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4 使用人達の時間割り (2)

地下の厨房では、さっきミズリに頼まれて持って来たバンサが、セル氏に渡したものと同じハーブティーを飲んで、ほっと一息ついているところであった。

なんといっても、この屋敷内でロダンよりも先に動き始めるのがバンサであった。
夜が明けるか明けないかのうちから庭の仕事を始めるのである。
特にこの春先辺りからは、芽吹く植物達が桁違いに増えるから、朝が勝負時である。
いつもはこの厨房の隣にある使用人ホールで一息つくのは、帰る前のひと時なのだが、今日のようにハーブを摘んで届けたり、朝摘みの花を取りに来るはずのロダンの予定が変わると、午前中にもこうして一息つくようになってきた。

使用人の中では一番の古株であるバンサの話は面白く、興味深いものがある。
言葉数が必ずしも多い訳ではないバンサの話は、訥々として静かだが、今年60歳になり約40年もの間、このバーンズ家を見守り続けてきた一人の人間の温かさというものが、否が応にも溢れだして、聞いている他の使用人達もその温かさに触れたいが一心であった。
あれは何だやらこれはどういう仕組みかと、機会を見つけてはバンサから昔話を聞きたがる、今はここぞと云わんばかりのチャンスなのだった。

今日はいつもなら使用人達の昼の賄いの準備に入っているはずのポルカが、バンサの話を聞いていた。
たった一人のトンダという助手が今日は来ているからだ。
彼は週に2~3日、大学の授業をやり繰りしながら通って来てくれているのだ。
行く行くはポルカのように料理人になることが夢なので、本当は大学を中退して住み込みで働きたいと申し込んできたのだが、ポルカが大学を辞めず、両立する覚悟があるなら雇うという条件を出した為、ひたすら厨房に入る事が出来る勤務日を待ち遠しく思いながら、学業との両立を何とかこなすことが出来ている。
働き始めてまだ半年だが、仕事の呑み込みが良く、今月に入ってから賄いを全部任せてもらえることが多くなってきている。
今日も師匠であるポルカとバンサの話を、耳で必死に聞きながら、手を休める事は一切無く、賄い作りを進めている。

そんなトンダを横目で見ながら、時折バンサが言う

「なぁトンダ、お前さんは腕が良いらしいから先が楽しみだよなぁ。」

耳で聞き、手を動かすところまでは出来るのだが、口までは難しいらしく

「おわ、わ、お、おわ、わ、わ、わ、」となる

それを見兼ねて透かさずポルカが

「耳と手と口が同時に動かせるようになったら一人前だ、だがな、この口が一番重要なんだよ、料理人にとっちゃね。」

トンガはハッとしたような顔をしてポルカを見ると、ポルカはトンガを見て微笑んでいた。

とても優しい時間が流れている。


(4 使用人達の時間割り (3) へ続く)


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