しじゅうくにち旅物語
最終話極楽浄土(ごくらくじょうど)~光の中へ~
そこは大きな大きなとても大きな門でした。
中からはとても眩しい光が溢れており、上を見上げると何かキラキラと光り輝いており眼も開けていられないくらいの眩しさです。
圧倒されて立ち止まっていると、
やっと着きましたねぇ。
え?と思い声の方を振り向くと、とても綺麗な朱色の天衣をまとったとても優しいお顔の仏様が横に居られました。
私は弘法大師(こうぼうだいし)、貴方と一緒に此処まで歩いていたのです。
えぇ???弘法大師さま!お大師さまではありませんか!私の隣に居てくださったのですか?しかもずっとですか?
ええ、正しくは49日を旅する方達全ての方の傍にいるのです。
そうだったのですね、ちっとも知らずに本当に申し訳ありません、そう言って深くお辞儀をし、弘法大師さまに謝りました。
そう言えば、あなたには大きな守りが付いていると普賢菩薩さまがおっしゃっていたが....それはお大師さまの事だったのか....
謝る必要などありませんよ、この極楽浄土まで辿りついた者だけにしか私の姿は見えませんから。皆、初めてこの地に降り立った時には迷い、戸惑い、何とか逃げ出そうとするもの。その迷いや恐怖を取り除き、出家へと導き仏道を正しく歩けるようにその旅の7日毎に尊格達が現れて「仏」の自覚を確かなものにするのです。貴方も7人の尊格とお会いになったでしょう?
はい、皆様とても素敵な方達でした。おかげさまで此処に辿り着けたのです。
私は道中、貴方のような旅人が安全に旅を続けられるように見守るのです。中には現世での記憶がいつまでも残り肉体を持って歩いていると思い込む者もいます。怪我や病気などで肉体そのものが不自由だと思っている旅人もいるのでね、とニッコリ微笑まれました。
もうこの世には肉体など存在しないのですけどね?旅人の方へお顔を向けてにっこりと微笑まれました。
そうだったのか、私は確かに歩いていたと思っていたけれど肉体は無かったのだ....待てよ?
私にはお大師さまのお姿がハッキリと今見えております。それに私も緋色の衣を着せて頂いております。
ほっほほ、自分の腕を抓ってごらんなさい。
そう言われて腕を抓ってみました。
あれ?痛くない、なんでだろう.....
貴方が見ておられるのは魂のお姿です。仏様という魂です。
なんと!そうだったのか、私は魂で旅をしていたんだ.....見えていたものは魂の形だったのか・・・見えているものは何も無い、初めから無い、そう教えられたのはこういうことだったのか・・・
やっと理解出来ましたか?
はい、ありがとうございます、ありがとうございます。心からお大師さまに感謝しました。
さぁ、本当の仏道への世界はこれからです。まだまだ旅は続くのですからね。あなたを助けた尊格達も待っていると思いますよ。
さぁ、先へ進みましょう、そう言ってお大師さまは光の中へ消えていきました。
はい、そう言って新仏様も後に続いて光の中へ入って行かれました。
こうして一人の旅人は7人の御尊格さまに助けられて無事に極楽浄土へ辿り着いたのです。現世に残してきた家族が絶やさずにお線香を焚き、お経を唱えてくれたのも旅人には本当に幸運な出来事でした。
めでたし めでたし
【あとがき】
このお話しを書こうと思ったのは私のアカウント名にもある通り、母が介護事故で急逝した事がきっかけでした。母は現在どういう所でどんな風に過ごしているのだろうという疑問と心配で仏教の世界を自分なりに調べた事が始まりでした。母の家系は高野山真言宗なのでお大師さま(弘法大師さま)を御本尊としております。宗派の違いで「これは違うのでは無いか」と感じた方もいるかと思いますが、そこはご容赦頂ければと思います。49日については諸説ありますがこのお話しでは7日毎に故人を導く為に存在する7人の御尊格さまを中心に作成させて頂きました。おとぎ話風にしたのは誰もが思う「死後の世界」その49日という期間を舞台に出来るだけ分かりやすく書いたつもりでいます。
このお話しの監修をしてくださったのは高野山真言宗の住職さまにして頂き創作したものになります。
最後まで読んでくださった皆様本当にありがとうございました。
