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「アートがむずかしい」と言われる理由/うまい棒げんだいびじゅつ味

現代美術家の松山智一さんが昨日から麻布台ヒルズギャラリーで開催中の個展で「うまい棒〜げんだいびじゅつ味〜」を10万円で販売したことが大きな話題になっています。

SNSでは「アートと言えばなんでもありかよ」「意味がわからない」「金持ちの道楽」「ぼったくり棒」というような否定的な意見も噴出していて賛否両論になっています。

今回はこのうまい棒がどういうアートかわからない人のために、現代アートの解説をします。

わかればわかるほど楽しいのが現代アートの世界なので、この記事で楽しみ方のコツを少しでも掴んでいただけたら幸いです。

アートがむずかしい理由:結論

知識が無いと理解できないアートまで感性で見ようとするからむずかしく感じるんだと思います。

解説

まず、アートの見方は【感性で見る】、【理性で見る】の二種類あります。感性で見るというのは見た目が好み、心に響く、など直感で見る見方。理性で見るというのは、作品のメッセージや文脈、コンセプトなどを読み解く目で見るという意味です。

ただ日本は美術の見方に関する教育が行われていないので、理性で見るべき作品に対しても、見た目の美しさや心に響くかどうかでしか見ていない人が多いと感じます。

そのため、整ってない見た目の作品や、人に迷惑をかけるような表現が登場すると「こんなのはアートじゃない!」と拒絶反応を示しがちです。

例えば芸術家が行きすぎた表現で逮捕されるようなニュースが出るたびに「人に迷惑をかけるようなものはアートじゃない」「アートとはもっと心の琴線に触れるような〜云々」という論調のコメントをSNSではよく見かけますが、そういう人はアートとは何かを語れるほどアートの知識を持っていないと断言できます。

なぜならアートとは既存の概念の外側に向けてチャレンジする人たちの歴史でもあるので、一般感覚的には非常識とされる表現も多いからです。そのため、非常識な時点でアートじゃない!となる人はアートとは何かを分かっていないのです。

実際「法令違反とか人として終わってるけどアートとしては成立してるな」というパターンも結構多いです。犯罪者を擁護するつもりがないので「人として終わってる」という部分を改めて強調しておきます。

今や現代アートの中心人物のひとりと言えるバンクシーだって公共物に落書きするただの迷惑者ですからね。

【現代アート】というアートをむずかしくした存在

現代アートはアートの1ジャンルに過ぎません。ですが世界のアートの中心的存在なので目立っています。

傍から見るとよくわからない絵が何億円、という世界に見えますよね。よく「作品の良し悪しは関係なく、作者が有名だからお金持ちの人が投資目的で買ってるんだろ」という誤解がありますが、むしろ有名人でも作品が良くなければちゃんと評価を落とすのが現代アートの世界です。

現代アートは主に【文脈】と【コンセプト】によって構成されています。【画力】では構成されてません。そもそも絵を描かないアートも多いです。

初心者の方は特に【アートの文脈】という概念を理解できると一気に現代アートへの理解が深まると思います。最初はアートの文脈という言葉自体を調べてください。

現代アートの始まりはデュシャンという人が自分が委員を務める展示会に偽名を使って便器を展示しようとした時だと言われています。「泉」というタイトルが付けられたこの便器の展示は委員会によって「こんなもん美術品じゃねーだろ」と普通に却下されました。デュシャンは逆ギレして委員を辞めました。

デュシャンは単に美しい作品よりも「見る人が考えを巡らせる」作品のほうが芸術的な価値があるのではと考えました。

そのため「これが芸術かどうか」自体を問うような作品を多く残しています。椅子に自転車の車輪をくくり付けただけの作品も残っています。作品をキッカケにして鑑賞者が色々なことを考えることも含めて、作品なんだと主張しています。

そんな思考をこじらせた人が始めたジャンルなので現代アートは難解なのです。

この思想を知らないまま、いきなり椅子に括り付けられた車輪を見た人は「意味がわからない」「こんなのアートじゃない」と言うでしょう。

あるいは「車輪ってよく見ると綺麗だな」というような心優しいことを言う人もいるかもしれませんが、それもあくまでも感性で見てるだけで、現代アートの見方を間違えてるとも言えます。

ただ、そういった見方をする人も当然いると想定して作られるのが現代アートなので、感性で見て否定的になる人や作品の意図を読み取ろうとして深掘りする人など全ての鑑賞者の気持ちを含めて話題を作るのが現代アートなのです。

そのため未来を含めて「なんの話題にもならない」というのが現代アートにとっての敗北と言えるかもしれませんね。

うまい棒〜げんだいびじゅつ味〜がどういうアートなのか

というわけで話をうまい棒に戻します。これも先に紹介した現代アートの思想で作られたものとして考えるとかなり分かりやすくなると思います。

誰もが馴染みのあるうまい棒を美術作品として再定義することでこれがどういうアートかを考えさせる、という構図自体が現代アートの趣旨に沿ってると思いませんか?

この作品のポイントは鑑賞者のうまい棒に対する思いを邪魔しないようにデザインをシンプルにしたことと、堅牢なアクリルの箱でうまい棒を密封したことだと思います。

つまり美術作品として長期間残せる形にうまい棒を再構築したということです。

うまい棒が当たり前に販売されている現代ではピンとこないかもしれませんが、うまい棒がもう存在しない100年、200年後の未来の人がこの作品を見て21世紀の人々の暮らしに思いを馳せることができるというところにこの作品の「現代性」があります。

つまり現代アートの「現代」というのは「過去や未来から見た今の時代」という意味で、現代人が作るアートという意味ではないのです。

そのため現代アーティストは遠い未来で自分という作家がどう評価されるかを非常に気にしています。

誤解してほしくないのは作者も結構悩んで作品を作ってるという部分で、このうまい棒も全く売れずに美術史になんの爪痕も残さない可能性もありました。

アートに興味がない一般人からも賛否両論が既に出てる時点で世の中で話題になってるということので、このうまい棒に関しては一定以上の成功を収めると思いますが、現代アートの作品作りというのは決して金持ちの道楽なんかではなく、作家もそれなりにリスクを背負ってわざわざ変なことをやっているということは理解した方が良いかと思います。

現代アートはもっと鑑賞者のものにしていい

現代アートは鑑賞者が「自分にとってこの作品はどういうものか」を考えることが重要な要素なので、作品の価値は鑑賞者の裁量に委ねられているとも言えます。

作品の見方に正解があっても、作品をどう思うかには正解がないのです。人それぞれの考えを含めて現代アート作品だからです。

そのため現代アーティストは作品の見方をよく解説します。こういう文脈に沿った作品で、こういうところに自分の作家性や現代性を込めました、というような説明ですね。

その見方で見た時に鑑賞者がどう感じるかが現代アート作品では重要なので、当然作者の作品ではあるんだけど、自分がこの作品の意義を考えることで完成する作品という意味では鑑賞者の作品とも言えます。

日本人は相手の気持ちを汲もうとする優しい気質が強い民族なので、アートに対しても作者がどういう狙いで作ったものかを真っ先に気にしがちですが、現代アートに関しては「意味は自分が読み解くもの」だと理解することでより考えを巡らせることができると思います。

様々な現代アートを通して「自分はどう考えるか」を楽しむことで、自分の思考の幅を広げたり、思想を掘り下げることにも繋がるのが現代アートの良さだと思っています。

うまい棒はその典型的な例で「作品が作者のアイデンティティではなく、その人のアイデンティティになるのが重要」だと作者の松山さんがインタビューで語っていました。

僕の絵は現代アートじゃない

ちなみに僕が描いてる絵は現代アートではないです。

僕は観る人に思考力より直感や想像力を養ってほしいので野性をモチーフに描いてます。想像力次第で人生の良し悪しが決まると思ってるからです。

また【鼓舞】というコンセプトで全ての作品を描いてるので絵を観る人の気持ちを盛り上げたり、頑張る人の背中を押したりしたいんですよね。

僕の絵を見る人には全く頭を悩ませてほしくない。そのため、むしろ現代アート的にならないように気をつけてます。

ただ、現代アート自体はとても好きだし現代アーティストのことを人間の可能性を広げるためにチャレンジしてる人達として見てるので結構リスペクトしてます。

流行りの作風をパクるアーティストがわらわら湧いて出てきたり、資本主義批判的なアーティストが札束で殴り合うようなマーケットに参入してるのを見かけると一概には尊敬するとも言いにくい部分もありますが、僕は基本的に現代アーティストはかっこいいものだと思ってます。

ということで今回はアートの見方の解説をしました。ただ僕は批評家でも現代アーティストでもないので間違ってる可能性もあります。興味が出たらぜひご自身なりに掘り下げてみてください。

この記事がよくわからないアートについて調べてみるキッカケになれば嬉しいです。


【個展開催情報】

来週末3/14から3/30まで汐留のGallery Seek(港区東新橋1丁目8−2 カレッタ汐留 B1F )で個展を開催します。小さめの会場ですが新作を展示します。

3/14,15は会場にいます。また14日の17時からは会場の壁にライブペイントを描きますのでよかったら見に来てください。ライブペイントはどなたでも無料でご覧いただけます。

初日はご来場の方との交流会(有料)もありますのでお気軽にご参加ください。




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田中ラオウ/画家 この記事は筆者にお小遣いをあげたいくらいグッときたぜ!というゴキゲンな紳士淑女の皆さんはぜひチップお願いします。