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魔法少女エターナルリンクre:Link第15話 『夕暮れの屋上、赤い瞳』

放課後。

校舎は、昼間とは別の顔を見せ始めていた。

部活動へ向かう生徒たちの声。

廊下を駆ける足音。

吹奏楽部の音が遠くから微かに聞こえる。

窓の外では、夕陽が空を赤く染めていた。

春の終わりに近づく夕暮れは、どこか切ない。

サクラ=ミラージュは、一人で廊下を歩いていた。

胸の奥が、まだざわついている。

昼休み。

ユノカへ触れた瞬間に流れ込んできた、あの光景。

崩壊した世界。

泣いている自分。

血塗れのユノカ。

『また、会おう』

あの声が、頭から離れない。

「……なんなの……」

小さく呟く。

怖かった。

でも。

それ以上に、“失う”感覚が怖かった。

初めて会ったばかりのはずなのに。

なのに。

どうしてあんなに苦しいのか。

その時。

「こっち」

不意に声がした。

振り向く。

そこには、壁へ寄りかかるカレンがいた。

黒髪。

赤い瞳。

制服を少し着崩した姿。

夕陽を背に立つその姿は、妙に影が濃い。

「……カレン」

サクラが小さく呟く。

カレンは面倒そうに髪をかき上げると、そのまま歩き出した。

「ついてきて」

「え、どこに……」

「いいから」

有無を言わせない口調。

サクラは少し迷ったあと、その背中を追いかけた。

連れて来られたのは、旧校舎側の屋上だった。

普段はほとんど人が来ない場所。

フェンス越しに見える街並みが、夕焼けへ染まっている。

風が吹く。

サクラのピンク色の髪が揺れた。

カレンはフェンスへ寄りかかりながら、しばらく黙っていた。

まるで。

言葉を選んでいるみたいに。

やがて。

小さく息を吐く。

「……サクラ」

「う、うん」

「ユノカと、あんま近づきすぎない方がいい」

その言葉に、サクラの胸が跳ねた。

「……え?」

意味がわからない。

でも。

カレンの声は、冗談じゃなかった。

赤い瞳が、真っ直ぐこちらを見ている。

その奥には。

焦りみたいなものが滲んでいた。

「……どうして?」

問い返す。

すると。

カレンは一瞬だけ視線を逸らした。

「……嫌な予感がするから」

「嫌な予感?」

「そう」

短い返答。

けれど。

それだけじゃないと、サクラにも分かった。

風が吹く。

夕陽が、カレンの横顔を赤く照らしていた。

「……私」

カレンが、ぽつりと呟く。

一人称。

それが自然に零れる。

「最近、変な夢見る」

サクラの呼吸が止まる。

「……夢」

「白い世界とか」

「崩れた街とか」

「……血とか」

その瞬間。

サクラの瞳が大きく揺れた。

——同じ。

自分も見た。

同じ夢を。

「……っ」

胸が苦しくなる。

カレンは、それを見て小さく目を細めた。

「やっぱり」

「サクラも見てるんだ」

その声には、確信があった。

サクラはゆっくり頷く。

「……ユノカが」

声が震える。

「……消える夢を見た」

夕陽の中。

その言葉だけが、妙に重く響いた。

カレンの表情が、ほんの少しだけ歪む。

まるで。

“知っていた”みたいに。

「……最悪」

小さな舌打ち。

その声音には、苛立ちより恐怖が混ざっていた。

サクラは思わず問いかける。

「……カレン、何か知ってるの?」

沈黙。

風が吹く。

フェンスが小さく軋む音だけが聞こえた。

やがて。

カレンは低く呟く。

「……知らない」

「でも」

赤い瞳が、夕焼けの中で揺れる。

「ユノカが死ぬ光景だけは、嫌ってほど頭に残ってる」

その瞬間。

サクラの胸が、強く痛んだ。

「……っ」

知らないはずなのに。

聞きたくない言葉だった。

まるで。

“本当にあった未来”みたいで。

カレンは、そんなサクラを見ながら静かに拳を握る。

頭の奥で、断片的な映像が流れていた。

黒い翼。

血塗れのユノカ。

泣いているサクラ。

そして。

最後まで笑おうとしていた、あの顔。

『……またな』

「……っ」

カレンはぎり、と奥歯を噛み締めた。

どうして。

どうしてこんな感情が残っているのか。

知らない。

でも。

あの笑顔だけは。

どうしても、“失いたくない”と思ってしまう。

その時だった。

——チリン。

どこからか、鈴の音が聞こえた。

サクラの身体がびくりと震える。

カレンの赤い瞳も、大きく揺れた。

次の瞬間。

空の向こう。

夕焼けの雲間に——

“白い羽根”が舞った。

空気が変わる。

重い。

冷たい。

まるで。

“何か”がこちらを見ているみたいに。

カレンが舌打ちする。

「……もう来やがったか」

「え……?」

サクラが顔を上げる。

その瞬間。

頭の奥で、誰かの声が響いた。

『観測対象、再接触を確認』

感情のない声。

機械みたいな音。

『誤差拡大中』

『修正を開始します』

夕焼けの空で。

再び、“天使”が動き始めていた。

🌆

つづく

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