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魔法少女エターナルリンクre:Link第30話 『放課後、揺れる日常』

昼休みが終わってからも、教室の空気はどこか落ち着かなかった。
原因は明白だった。
アリア=ルクスリア。
転校初日にも関わらず、彼女は既にクラスの中心になりかけていた。
男子は遠巻きに見ているだけで緊張し、女子たちは「あの髪綺麗すぎない?」と小声で盛り上がっている。
だが。
誰も、“違和感”の正体には気づいていない。
気づいているのは——ユノカたちだけだった。
「……」
ユノカ=シオンは、授業中も何度か後ろを振り返りそうになっていた。
感じる。
視線を。
アリアは、時々じっとこちらを見ている。
その碧眼は綺麗だ。
けれど。
感情が薄い。
まるで。
“人間を学習している途中”みたいな目。
(……ずっと見てる)
ミルカが小さく呟く。
『……うん』
(完全に興味持たれてるね)
その声は少し嫌そうだった。
だが。
どこか警戒も混ざっている。
(あの子、多分まだ“完成してない”)
『完成?』
(普通の天使なら、もっと機械的)
ミルカの声が静かになる。
(でもあれ、感情を持ち始めてる)
それが危険だった。
“白”が感情を知れば、どうなるのか。
前の世界でも、そんな存在はいなかった。
だからこそ読めない。
その時。
教室のチャイムが鳴った。
放課後。
一日の終わりを告げる音。
同時に、クラスの空気が一気に緩む。
「やっと終わったぁー!」
エリナが机へ突っ伏した。
金髪ショートが揺れる。
「数学が敵すぎる……」
「寝てたから」
セナが即座にツッコむ。
「寝てないもん! 目閉じて考えてただけ!」
「寝てた」
「ステラまで!?」
後ろではステラが静かに頷いていた。
今日も平和だった。
少なくとも、表面上は。
ユノカは小さく息を吐きながら立ち上がる。
すると。
サクラが少し不安そうに近づいてきた。
「……ユノカ」
「ん?」
「今日、部活だよね」
「うん。弓道部」
サクラは少し迷ってから、小さく笑った。
「……気をつけてね」
その言葉に、ユノカの胸が少しだけ熱くなる。
“気をつけて”。
ただそれだけ。
でも。
サクラが言うと、不思議と特別に聞こえた。
「……ありがと」
ユノカが少し照れながら返すと、サクラも少しだけ嬉しそうに笑った。
その瞬間だった。
教室の後ろ。
アリアの碧眼が、静かにこちらを見ていた。
——ドクン。
胸がざわつく。
アリアは、じっとサクラを見ている。
正確には。
“ユノカとサクラの距離”を観察していた。
その瞳が、ほんの僅かに揺れる。
「……?」
アリア自身も、理解できていないみたいだった。
胸の奥が、少し苦しい。
視界が落ち着かない。
思考処理が乱れる。
それが何なのか、まだ分からない。
だが。
彼女は確かに、“感情”へ触れ始めていた。

「じゃあ私たち帰るねー!」
校門前。
エリナが元気よく手を振る。
隣ではサクラも小さく頭を下げた。
「また明日」
「うん」
ユノカも軽く手を振り返す。
帰宅部組。
エリナ、サクラ、ルナ、ステラはそのまま駅方面へ向かうらしい。
一方。
ユノカとセナは、校舎裏へ続く道を歩き始めた。
向かう先は、弓道場。
夕暮れが近づき始めている。
空は少しずつ橙色へ変わり、春風が桜を揺らしていた。
「……姉さん」
歩きながら、セナが静かに口を開く。
「転校生」
「……うん」
「危険」
短い言葉。
でも。
その重みは十分伝わった。
ユノカも小さく頷く。
「わかってる」
本能が警告している。
アリアは危険だ。
でも。
同時に——妙な違和感もある。
敵。
なのに。
どこか、“迷っている”みたいな目をしていた。
(……見られてる)
ミルカが低く呟く。
『え?』
(後ろ)
ユノカの足が止まりかける。
振り返りそうになる。
だが。
ミルカが止めた。
(見るな)
空気が変わる。
夕暮れ。
校舎の窓。
その一つ。
三階の端。
そこに、金色の髪が見えた。
アリア。
静かにこちらを見下ろしている。
碧眼。
その視線は、まるで——
“観察対象を見失わないため”みたいだった。
風が吹く。
桜が舞う。
そして。
アリアは、小さく呟いた。
「……理解不能」
誰にも聞こえないほど小さな声。
だが。
その碧眼には、確かに“揺らぎ”が生まれ始めていた。
🌸
つづく

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