の障害がトリガーになった。
KV(キーバリュー)とはデータをキーとバリュー(値)のペアで格納する最もシンプルな形式のデータベース。
Cloudflare の「Workers KV(キー・バリューストア)」が利用できず、これに依存する多くのサービスでデータを読み書きできなくなり、それに依存する認証機能や設定管理機能が連鎖的にダウンしました。
◆まとめ
この障害と影響から「設定の重み」を理解しましょう。
自分の家、会社のネットワーク、さらに大きなシステムなど、規模が大きくなるほど設定1個の影響範囲は指数関数的に広がる。
なにか変更をするときは、失敗前提で何が起きても対処できるに計画することが大事です。
もし何か障害が出て迷ったら、疑いのあるものを一旦切り離して、他への影響を最小限にする準備もしておくべきです。
そしてもし障害が大きく広がった場合は、「原因」を探るのも必要ですが、その不具合が広がったこと連鎖したことの理由にも注意が必要です。
ITインフラの価値は、「問題が起きないこと」ではなく、「問題が起きたときにどれだけ短時間で復旧し、事業を継続できるか」で決まります。
サイバー攻撃やクラウドサービスの障害は、もはや “起きるかも?” ではなく “いつ起きるか?” の世界です。
どれほど堅牢に設計しても、想定外の障害や広域トラブルは必ず発生します。
システムの可用性は構成要素の強さではなく、“全体として倒れない構造” によって初めて実現できる、という基本をあらためて考える必要があるでしょう。
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次回は「NVIDIA」について書いていますので、お時間あれば読んでみてください。
IT/ICT関係の日々の出来事から日記代わりにいろいろ書いています。
前回の記事も時間がありましたら読んでみてください。
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