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しじゅうくにち旅物語

第四話 普賢菩薩(四七日よなぬか)

くんくん

クンクン

良い香りがいっそう強く漂って来ます。
お線香を絶やさずに焚いてくれてるんだなぁ、そう思い思わず手を合わせて合掌しました。

ありがとう
ありがとう

なむだいしへんじょうこんごう
なむだいしへんじょうこんごう

教えてもらった言葉をずっと呟きながら歩いていました。

初めてこの地に来た時は恐怖と不安でいっぱいだった事を思い出しました。
あれから21日、そして今度誰かに会ったら28日目になることになります。

こんな経験は本当に初めてだなぁ、と思いながら歩いていました。
ま、死ぬっていうことは誰でも一度きりの経験だよなぁとクスっと笑ってしまいました。

遠くの光が少し大きくなったように思うのは目的地が近いからでしょうか。

そんな時、肩をトントンと叩かれて振り向いた、そこには大きな真っ白な象が立っていました。

うわぁ!と尻もちをまたもついてしまいました。

あははは、と笑い声が聞こえて上を見ると何とも優しいお顔の方が座っておられました。

これはこれは、驚かせてしまい申し訳なかったですね、私の名は普賢菩薩(ふげんぼさつ)と申します。

思わず座ったままお辞儀をし、宜しくお願いいたします。と答えました。

自分の名を思い出せましたか?
と尋ねられました。

私は.....青空晴天信士と申します。
え?なぜ....心に浮かんだ言葉が口から出ていました。

良い名ですね、やっと仏としての自覚が芽生え悟りも開かれようとしているご様子、とても良いことです。
貴方は28日間これまで三人の尊格さまに出会い仏道の道を旅して来られました。
私は貴方が本来のお姿になれるようにいわば、その仕上げの係とも言えましょう。

仕上げ....いよいよこの旅も終わりに近ずいている言うことか....そう思いました。

いきなり普賢菩薩さまは両手に持っていた剣(宝剣ほうけん)で斬りつけて来ました、あぁーうわぁーと叫ぶヒマもなく容赦なく頭から身体の先までを斬りつけ、いかがですか?と、優しい声で尋ねられました。
未だ貴方に微かに残っていた穢れを斬ったのです。

あの...何というかびっくりしましたがとても良い心持ちです。
さぁ、行きましょうか、未だ先は長い
そう言って象の向きを変え歩き出しました。

はい、行きましょう、そう言ってゆっくり2人と象はゆっくりと歩き始めました。

この世には現世でのような感情も出来事も何もありません、縛りも何もなく人として生きている間にあったまとわりつく様な感情も何も存在しないんです。
普賢菩薩さまは唄うように話してくれました。

そう言えば、私、何も考えずにこの何日か歩いていただけでした、思ったままの事を言いました。

貴方は本当に仏様になる準備が出来たみたいですね、貴方の修行はまだまだ続きますが、まずは貴方が仏の存在を信じなくてはいけません。

それから普賢菩薩さまは色んな事を話してくれました。時折り経典らしきものを読み聞かせてくれたり、お大師さまのことや如来さまのこと。

聞いているととても心が安まり頭の中に冷たい空気が澄み渡るような心地よさ

さぁ、着きましたよ。
そう言って大きな湖のような池のようなほとりに立って普賢菩薩さまはこちらへというような招く仕草をしました。

招かれたそこには綺麗な水がありキラキラと輝く水面には大きな蓮の花が咲いていました。

この水面に自身を写してみてごらんなさい。そう普賢菩薩さまは言いました。

言われて覗き込んでみるとそこには

なんと!緋色の衣を着た綺麗な自分が映し出されていました。真っ白な着物を着ていたはずなのに、なぜ?いつの間に....
そう驚いている私に

もう貴方は出家され仏としての道を歩き始め修行をされているのです。
そのお姿こそ、本来の貴方の姿なのですよ。
普賢菩薩さまは優しくそう言われました。
涙が出て止まりませんでした。
本当に本当に私のような者が仏様になれるのでしょうか....

なれます、と言うか、もう仏様ではありませんか、と優しい笑顔でおっしゃいました。

ありがとうございます
ありがとうございます

そう答えるのが精一杯でお顔をまともに見ることが出来ませんでした。

さぁ、しっかり仏として修行を続けなさいね、これから本格的な修行をされるのですから。貴方にはいつも大きな守りが付いておられます。それを忘れないように、ね?

この次に貴方がお会いする尊格さまはとても貴方にとって重要な方です。
心してお会いなさいね。

はい、心得ました。

普賢菩薩さまは優しい笑顔で、では私はこれでと言い残し象と共に暗闇の中へ消えていきました。

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門

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