「勝ちパターン」は会社を殺す。キーワードは「捨てる」と「アンラーニング」
昨日少し話をした、「捨てる」 という事にについて、本日はもう少し深堀してみます。
「過去の自分」や「これまで費やした時間」に、しがみついていませんか?
それでは、本日もいってみましょう‼
1.「もったいない」の正体:サンクコストという呪縛
日本人が大好きな言葉に「もったいない」があります。
食べ物を大切にする、資源を大切にする。それは素晴らしい美徳です。
でも、ビジネスや人生の決断において、この「もったいない」が、実は一番の邪魔者になることが多々あります。
なぜ、頭では「変わらなきゃ」とわかっているのに、多くの人や企業は変われないのか?
それは、「サンクコスト(埋没費用)」 を気にしちゃうからなんですね。
わかりやすい例を出しましょう。
あなたがお金を払って映画館に入ったとします。でも、開始10分で「うわ、この映画つまんない」「自分には合わない」と気づいてしまった。
さて、あなたならどうしますか?
多くの人はこう考えます。
「せっかく2000円払ったんだから」
「ここまで来た時間ももったいないし」
そうして、苦痛を感じながら最後まで2時間、スクリーンを見続けてしまう。
払ってしまった2000円は、映画を見ても、見なくても、もう戻ってきません。これが「サンクコスト」です。
「戻ってこないコスト(お金や過去)」に執着するあまり、これからの「未来の貴重な2時間」というリソースまでドブに捨ててしまう。これこそ、もったいない!
人生も経営も同じです。
「これまでこれだけ投資してきた事業だから」
「この会社に10年勤めたから」
その「過去」への執着が、あなたの「未来」をじわじわと閉ざしていきます。
2.巨人の明暗:コダックの執着と富士フイルムの大転換
ビジネスの世界では、このサンクコストにとらわれ、失敗した例が山ほどあります。
最も有名なのが、写真フィルムの巨人だった「コダック」と「富士フイルム」の明暗です。
実はコダックは、世界で最初にデジタルカメラを開発した技術力を持っていました。1975年のことです。
でも、当時の経営陣はこう考えました。
「デジカメなんか普及させたら、今の会社の儲けの源泉である『フィルム』が売れなくなるじゃないか」
彼らは、自分たちの築き上げた「フィルム王国」という過去の資産(サンクコスト)を守るために、せっかくの未来の技術を封印してしまったんです。
その結果、2012年に経営破綻しました。
一方で、富士フイルムは、彼らは本業のフィルム事業が消滅するという危機に際して、華麗に変身(ピボット)を遂げました。
「写真フィルムの主成分はコラーゲンだ。写真の酸化を防ぐ技術は、肌の老化を防ぐ技術と同じだ」
そう気づいた彼らは、フィルム製造で培った技術を、なんと「化粧品(アスタリフト)」や「医療分野」に転用したんです。
彼らは、過去の栄光である「写真屋」という看板へのこだわりを潔く捨てました。でも、培ってきた「技術の本質」は捨てなかった。
「もったいない」と過去の売上にしがみつくのではなく、過去の遺産を分解して、新しい未来の種にした。この差が、勝敗を分けたんです。
3.プロゲーマー梅原大吾に学ぶ:「勝ちパターン」を捨てろ
僕が大好きなな本に、プロゲーマー梅原大吾さんの「勝ち続ける意志力」という本があります。
その本の中にこんな言葉があります。
「勝ち続けるためには、勝ちパターンを捨てなければならない」
勝ちパターンをあえて捨てる。凄い勇気ですよね。
勝てるようになると、人は無意識にその「勝ちパターン」を繰り返します。
もう、考えなくても勝手に身体が動くから、圧倒的に楽なんですね。
脳のリソースなんて、全く使わなくて済みます。
でも、勝負の世界はそんなに甘くない。ライバル達はすぐにあなたの勝ちパターンを研究して、対策をしてきます。
昨日までの必勝法が、今日は負けパターンになる。
だから梅原さんは、自分が世界最強であるそのスタイルすら、あえて捨てて、常に変化し続けるそうです。
これをビジネス用語では「アンラーニング(学習棄却)」 と言います。
学んだことを忘れる、という意味ではありません。
時代に合わなくなった古い知識や成功体験を、意識的に「捨てる」ことです。
この「アンラーニング」を地で行っているのが、あのNetflixです。
Netflixって元々は、DVDの郵送レンタル屋さんでした。
店舗を持たないTSUTAYAみたいなものです。
でも、彼らはネット時代の到来を予見して、自分たちのドル箱だったDVDレンタル事業を縮小し、当時はまだ海のものとも山のものともわからない
「動画ストリーミング配信」へと舵を切りました。
もし彼らが「せっかく倉庫に大量のDVDがあるから」「物流網があるからもったいない」とサンクコストにこだわっていたら、今のNetflixはなかったはずです。
日本で言えば、DMM.COMもすごいですよね。
石川県小松市のレンタルビデオ屋が祖業ですが、そこからアダルト、FX、英会話、3Dプリンター、ゲーム……と、カメレオンのように姿を変えています。
「自分たちは何屋である」という定義に固執していないこと。
「たくさん変化し続け、そこでヒットしたものを広げる」
「たくさんの数をこなすことで、その中で運よく当たるものがある」
前回の話と一緒で、狙って成功したら、苦労はないですよね。
狙っても、なかなかヒットしない、それがビジネスです。
変化し続け、手数を増やし、その中にヒットの兆しがあったら、そこを伸ばす。
ダーウィンの進化論の話を昨日のブログで書きましたが、まさに生き残る者は「強いものではなく、変化した上で運をつかんだ者」を体現しています。
4.澤哲・生存戦略:ラーメン屋こそ「過去」を捨てろ
さて、僕らラーメン業界の話に戻しましょう。
飲食業界、特にラーメン屋は「職人」の世界です。
「俺はこの味で勝負する」
「伝統の製法を守る」。それも大事です。まーカッコいいです。
でも、僕はあえて言います。
「こだわりは、捨てされ」 と。
僕が海外展開を進める中で痛感したのは、「日本の常識は世界の非常識」
だということです。
日本で大行列を作った濃厚つけ麺も、国が変われば「味が濃すぎる」
「麺が太すぎる、硬すぎる」と言われることもある。
「これが本物の味だから‼」と押し付けるのは、ただのエゴです。
それは「プロダクトアウト」の押し付けでしかない。
僕は、現地の人が「美味しい」と思うものに合わせて、味も変えるし、メニューもスタイルも変えます。
僕は、ラーメンヲタクとしての「こだわり」を一度アンラーニングしたんです。
「お客様の立場で考える」
売り手の「これいいでしょ」ではなく、
買い手の「これがいい」に合わせる。
そのためには、自分が積み上げてきた「成功体験」や「プライド」というサンクコストを、秒速で捨て去る覚悟が必要です。
映画がつまらなかったら、さっさと映画館を出て、美味しいラーメンを食べに行きましょ(笑)。
変化を恐れず、過去を捨てて、軽やかにいきましょう。
正解がない時代だからこそ、自分の色で塗りたくりましょ。
GOGO‼
