体験談22【白バイ追尾】GSXRさんの不起訴体験記――46km/h超過容疑を覆した「上申書」の威力
プロローグ:その時、心のブレーキは外れていた
2017年のある日曜日の夕刻。GSXRさんは愛車を駆り、国道6号線を松戸方面から東京都心へと向かっていました。場所は新葛飾橋。 実はこの時、彼のメンタルは最悪の状態にありました。出発のわずか30分前、奥様と激しい口論になり、ヘルメットの中では怒りが煮え繰り返っていたのです。「怒り」という感情は、熟練のライダーであっても判断力を狂わせます。
橋の真ん中あたりに差し掛かった時、前方に白いセダンが白バイに捕まっている光景が目に入りました。 「あ、もう捕まっているヤツがいる。今は取り締まりの『空白時間』だ」 そう確信したGSXRさんは、あろうことか白バイの右側車線から一気に加速。思い切りブチ抜いてしまったのです。
しかし、現実は甘くありませんでした。下り直線の信号が赤になり、左車線に戻ろうとしたその瞬間、背後で鮮烈な赤色灯が回転します。
第一章:現場の死闘――白バイ隊員との心理戦
エンジンを切り、路肩に停まったGSXRさんのもとに、憤慨した様子の白バイ隊員が歩み寄ります。
白バイ隊員:「すごいスピードで走ってましたね! ちょっと免許証見せて!」
GSXR:「そうですか……?(まさか追ってくるとは思わず、激しく動揺)」
ここで免許証を素直に手渡してしまったのが、最初の反省点です。もし現場での「切符回避」を狙うのであれば、まずは相手の所属・氏名を特定し、「警察手帳の提示」を求めるのがセオリーです。
白バイ隊員:「何キロ出てたか確認してもらえる?(ストップメーターを表示させる)」
そこには「96km/h」の数字。50km/h制限の道路ですから、46km/h超過。一発免停、そして刑事罰(罰金刑)が確定する「赤切符」の領域です。
GSXR:「……これはどこで測ったんですか? あり得ません!」
白バイ隊員:「ちゃんと測りました。危ないですよ!」
GSXR:「私はあなたを抜く前から加速と減速しかしていませんが、どこでどうやって『等速での追尾』をしたんですか? 全く納得いきません!」
GSXRさんは食い下がります。白バイや覆面パトカーの追尾式取締りは、一定の距離を同じ速度で追走しなければ成立しません。加速中の車両を後ろから追いかけて出た最高速度は、それは「白バイの速度」であって「被疑者の速度」ではないからです。
しかし、白バイ隊員も手慣れたものです。
白バイ隊員:「納得いかないのはわかりましたが、調書を作りますね。」
ここで、GSXRさんは「妻との喧嘩でイライラしていた」という私情を漏らしてしまいました。
GSXR:「いや、実は……妻と喧嘩してイライラしていたもので。もう他のが捕まっていたから、こっちは大丈夫だろうと思ってやってしまいました。すみませんでした……。」
白バイ隊員:「(勝ち誇ったように)そうですか。でも、事故を起こさなくてよかったですよ。」
隊員は、調書に「妻との喧嘩でイライラして、車を捕まえている白バイをからかってやれと思って猛スピードで追い越した」と事実(?)を書き込みました。GSXRさんは、計測方法には納得いかないものの、署名・押印を拒否すればそのまま警察署に連行されるという嘘の脅しに屈し、サインして指印を押してしまいます。
何も書類をもらわず、免許証も返された状態で、その場は解散となりました。ここから、GSXRさんの「不起訴に向けた孤独な戦い」が始まります。
第二章:墨田分室の「第一関門」――警察OBの揺さぶり
後日、GSXRさんに届いたのは、錦糸町にある「東京簡易裁判所墨田庁舎」への出頭要請でした。ここは通称「墨田分室」。東京都内の交通違反否認事件が集まる場所です。
建物に入ると、まず1階で待っていたのは、警察官OBによる取り調べでした。
警察OB:「調書を取ります。認めますね?」
GSXR:「いいえ。そもそもいつ測ったんですか? その96キロというのは、加速して追いかけてきた白バイ自身のスピードでしょう?」
GSXRさんは、本サイトで予習した知識を武器に、現場で認めかけた事実を真っ向から否定しました。警察OBは淡々と「出頭拒否」や「否認」の書類を作成します。
その後、8月のお盆ど真ん中に警察署から「署に来い」という電話がありましたが、GSXRさんは「予定があって行けない」と一蹴。これも重要なテクニックです。警察の呼び出しに法的な強制力はありません。「行けない」と言えば、彼らは「書類送請(書類送検)」するしかなくなるのです。
第三章:運命の検察取調べ――「上申書」と「アイスティー」
そしてついに、東京区検察庁道路交通部から呼び出しがかかります。場所は同じ墨田庁舎の2階。今度は「検察官(実際には検察事務官)」との対決です。
GSXRさんは、以下の「三種の神器」を携えて乗り込みました。
自分用にアレンジした「上申書」(5枚にわたる詳細な反論)
ボイスレコーダー
冷たいアイスティー(心を落ち着かせるため)
2階の待合室。掲示板に自分の番号が表示され、パーテーションで仕切られた取調室に入ります。
検察事務官:「あ、どうも。座ってください。まず最初に、答えたくなかったら黙秘権を使ってくださいね。」
GSXR:「(落ち着いてアイスティーを一口飲む)……はい。まず、こちらの書面を読んでください。」
GSXRさんは、あらかじめ用意していた「上申書」を差し出しました。そこには、現場の道路状況、白バイの計測方法がいかに科学的に不自然であるか、そして自分の正当性が論理的に記されています。
事務官は黙り込んで、5枚の書面をじっくりと読み始めました。その間、GSXRさんは悠然とアイスティーを飲みながら、時折寝そうになるほどリラックスして待機しました。この「心の余裕」が、取調室の空気を支配します。
数分後、事務官が顔を上げました。
検察事務官:「あー……そうですか。質問がいくつかあるのですが……。」
GSXR:「あ、それについては全部その上申書に詳しく書いてありますから、読んでいただければ分かります。」
検察事務官:「……あ、そうですか……うーん。」
事務官はそれ以上追及することを諦め、カタカタとキーボードを打ち始めました。上申書の内容を要約した「検察官調書」を作成しているのです。
そして、プリントアウトされた紙を手に、事務官が衝撃的な一言を放ちました。
検察事務官:「……これは、裁判しませんから。」
GSXR:「(えっ、今なんて?)」
検察事務官:「裁判はしません。これで終わりです。遠路はるばる、お疲れ様でした。」
わずか40分。GSXRさんが発した言葉は数えるほど。魔法の紙「上申書」が、46km/h超過という重罪をあっさりと「不起訴」へと変えた瞬間でした。
第四章:なぜ「46km/h超過」が不起訴になったのか?
なぜ、白バイが96km/hという数字を出し、本人も現場で一度は認めたような事件が、これほどあっさり終わったのでしょうか。そこには3つの理由があります。
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「納得がいかないなら裁判だぞ」 警察官のその一言に、多くの人が震え、不本意な署名をしてきました。しかし、その“脅し”に屈せず、論理と知性で…
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