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沈黙の海とサウンドソニック(プロローグ)

2026年7月24日。
日本中は、とろけそうになる程に
暑い日が続いていた。

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彼女は、街の外れにある水族館に久しぶりに来た。2階建て構造の建屋の受付から、すぐエスカレーターに乗り込み、館内を巡る。
地元で採れる魚、深海魚、絶滅危惧種の魚などの展示を見て、水族館名物のイルカショーを堪能する。豪雪地帯で育った彼女にとって、魚を知るために研修で来て以来の水族館を、何も考えずに堪能していた。
最後の展示は、観客の環境意識を問いかける展示だった。縦横50センチ程度のアクリル板の向こうには、青白く照らされた水だけが満たされていた。彼女は、水槽のアクリル板の前で、故郷で見たある光景をふと思い出していた。

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一方、その頃、男はスマホの画面を覗き込んでいた。動画、SNS、メール、生成AIなど使う男は、当然検索も使っているが、普段と違う内容を入れてみた。

「ある地元のテレビ局 サウンドロゴ 怖い」

と入力。男にとって、こんな事を検索したとて、何の意味があるのだろうという、幼い時の淡い記憶と明確に覚えているあの感覚だけでフリック操作をした。
「まぁ、どうなるものかね〜」と高をくくっていたが、検索結果の後に、生成AIによる「どういった時代のお話でしたか?」と、より彼に寄り添う提案をする。「最初期の頃のなんだけど…」と回答した後、AIは「みぃ〜つけたっ‼️」と言わんばかりの確信を込めた理由と回答を列挙し出した。

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水族館の展示のアクリル板の前。青白い照明に映し出された青一色の水。上から降り注ぐ日光が、水槽の底で波打っている。
彼女が思い出した風景は、青空に映える白の放物線。除雪機が描き出す真っ白な円弧は、毎年冬の、恒例行事だった。「ブル、ブル、ブル…」と高く劈くようなエンジン音とともに、地面に堆く積もった雪たちが排出口から出される。いつもならば、路肩に遠慮気味に出される雪なのだが、除雪機の出力をMAXにすると、空高く除雪された雪が綺麗な放物線を描き出す。
彼女は、遠く離れた地の水族館にて、ただ、水だけが入った、青白い照明の展示の前で、あの時の故郷の風景を思い出していた。
「何故だろう?」と不思議がる女性。もしかしたら、水槽の底で揺れる光の網目が、あの時、除雪機が跳ね上げた雪の結晶が舞う光景と重なったのかもしれない。
次の瞬間に「あっ、あの時のアレかぁ…」と思い出す。「まぁ、アレは、本当にどったんばったんしたなぁ〜」
水槽の前で、彼女は苦笑いした。あの日、初めてだったあの経験で、あの人がどんな顔をしていたか、今なら冷静に思い出せる。

「さぁ、ここを出たら何を食べようか?」
もう隣に誰もいないことに慣れた彼女にとっては、今は「花より団子」なのだろう。

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スマホの向こう側で、生成AIが頑張って弾き出した答えから、あの時の恐怖感の輪郭が見えてきた。
今見ると、あの地にしては、随分と洗練された、若しくは先鋭的という30秒程度の映像。それは突然やってくる。洋画劇場を楽しんだ後、はたまた、忍者が活躍するアニメ、若しくは、趣向を凝らしたクイズ番組の後に突如としてやってくる。幼い頃、あの映像を見るたびにトイレに行くのも怖くなる。嫌なら見るな‼️と言われたあの時代なのだが、子供心に何故か見入ってしまったのは、映し出された映像の賜物かもしれない。ネガポジ処理された木々と海、そして空は美しく、その後に来る放送局のロゴの登場が、「タイトルロゴがドーン!」という感じでやってくる。いまだに、その箇所を見ると、ゾワゾワッ!とするのは、あの頃と同じようだ。
AIが導き出した回答は、あの頃感じた恐怖感をなぞってきた。爽やかなフュージョン系の電子音楽、深夜の静寂の中で聴く電子シンセサイザー、どこか哀愁のあるメロディ。
嗚呼!それそれ!とスマホの画面の前で、何とも言えない感覚に苛まれながら、ひとり、部屋の中で扇風機の前で涼んでいた。
「何でこんな事を調べようと思ったんだ?」
と不思議がりながらも、次の瞬間、「あっ、あの時の事がきっかけだったなぁ…」と感傷に耽るのであった。「彼女さんには、大変な思いをさせちゃったなぁ」とぼんやりと思い出す。
あんな大変な一日は二度と戻らないことを、検索結果の無機質な文字が突きつけているようだった。
男は自分の空腹にやっと気がつく。

もう、猛暑とは言ってられない。酷暑の中、交わることのない、それぞれの空腹を抱えて、彼はゆるゆると炊事場へと向かった。


ご覧いただきありがとうございます。
先日記事で宣言した、小説のプロローグをお届けしました。

実は本編作成のために資料を確認していたのですが……もう、頭の中がとっ散らかること、とっ散らかること‼️
一方で、誠に勝手ながら(本当に勝手ながら!と自分に突っ込みたくなりますが)、締め切りを意識し始めている自分もいたりします。

創作って、楽しいけれど、どこか怖いものですね。

制作の詳細は最近始めたX(旧Twitter)でも、相変わらずポツリポツリと公開しています。
こっそり覗いていただけるのも嬉しいですが、フォローしていただけると、間違いなく、作者の励みになります。こちらもよろしくお願いします!

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