3 セル氏の朝食 (4)
朝食が終わった。
セル氏は立ち上がりながら
「ポルカに伝えておいてくれ、今日のミネストローネは今までで最高の出来だったよってね。」
ロダンは喜びを抑えようにも、どうしても笑みがこぼれる
「確かに、お伝え致します。大変喜びます。」
「30分位したら『美しヶ丘』へ行こうかな。それまで書斎で少し書いてくるからよろしく。」と、セル氏は書斎へ向かった。
何かのプロットが舞い降りてきたようだ。
30分後セル氏がサルーンへ入ってきた。
ロダンは春物のジャケットコートを持ち、セル氏の背後に回り、袖口をセル氏の手に添えると、セル氏はふわりと肩を回して羽織った。
そして廊下に待機していたイーリッヒに目線を滑らせた。
それは合図のような役目を果たし、イーリッヒはサルーンの中へ入り、
「先生、おはようございます。」
と初めて声をかけた。
「イーリッヒおはよう、今日もお供してもらえるのかい?」
と言われ
「はい、宜しければ、是非。」
と嬉しそうに答える愛弟子、そしてそれを愛おしそうに見つめるセル氏。
玄関に行くとミズリが、
「御主人様、おはようございます。今日はお寒うございます、ブランケットと温かいお飲み物を準備させて頂きました。どうぞお体をお冷やしになられませんように。」
と言いながら靴ベラを両手でそっと手渡すと、セル氏も靴ベラを使いながら革靴を履き、
「あぁ、ありがとう。ミズリも暖かくしておくんだよ、レディなんだからね。」
といたずら小僧の面持ちでいうのであった。
ミズリも大袈裟に
「まぁ」
と言いながら、ぷくぷくの両手をぷくぷくの両頬に当てるとギュッと持ち上げて、茶目っ気たっぷりに返すのがいつものパターン。
外に出るとネルが後部座席のドアを開け
「セル様、おはようございます。」
と目を伏せて、軽く頭を下げる。
「やぁネル、おはよう。今日も宜しく頼むよ。」
笑顔で乗り込むセル氏に向かって
「かしこまりました。」
と言いながらドアを静かに閉めるネル。
荷物はあらかじめトランクの中に入っている。
イーリッヒが助手席に乗り込むとCDのスイッチを入れた。
リストの『ラ・カンパネラ』が流れ始めた。
思わずセル氏の口元が緩む。
「リストか、うん。良いね。」
と言葉が漏れた。
と同時に車が動き出した。
車の脇ではロダン、ミズリの二人が頭を下げ見送っていた。
(4 仕様人達の時間割 (1)へ続く)
