格差ゆえショックを逃れたこどもたち/鳥原弓里江 2句
シリーズ・現代川柳と短文NEO/619
格差ゆえショックを逃れたこどもたち
ネットプリントの現物(本記事下部よりダウンロード可)を見ると、句の脇に発想元となったアニメのタイトルがある。ずばりポケットモンスターである。句の解説をしよう。俗に言うポケモンショックが起きたのは1997年のこと。激しい点滅演出により一部の視聴者が光過敏性発作を起こした事件だが、ポケットモンスターのようなテレビ東京の番組を自由に観ることができなかった地方の視聴者は被害を逃れることになった。地方とはたとえば作者の故郷である宮崎県だ。当時(もいまも)宮崎には民放局が2局しかなく、アニメ視聴においてあきらかな地域格差が生じていた。しかしその格差により、宮崎のこどもたちはショックを逃れたのだ。
好きな男が河川だったね
千と千尋の神隠しがそういう話だったと宮崎県出身の作者は語っていたが、こどものころに一度観たきりだったわたしはなにひとつ覚えていなかった。正直、作者はバレないと思って嘘をついているのではないかとさえ思った。ちなみに作者は税理士なので嘘つきであると世間に知れたらたいへんなことになるので、これをネタに恐喝し、金をむしり取ろうと思っていた。が、ことしになって観た『わんぱく王子の大蛇退治』でスサノオに敗れたヤマタノオロチが川になったとき、あ~まあね、こういうことってあるよね~、龍って河川の象徴だよね~、と思った。
いつかどこかで夢みる機械
次回作『夢みる機械』を完成させることなく作家はこの世を去った。当時アニメファンではなかったわたしが監督四作目『パプリカ』を劇場で観たのがなぜだったのかはもう覚えていない。貴重な、幸福な体験だった。けっきょくそれが作家の最後の作品になった。ことし、ちょうどその『パプリカ』を構想していたとおぼしき2001年に受けたインタビューを読んだ。わたしはアニメファンになっていた。インタビューのなかで作家は言っていた。
「コンスタントに作りたいな、と思っています。流れが切れないように作っていると、前のとはまた違う深化の仕方が出てくると思うんでね」
引用文献 小黒祐一郎『アニメクリエイター・インタビューズ: この人に話を聞きたい2001-2002』
【きょうの現代川柳】
格差ゆえショックを逃れたこどもたち
好きな男が河川だったね
いつかどこかで夢みる機械
/鳥原弓里江
【▼出典】
