見出し画像

魔法少女エターナルリンクre:Link第22話 『夜を裂く白』

——ズドォォォン!!
轟音が、夜の神社を揺らした。
鳥居が崩れる。
木片が宙を舞う。
衝撃波が石段を駆け抜け、周囲の木々を大きく揺らした。
満月の下。
静かだった夜は、一瞬で“戦場”へ変わる。
「っ……!」
ヴァルティアが咄嗟に片手を掲げる。
赤い魔法陣が展開され、飛び散った破片を弾き飛ばした。
白衣が風で翻る。
赤い瞳が鋭く細められる。
その視線の先。
崩れた鳥居の向こう側に、“それ”は立っていた。
白い翼。
白銀の鎧。
感情のない蒼い瞳。
人の形をしているのに、人間じゃない。
まるで。
“神が作った兵器”みたいな存在。
『対象確認』
『夜因子反応、極大』
『殲滅を開始します』
機械みたいな声が、夜へ響く。
次の瞬間。
純白の槍が、空気を裂いた。
——ギィィィン!!
ヴァルティアの結界へ激突する。
赤い魔法陣が軋む。
衝撃。
空間が歪む。
「……っ、重……!」
ヴァルティアの表情が歪む。
強い。
前の世界と同じ。
いや——
“前より強い”。
ミルカもそれを察知していた。
(……おかしい)
こんなに早く、“処刑個体”が来るはずがない。
本来なら。
まだ観測段階のはずだった。
なのに。
向こうは既に、“ユノカを危険因子認定”している。
つまり——
それだけ、この世界のズレを警戒している。
「……ほんと、焦ってるんだ」
ミルカが小さく笑う。
その声には、静かな怒気が混ざっていた。
ユノカの身体。
けれど。
今そこに立っている空気は、完全に“夜の王”だった。
黒い魔力が、ゆっくり周囲へ溢れ出していく。
神社の空気が変わる。
夜が濃くなる。
満月の光さえ、飲み込まれていく。
ヴァルティアの赤い瞳が揺れた。
(……この気配)
前の世界。
最後の夜。
世界が終わる寸前にだけ現れた、“本気のミルカ”。
忘れたくても忘れられない。
絶望の中で。
それでも皆を守ろうとしていた、夜の王。
『危険度更新』
『対象:ミルカ』
『最優先殲滅対象へ変更』
天使が槍を構える。
白い光が集束していく。
空間が震える。
その瞬間。
ミルカの瞳が、静かに細められた。
「……うるさいなぁ」
小さく呟く。
次の瞬間だった。
——ドクン。
夜そのものが、脈打った。
「え——」
ヴァルティアの瞳が見開かれる。
見えなかった。
本当に、一瞬だった。
ミルカの姿が消える。
次の瞬間。
天使の懐へ入り込んでいた。
「遅い」
低い声。
そして。
黒い爪が、白銀の鎧を斬り裂いた。
——ガギィィィィン!!
金属が裂ける音。
天使の身体が大きく吹き飛ぶ。
石段を砕きながら、地面へ激突した。
だが。
止まらない。
『損傷軽微』
白い翼が広がる。
蒼い瞳に感情はない。
完全な戦闘機構。
ミルカは舌打ちした。
「……やっぱ硬い」
その時だった。
頭の奥で、ユノカの声が響く。
『ミルカ……!』
少し焦った声。
だが。
恐怖だけじゃない。
“戦いたい”という感情も混ざっている。
ミルカは少しだけ笑った。
(……ほんと変わらない)
『怖くないの?』
『怖い』
即答だった。
『でも』
ユノカの声が、静かに続く。
『ミルカ一人にしたくない』
その言葉に。
ミルカの赤い瞳が、少しだけ揺れる。
そして。
どこか嬉しそうに笑った。
「……じゃあ、一緒にやる?」
次の瞬間。
意識が重なる。
熱。
鼓動。
魔力。
二人の感覚が、完全にリンクしていく。
黒い翼が、大きく広がった。
同時に。
ユノカの中で、“魔法少女”としての力も覚醒する。
白と黒。
夜と光。
吸血鬼と魔法少女。
本来、相反するはずの力。
なのに。
今は完璧に噛み合っていた。
ヴァルティアが息を呑む。
「……嘘」
あり得ない。
そんな融合。
前の世界でも、最後の最後にしか到達できなかった。
なのに。
今回は、あまりにも早い。
その瞬間。
空の上で。
無数の“白い羽根”が舞った。
ヴァルティアの表情が凍る。
「……増援」
空間が裂ける。
そこから現れたのは——
さらに三体の天使。
白い翼。
白銀の槍。
感情のない蒼い瞳。
神社の夜が、一気に白へ染まり始める。
『殲滅を開始します』
機械音声が重なる。
だが。
その瞬間。
ミルカ——いや。
“ユノカとミルカ”は、静かに笑った。
オッドアイ。
その瞳が、紅く輝く。
「……来なよ」
夜風が吹く。
黒い翼が、満月を覆うように広がった。
そして。
第二の戦いが、静かに幕を開けた。
🌙
つづく

いいなと思ったら応援しよう!