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魔法少女エターナルリンク43話 エターナルリンク

最終章・崩落編《繋がり続ける世界》

精神世界。
白く閉ざされていた空間は、
もう完全には“白”ではなかった。
桜色。
夕焼け。
笑い声。
ユノカの鈴の音。
それらが、
サクラの中へ戻り始めている。
「……ユノカ」
サクラの瞳から、
涙が零れた。
「……思い出した……」
白い翼が、
大きく揺れる。
天使のサクラが、
明確に後退する。
「……修復不能」
「人格再統合、失敗」
ノイズが走る。
白の世界そのものが、
崩れ始める。
本当のサクラが、
ユノカの声が響く“裂け目”へ手を伸ばした。
「……帰らなきゃ」
その瞬間。
——空が、割れた。
今までとは違う。
“空間”ではない。
世界そのもの。
黒い亀裂が、
精神世界の遥か上空に走る。
そして。
そこから、“目”が現れた。
巨大な、白い瞳。
感情のない観測者。
《世界管理機構・最終権限》
声が響く。
それは、
誰かの声ではない。
世界そのものの声。
『世界安定率、基準値以下』
『天使化計画、失敗率上昇』
『対象:ユノカ=シオン』
『対象:サクラ=ミラージュ』
『危険度:最上位』
本当のサクラが、
震えながら空を見上げる。
「……なに……これ……」
天使のサクラが、
初めて恐怖を浮かべた。
「……上位管理層……?」
次の瞬間。
記憶が、
流れ込んできた。
——崩壊する世界。
——泣きながら戦うユノカ。
——何度も繰り返される終末。
——何度も天使になるサクラ。
——何度も失敗する未来。
「……え……」
サクラの呼吸が止まる。
「……うそ……」
見える。
全部。
この世界が——
何度も繰り返されていたことを。
『世界ループ回数』
『確認:143回』
「……っ!!」
サクラが、
崩れ落ちる。
「……そんな……」
本当のサクラが、
涙を流しながら呟く。
「……私たち、
 ずっと……」
天使のサクラでさえ、
言葉を失っていた。
『観測結果』
『毎周回、同一結果を確認』
『ユノカ=シオンが異常因子化』
『サクラ=ミラージュが不安定化』
『よって——』
世界が、
白く染まり始める。
『世界初期化を実行します』
その瞬間。
——現実世界。
ユノカの身体から、
膨大な魔力が噴き上がった。
「……っ!?」
カレンが目を見開く。
ヴァルティアが、
息を呑む。
「……覚醒してる……!」
白と黒。
光と闇。
巫女。
吸血鬼。
天使。
ミルカ。
すべてが、
ユノカの中で一つになる。
《完全同期》
ユノカの瞳が、
強く光る。
その瞬間。
精神世界と現実が、
繋がった。
「——サクラ!!」
ユノカの叫び。
サクラが、
涙を流しながら振り返る。
「……ユノカ……!」
ようやく届いた。
ようやく戻れた。
でも——
遅かった。
世界の崩壊が、
始まっている。
白が、
全てを飲み込む。
『初期化開始』
『5』
『4』
空間が、
砕ける。
カレンが叫ぶ。
「ユノカ!!
 逃げろ!!」
ヴァルティアが、
サクラへ手を伸ばす。
だが。
届かない。
精神世界のサクラが、
涙を流しながら笑った。
「……そっか」
「これが……
 “エターナルリンク”……」
ユノカが、
必死に手を伸ばす。
「……嫌だ」
「終わらせない……!」
世界が、
軋む。
だが。
サクラは、
静かに首を振った。
「……ユノカ」
涙を流しながら。
それでも優しく。
「……また、
 見つけて」
その言葉で。
ユノカの瞳が、
大きく揺れた。
「……っ」
『3』
『2』
サクラは、
最後に笑う。
かつてと同じ。
あの、優しい笑顔。
「……次こそ、
 ちゃんと話そうね」
——チリン。
鈴の音。
『1』
白が、
世界を飲み込んだ。
――――――――――――
最終話
《そして、また始まる》
朝。
窓から、
柔らかな光が差し込んでいる。
「……ん……」
ユノカ=シオンは、
ゆっくり目を開けた。
白髪のショートウルフ。
眠そうに身体を起こす。
「……夢……?」
妙な夢を見ていた気がする。
誰かを失ったような。
泣いていたような。
でも。
思い出せない。
「……変なの」
制服へ着替えようとして、
ふと止まる。
胸元。
そこに——
小さな鈴があった。
「……あれ?」
こんなの、持っていたっけ。
その瞬間。
——チリン。
鈴が鳴る。
ユノカの胸が、
少しだけ痛んだ。
「……?」
違和感を抱えたまま、
学校へ向かう。
春の風。
桜並木。
見慣れたはずの通学路。
でも。
どこか懐かしい。
教室の扉を開ける。
「おはよー」
クラスメイトの声。
いつもの日常。
その中で。
窓際に座る、一人の少女。
ピンク色の髪。
肩まで伸びた髪が、
風に揺れる。
——サクラ=ミラージュ。
初めて見るはずなのに。
目が合った瞬間。
サクラの瞳から、
ぽろりと涙が落ちた。
「……え……?」
自分でも、
理由がわからないような顔。
ユノカは、
なぜか胸が苦しくなる。
——チリン。
鈴が鳴る。
サクラが、
小さく呟いた。
「……やっと、
 会えた」
ユノカは、
その言葉の意味を知らない。
だけど。
なぜか。
涙が出そうになった。
――――――――――――
魔法少女エターナルリンク
第一部・完

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