俺氏、リアルげっとわいるど退社した件。
五十路のおじさんが中二病を再発したので、ラノベ文体で制作ログを書いた。
「痛い」とか、「キモイ」とか、そう思っても胸にしまっておくように。
オジサンはしいたげられているんだ!
……そうだろ?
……そうだよな?

閑話休題。
「今日は午前中で勤務が終わりだ」
引き出しの奥から最後の書類を取り出し、人事のトレイへ滑り込ませた。
使い慣れたキャスター付きの椅子を、机の下へ押し込む。
いつもと同じフロア。電話のコール音。キーボードを叩く乾いた音が響いている。
だが、その輪郭はどこか遠く、まるで一枚のガラス板を隔てているかのように白々しかった。
後頭部の奥で、シンセサイザーの重低音が鳴り始めた。
あの有名なエンディングの暗闇を駆けるイントロだ。
エレベーターの扉が開き、エントランスの自動ドアを抜ける。
外の空気を肺の底まで吸い込んだ。
アスファルトの照り返しが眩しい。
脳内のイントロが、ボリュームを一段階上げた。
すれ違う背広の群れを逆行し、駅の反対側へ向かう。
平日の昼下がりに、ネクタイを緩めて歩く。
その事実だけで、靴底が数ミリ浮いているような奇妙な浮遊感があった。
気づけば、いつものラーメン屋の前に立っていた。
色褪せた赤い暖簾が、風で不規則に揺れている。
券売機に千円札を吸い込ませる。
「いらっしゃい。午後も仕事?」
カウンター越しに大将が声をかけてきた。
俺は一拍遅れ、曖昧に会釈だけを返して食券を置いた。
いつもは弁当の平日の昼に、ラーメンと餃子をキメる。
これ以上の贅沢はない。
湯気が眼鏡のレンズを白く曇らせた。
カウンターの奥から、鉄鍋で餃子の油が跳ねる音が爆ぜる。チリチリと甲高い音が、鼓膜を心地よく叩く。
割り箸を割り、スープを一口すする。
豚骨と醤油の塩気が、胃の腑に熱を落としていく。
その瞬間、脳内で抑え込まれていたメロディが、一気にサビへと突入した。
アスファルトを蹴り、荒野へ駆け出していくようなビート。
平日の昼に食べるラーメンと餃子は、たまらなく最高だ。
箸が止まる。
レンゲを置き、口元をペーパーで拭う。
店を出る。
背後で、換気扇の低い唸り声が回っていた。
──最高に決まっている。会社を辞めた日なら、なおさらだ。

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