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山梨県/桃の花 制作記録②

4月9日

圧倒的な快晴。ホテルの部屋に差し込む光がとんでもなく、一瞬で目が覚めた。富士山は昨日よりとてもクリアに見える。物凄い存在感である。ホテルの窓から見えるという、ラブホにしては贅沢すぎる立地じゃないか?性質上窓からの景色を売りには絶対できないが。

ホテルの部屋の窓から見える富士山
ホテル前の道路から見える富士山

モーニングは韮崎市内の「my café room(マイカフェルーム)」にてフレンチトーストをいただく。今日はまず韮崎市の新府桃源郷を見るので近くのカフェに決めた。駐車場がないが、すぐ近くに無料駐車場がある。田舎あるあるだけど無料駐車場があちこちにあるのが良いよね。停めた駐車場の近くには韮崎平和観音や窟観音などがある。大きな岩に驚く。

モーニング、フレンチトースト

カフェはゆったりしててとても居心地の良い感じだった。女性しか来なさそうな、アサイーボウルが食べれるカフェだ。今日はもう昼ごはんは食べないことにしたので、ある程度しっかり目に食べたかった。そんな量はないがブランチとしては丁度いい。パンケーキみたいなフレンチトースト。かなりのんびりしてしまった。多分1時間くらい。食べた後に今日のプランニングをしてたのだ。新府桃源郷を見た後にどうするか考えると、近くだと南アルプス市になるが、桃花橋公園展望台が名所っぽい。だがGoogleマップで見る写真の感じではそこまで期待できそうにない。それ以外だと甲州市の塩山桃源郷だ。ここはかなり遠く、5つの市の中でいうと韮崎とは最も反対側の奥にある。1時間くらいかかる。二日目なので、予定としては(遅くとも)今日中にはキャンバスに絵の具を乗せたい。でないとスケジュール的に厳しい。正直、昨日のリサーチでどこの桃源郷であろうと描くのは結局桃の花、桃の花はどこであろうとあまり変わらないので、つまり場所を全部見るのに時間を費やすことにそこまでの大きな意味はないと言える。心の中ではもう描き出してしまいたいのだ。ノートに昨日のインスピレーションから画面の構成のエスキースを描き、もういけるだろうという気持ちになった。

富士山に向く韮崎平和観音

新府桃源郷への道中にちょうど韮崎平和観音を横切ったので車を停めてちょっと観光した。加賀にもデカい観音像があるけどあれより何か怖くない。あれは怖い。やっぱりとにかく上下にうにゃうにゃした地形だからか、見えないものは見えないし見えるものは見える、角度によって風景が随分変わるからかなあ。それか白いからか。
ぱぱっと新府桃源郷へ。チャットGPTによると「約60ヘクタールの広大な桃園が広がり、富士山や八ヶ岳を背景にした美しい景色が魅力」らしい。新府公園駐車場に車を停める。結構車がある。多くはないが、ちらほら散策している方がいる。笛吹市の御坂町エリアとはまた全然違った風景で、桃源郷インパクトで言うとこれまで見たので一番かもしれない。60ヘクタールはだてじゃなかった。ところで桃源郷ってなんだよ、とふと思って考えたり調べた。実際に見回って分かったことは山梨の桃畑はあまりに広大で、風景も広大で、山並みも広大で、昔からおそらく旅人はここに辿り着くと何と美しいのかと感動していたに違いない。理想郷なのだ。美しすぎるのだ。桃畑、絨毯と広大な山並みが連なる風景なんかを見ると、あまりの美しさにこの世のものと思えなくなるほどだ。そういった意味合いで桃源郷と呼ばれるようになったんではないかと勝手に想像した。

新府桃源郷の風景

驚いたのは、何人かが所々に座ってスケッチをしていたことだ。どこか絵画教室かなんかのイベントだろうか。良いなと思った。一頻り歩き回った。んー描こうと思えば描けるし別のところを巡っても良いし、どうしようかと一旦悩む。歩きながら描くためのスペースの問題、エスキースの構図に対応しうるか、などなど考える。

エスキース

色々と考えながら、ここは昨日の御坂街エリアに比べると背景の山脈のインパクトが少ない。これをどう捉えるか、私はむしろその方が良いんではないかと思った。なぜなら、昨日の段階では広大な山や風景に目を奪われ、描きたいという気持ちが高まっていたから、構想として背景に山を入れようと考えたのだが、今になって冷静に考えると、今回の依頼はあくまで「桃の花」なのだ。これに対してどう回答しようが別に作家の自由だが、一個の作品に対して欲張って色々と混ぜ込んでも良いことはない、と経験上知っていた。なので、ここで見えるような風景の方がむしろ花にフォーカスを当てることができ、制作の場としてはより適していると感じたのだ。あと、スケッチしている方々に感化された可能性も否定できない。彼らが描いているということはそれなりのスポットという信頼性にも繋がるのだ。

描く直前

しかしいざ描くとなると場所を決めるのが非常に難しい。無数にある選択肢をいかに限定するか。これは風景画を描く上で大きな問題と言える。エスキースにあったように、花の前、中、後景がひとつの基準である。つまり枝が道路にはみ出し、目の前で花を観察できるという条件が必須だ(流石に農園に足を踏み入れキャンバスを立てるのは気が引ける)。また画面に対しオーバーオールに花が分布していることも重要な条件である。その中で大中小というリズムを画面に与えるのが狙いである。次に重要なのが枝の要素だろう。どの桃の木も形は似ている。幹は短くすぐに枝分かれし上というより横に広がっていく感じだ。背はそんなに高くないが、普通に見上げるようなレベルの高さになっている。つまり農園の地面が道路より低い位置である方がオーバーオールな画面を作りやすいということだ。枝は画面を分割したり動きを分かりやすく与える要素として、つまりかなり重要な絵の構成要素となる。とまあ色々考えながら(もう桃の花を楽しむことができなくなってしまうが)、選定していき、面白い見え方をする場所を見つけた。前述した条件を全て揃え、特に立ち位置によって枝の形が画面に対して円を描くように重なって見えるという部分だ。かなり大胆な構図と言えるだろう。

描き出し20分ほど

絵としても非常に難しそうだったが、それ故に描きたい挑戦したい欲が沸々と込み上げてきたのだ。この感じは描くべきというサインである。細かいことは描きながら決めるとして、とりあえず上下どこまで入れるかだけは決め、ザクザク描き進める。正直描いたことのないモチーフだし、手探り感は否めない。眼前に無数に散らばる花、力強く蠢く枝、地面には数種類の草(種類の違いによって色が微妙に違う)、隙間に見える土、ちょこちょこ生えている紫の小さい花、そして遠景の山々と空、ざっと言葉にして並べてもこれだけの情報量がある。そして晴天すぎて暑い。日差しで肌が焼ける。

開始から1時間経過

一層目なのでテレピンだけで描く。だけどぐっと絵の具を乗せる部分もあったりする。通りかかったお爺さんに「ちょっと見せてください」と言われ、しばらく見られていたところ「かなり描いてるね〜」と言われた。私は「美大に入ってから10年経ちますね〜」と回答。「3月に美大出たばっかなんです」だとそんなやん、ってなるしどうすれば分かりやすい長年感を出せるかちょっと迷った。
じわじわと空間が立ち現れる。特に頭を悩ませるのが、一番手前に見える枝と幹が重なる部分だ。ここが一番私の位置のミリ単位のズレで大きく関係性が変動する箇所なのだ。つまり全然定まらない。普通は視点を固定、というか設定して画面上での整合性を優先させて必要な情報が観察から加筆していくものだろうが、私の場合は私自身の運動による視点のズレも現実性の表現(多元的現実性)、と捉えているため一向にズレ続ける。しかも両目による像のズレがここの部分では大きく生じる。とはいえ描き進めるしか選択肢はないので、とにかく描けるところに絵の具を置いていく。空の色は今回良い発見をした。花の色のために持ってきたフレッシュピンクだが、これをセルリアンブルーと混ぜると明るい紫というか、何ともいえない赤みが青に混ざる。この感じ、色合いというのは空の複雑な色合いに非常に近づくという感覚があった。これはこれからも使えるし使ってみたい。

開始から3時間経過

もう無理、というところまで描いた。描き始めてから3時間くらい。大体私の集中力がもつのがいつもそれくらいだ(長くても)。過酷ではあったが、久しぶりに物凄く楽しかった。

帰りに一応南アルプス市の桃花橋公園展望台へ。物凄く綺麗な風景だけど、やはり桃の花は全然だった。桜は見事だった。

展望台より、桃花橋ループと富士山

この日は絶対に昨日ホテルの近くにあると知った牛角で生ビールをキメると決めていた。

牛角にて

空腹がすごかったので、一人で食べ放題をして吐きそうになるほど暴食してしまった。やっぱ食べ過ぎは良くないね。ほどほどにしよう。明日は食をもう少しマシにしたい。うん。

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