泣き虫な太陽
太陽が泣く日は、洗濯物がうまく乾かなかった。
空はよく晴れていて、光だけが少し濡れていた。
祖母はそれを「太陽の涙」と呼んだ。
「あの子はね、明るくしているぶん、誰よりも寂しがりなんよ」
そんな話を子どものころは本気にしていた。けれど、大人になるにつれて、太陽が泣くなんて馬鹿げていると思うようになった。
君と暮らすようになってからも、そうだった。
「今日は泣いてる日かもね」
洗濯物を干しながら、君はそんなことを言った。
乾いているはずのタオルが、少しだけ冷たい日。
白いシャツの袖だけ、風に揺れて重たそうな日。
僕は、「気のせいだよ」と笑っていた。
君は「夢がないなあ」と言って、困ったみたいに笑った。
その日、君がいなくなった朝もよく晴れていた。
昨日まで脱ぎ散らかされていた靴下も、読みかけの本も、飲みかけの麦茶も、そのまま残っている。
部屋の中から君だけがきれいになくなっていた。
何をすればいいのかわからないまま、洗濯機を回す。
いつもの癖で君の白いシャツも入れてしまってから、もう着る人がいないことを思い出した。
ベランダに干したシャツの袖は、昼になっても冷たいままだった。
空は、何も知らないみたいに青かった。
乾かなかったシャツを取り込んで、
もう一度だけ空を見上げた。
明日は晴れるだろうか。
君がいなくなってから初めて、
少しだけ太陽の話を信じてみようと思った。
こちらの企画に参加させていただきました。
片桐 みかんさん、いつも素敵なテーマありがとうございます。
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