4 使用人達の時間割り (1)
セル氏を見送ったロダンとミズリは、車が敷地から出るのを見届けると同時に、互いに向き合い、右手を挙げ
「では」
「ええ」
と言うと、其々の持ち場に向かって足早に歩き始めた。
ロダンは先程まで居たサルーンへ、ミズリはセル氏の寝室へと一目散に歩を進めた。
セル氏の寝室にミズリが到着すると、助手の一人であるナタリーが既にベッドカバーを外して、パジャマも籠に入れようとしているところであった。
ミズリにはもう一人ケリーという助手がいて、彼女達二人は交代で出勤してくれている。
二人とも物静かで、おしゃべりが大好きなミズリにとっては、絶妙なタイミングで相槌を打ってくれる、とっておきの相棒達なのであった。
ミズリ―は寝室に入るなりいきなり窓のところへ行き、レースのカーテンを左右に分け、カーテンと共にタッセルで纏めると窓を全開にした。
「空気が澄んでるねぇ。」と呟いた。
ミズリ―がナタリーに向かって話し始めた。
「今日はご主人様は『美しヶ丘』にお出掛けって言ったじゃない、だからポルカに頼んでハーブティーを用意してもらったのよ。
なんてったってバンサの作るハーブは無農薬で栽培された美味しくって、香りも明らかに芳醇な逸品だからねえ。
心の芯から温めてくれるに違いないわ。」
ナタリーはミズリを見つめてニッコリと微笑んだ。
そして
「では、私はこのままバスルームの清掃に参ります。」
と言って立ち去ろうとするのを、ミズリは引き留めた。
「今日は空気が気持ち良いから、マットレスの風通しをしたいと思ってね。ちょいと手伝ってもらえないかい?」
と言うと、ナタリーは再び微笑み返し、
「そうですはね、とっても気持ち良さそうですわ。」
と言いながらミズリの反対側へ立ち、目で合図をしながら、二人はあっという間にベッドの脇にマットを立てかけた。
「ナタリー、ありがとう。助かったよ。じゃ、先にバスルームを頼むよ。
私もすぐに行くからね。」
と言われると、ナタリーはおもむろにバスルームに向かおうとしたが、ハッと気づいたように、リネン類を入れておいた籠をサッと持ち上げて歩き出した。
それを見たミズリは
「ナタリー、あんたって人は本当に抜かりない人だねぇ。
お陰であたしゃ大助かりさ。ありがとう。」
と礼を言うのであった。
全開になった窓から両手を広げて出し
「はぁ~」と深呼吸すると、目付きが変わった。
そこからミズリーは窓枠、家具の上、壁、そして絨毯素材の床すべてを手で満遍なく撫でながらぶつぶつと何かを呟くのであった。
(4 使用人達の時間割り (2)へ続く)
