1 プロローグ
朝日が昇り始め、小鳥のさえずりが聞こえてくることを確かめながら、庭師―バンサの手先が忙しく動き続けていた。
春が近づくと共に、庭先の花々が次から次へと花開く準備を始める。
邸内を一人で世話をするには少々手詰まりではあるものの、誰にでも任せられるかというと、そんな訳にもいかず。代わりをとまではいかないにせよ、手伝ってもらうにも人を選んでしまうのは致し方ない。今はまだ雑草を取り除いてもらう専門の人を2人お願いするに留まっている。
もう目を閉じても遜色ない仕事が出来るバンサが、ふと邸内に目をやると、珍しく足早に歩くロダンが見えた。執事―ロダン。
彼こそがこの邸内の営みをスムーズに進める要となる人物である。
バンサはこの邸内の使用人の中では一番古株である為、今まで様々な使用人達と共にこのバーンズ邸を支えてきたが、その中でもこのロダンは別格であった。
人としても、執事としても申し分ない。「完璧」といっても過言ではない。そんな彼が珍しく足早に邸内を歩き回っている様は、滑稽でこそあれ不安に駆られるほどの事でもなかった。
(2 バーンズ邸に続く)
