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魔法少女エターナルリンクre:Link第27話 『白き少女の視線』

教室の空気が、静かに張り詰めていた。
春の陽射し。
窓から差し込む柔らかな光。
昼前特有の穏やかな空気。
本来なら、ただそれだけの時間だったはずなのに。
「……アリア=ルクスリアです」
転校生の少女が、小さく頭を下げる。
金髪ロング。
透き通るような碧眼。
白い肌。
その姿は、美しい。
けれど。
“綺麗すぎる”。
まるで。
人間を模して作られた何かみたいに。
ユノカ=シオンは、無意識に息を止めていた。
胸元の鈴が、まだ微かに熱を持っている。
――チリン。
小さな音。
その瞬間。
頭の奥で、ミルカが低く呟いた。
(……間違いない)
『……何が?』
ユノカも視線を逸らせない。
アリアの碧眼。
その奥に、“感情”が薄い。
笑っている。
けれど。
人間の笑い方じゃない。
(……あれ、“天使側”)
ミルカの声が、僅かに硬い。
『……え』
ユノカの背筋へ、冷たいものが走る。
だが。
次の瞬間。
アリアが、真っ直ぐユノカを見た。
その瞬間だった。
——ゾワッ。
全身の毛が逆立つ。
まるで。
“中”まで見透かされたみたいな感覚。
教室の喧騒が遠のく。
世界が、静かになる。
アリアの碧眼だけが、異様に鮮明だった。
そして。
彼女はほんの少しだけ、目を細める。
「……」
その表情を見た瞬間。
ミルカの気配が、ユノカの奥で強く揺れた。
(……なんで)
『ミルカ?』
(あいつ、前の世界にはいなかった)
その言葉に。
ユノカの胸がざわつく。
前の世界。
そこに存在しなかった存在。
つまり——
“今回初めて現れた誤差”。
その意味を理解した瞬間、空気の重さが変わった。
「それじゃあアリアさん、あそこの席ね」
教師が窓際を指差す。
よりにもよって。
ユノカの、斜め後ろ。
「……よろしくお願いします」
アリアは静かに歩き出す。
足音が小さい。
静かすぎる。
普通の人間なら、もう少し生活音がある。
けれど。
彼女には、それがない。
まるで。
“重さ”が存在しないみたいに。
その時だった。
サクラの肩が、小さく震える。
「……っ」
顔色が悪い。
ピンク色の髪の隙間から見える表情は、明らかに青ざめていた。
ユノカが小さく声をかける。
「……サクラ?」
「え……?」
サクラは、はっとしたように顔を上げた。
だが。
その瞳は、微かに揺れている。
「だ、大丈夫……」
そう言った瞬間。
アリアが、静かにサクラを見た。
その瞬間だった。
——ガンッ!!
サクラの頭へ、激しいノイズが走る。
白い世界。
崩壊。
無数の羽根。
そして。
“誰か”が泣いている。
『逃げて!!』
知らない声。
でも。
どうしようもなく悲しい。
「……ぁ……」
サクラが、思わず頭を押さえる。
教室の空気がざわつく。
「サクラ!?」
エリナが慌てて立ち上がる。
ユノカも咄嗟に手を伸ばした。
その瞬間。
アリアの碧眼が、静かに細められる。
——観察。
まるで。
何かを“確認”しているみたいな目。
ミルカが、低く呟いた。
(……こいつ)
(サクラを見てる)
ユノカの背筋へ、冷たいものが走る。
サクラは苦しそうに息をしている。
その姿を見た瞬間。
胸の奥で、“守らなきゃ”という感情が強く膨れ上がった。
理由なんてわからない。
でも。
この子だけは。
絶対に壊させたくない。
その時だった。
「……大丈夫ですか?」
アリアが、静かにサクラへ近づく。
優しい声。
綺麗な笑顔。
でも。
ユノカは反射的に、その前へ立っていた。
「……っ」
教室の空気が、一瞬止まる。
アリアの碧眼。
ユノカのオッドアイ。
視線が交差する。
その瞬間。
——ドクン。
ユノカの中の“夜”が、反応した。
ミルカが低く笑う。
(……へぇ)
(やっぱり、気づいてるんだ)
アリアは、そんなユノカを静かに見つめていた。
そして。
ほんの僅かに微笑む。
その笑みは、美しかった。
けれど。
どうしようもなく、“白”だった。
「……そうですか」
小さな声。
その瞬間。
ユノカだけに聞こえるように、アリアが囁く。
「——やはり、あなたでしたか」
背筋が凍る。
同時に。
頭の奥で、ミルカの声が静かに響いた。
(……最悪)
(向こう、“本気”で来てる)
春の日差しの中。
教室だけが、静かに戦場へ変わり始めていた。
🌸
つづく

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