社会人の私の人生について≪⑤≫
こんにちは、サーモンです。sa1monと書いてサーモン。
前回は私の人生を≪社会人編④≫として記事にしました。読んでいただけましたか?
そうですね、社会人になってからも、私の人生は深い谷と標高の低い山でできています。そんな人生を赤裸々に書くつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー※トラウマがある方、PTSDを患っている方はこれ以上読み進めることはオススメしません。覚悟のある方のみ進んでください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は、自分の人生や「谷」を話すとき、『片棒を担がせる』とよく表現します。そう、その人の人生や思考に大きな負担を掛ける可能性があるからです。『聞いてしまった』と後悔されては、私も今後付き合いにくいので、基本は墓場まで持って行くつもりでいます。
ただ、せっかくのnoteですから。えらい長文やな、こんな人も居るんだな、世界は広くて狭いなと感じていただけますと幸いです。少しユーモアを加えて書いております。今回は≪社会人編⑤≫です。
【私の人生】
≪社会人4年目≫
謎の研修会で出た意見をまとめた冊子が届いたのは1ヵ月後のことだった。何の役にも立たない。店舗から2人も抜けて受けた研修にベテラン薬剤師は興味津々だ。だが私の死んだ顔を見て、『実りのない研修ってあるよね』と仕事に戻った。
比較的平和だ。◇◇さんを除いては。
同じミスを繰り返す癖や、自分だけのPCでもないのに周辺を私物で固めていること、問題を独自の解釈で解決しようとして後から大問題に発展すること、私のミスをいちいちナジること、とあるサイトに登録して勉強会に参加し定期的に単位を収めていることを自慢し、『私、そのサイトは使ってないですね』と返すと『ポイントも貯まるのに?』と人生の半分損してる派閥の言い方をすることなど、挙げ出したらキリがない。
とにかく周囲に迷惑さえ掛けなければいい。私がみんなの盾になろう。それが管理や店長の仕事なのかもしれない。『あぁ、はいはい、うんうん』それだけで相手は満たされるのだ。
新しい後輩がきた。事前情報によると「変わった子」らしい。最初はそんな風には感じなかったが、徐々に「自分の裁量」で物事を決めたり、進めたり、解決したりする癖が分かってきた。
『分からなかったらまず聞こうね』、そう言っても『はい!』とは言うが、後々炎上するなんてことはザラだった。弱ったなぁ…毎回、毎日、毎週注意しても直らない。こればかりは報告書に書くしかないし、社長にも知らせておく必要がある状況だった。
その子が突然私を休憩室に呼び出した。何事かと思い、座って話を聞くことにした。すると『◇◇さんの扱いがひどいと思います。仕事できる人なのに、どうしてむげにするんですか!』と真剣な顔で言う。
おぉ…そうか。そう思うのか。こういう場合はどう振る舞うのがベストだろう。中立な立場でなければいけないのは、もちろんだが、正直どうしようもないところまできている。本当に何度言っても同じことを繰り返すのだ。それが店舗の損失になっているのも事実だ。患者の中には『あの人以外で』と言う人もいた。
それって、どうフォローすればいいんだ。
まずは、情報から整理しよう。
私『あの人について、今まで配属された子たちから何か聞いた?』
彼『仕事ができない人で、社員から嫌われてるって聞きました』
私『そうだね、現状はそうなってる。それ以外は?』
彼『とくには。何か問題がある人なんですか?』
私『(かくかくしかじか)。それで、困っている状態なんだよ。もう打つ手がないというか、庇いきれないというか…』
彼『じゃ、僕が担当します!あの人のフォローを僕がします!』
はて、この子は何を言っているのか…でも、良いかもしれない。管理薬剤師をまだ経験したことのない彼に、マネジメントの一環として◇◇さんを見てもらう方針を取れば、周囲も距離を開けれて仕事に集中できるだろう。
その前にやることがある。
私『じゃ、お願いしちゃおうかな。でもね、$$くん。君も失敗が多いし、あまり周りを頼らないことが多いよね?それってね、すごく悲しいことなんだよ。まだ若いから、周りは助けたくなる。でも自分だけで抱えてしまったら、どう助けたら良いのかも分からない。それは仕事ができていないから助けたい訳ではなくて、そうやって店舗は回っているんだよ。分かるかな?』
彼『分かりました。もっと頼るようにします。分からなかったら聞くようにもします。あの人のことはどうしたらいいですか?』
おいおい、担当しておくと言っておいて何も決めてなかったのか。
私『そうだね。この店舗のルールがあるよね?たとえば、処方箋原本は投薬台まで持って行かない。これは$$くんも実践していて、現実「原本」を患者に渡してしまうなんてことないよね?』
私『それに、$$くんはコミュニケーションを取るのが上手い。患者からたくさんのことを聞き出してくれている姿を今まで見てきたから、「こういうことを聞き出す」とかじゃなくて「こうすれば患者は話してくれますよ」とか「この角度から聞けば、患者は心開きやすいですよ」とかここのルールも合わせて自分の経験から教えてあげてほしい。でも$$くんより年上の人だから、指摘や指導は良い気しないよね?だから、工夫して伝えてほしいんだ』
私『そうすれば、◇◇さんはどんどん良くなるし、$$くんはコミュニケーションに磨きがかかる。どう?一石二鳥じゃない?』
彼『良いですね!そうしてみます!』
私『まずは、いっしょに予製作ったり、休憩中に話してみるところから始めてみよう』
彼『はい!』
これで何とかなるだろうか。まずは、様子見だ。
彼がどんなタイプなのかカテゴライズできていないが、役割を与えられると一気に開花するタイプかもしれない。自分の仕事をやりつつ、上手く対応してくれることを祈る。
社長は心配でならないようだ。本社から派遣してもらっているが、まだ未熟とは想定していなかったからだ。『だからこのチームは!』と怒っている。そこで、彼からの提案を伝えてみた。うんうんと頷く…納得したようだ。
積極的にコミュニケーションを取りに行く彼に、◇◇さんは最初引き気味だったが、徐々に身体を彼に向けるようになってきた。◇◇さんの興味をとことん埋めてくれる彼(包み隠さず話してしまうという意味)は絶好の話相手だった。同じ男性同士、結婚などの将来についても話しているようだ。
(お給料とか常識レベルで話さない方が良いこともあると伝えたが…)
あるとき、彼($$くん)から、また呼び出された。
『◇◇さん、やっぱり周りからの評価に納得してないみたいです。なんか避けられたり、コソコソ言われているようで嫌だって』
うむ…事実だ。私はいつだって『まぁまぁ、今回はこれぐらいで済みましたからね』と言って話をできるだけ早く「大」で流したり、愚痴の中に入らないようにしてきた。それは◇◇さんには伝わっているだろうか。
『話せるのは、$$くんと○○さんぐらいだって』
ほう。私が入っているのか。まぁ、怒鳴ったときもあったが陰口を言っていないのが評価されたのだろう。
世間話にだって、手を動かしながらでも付き合ってきた。大半はどうでもいい話だが、その人がどんなことを気にするのか、興味が湧くのか、意識しているのかが、実は雑談から分かることがある。だから、話半分でも聞いているのだ。
『おい、その対応間違ってるぞ』と後の祭りだってことは多々あった。訂正の電話をしないと飲み方を間違えるかもしれないと思うことさえ。偏った思考を正すのは正直疲れる。とくに周りが諦めの境地に入っていては、大きなカブを一人で引っ張っている気分だ。
彼に何と言えば納得してもらえるだろう。今までを見てきていないのに、相手の言い分をまる飲みしてしまっている。周囲の意見を代弁するのも危険だ。
私『そうね。今までいろんなことがあった。諦めずに何度も同じことを話したり、指摘したり、ときには怒ったこともあった。それでも変わらなかったんだよ、今もね』
私『それで周りは参っちゃって諦めた。それが、悪い方向にいっているのは私も分かってる。コントロールしなきゃいけないんだけど、こうも女性ばかりだと、どうしてもね。正直難しい、で、$$くんを頼ってしまっているんだな、これが』(俯きながら話す)
彼『僕がなんとかしてみます。直れば、周りの評価も変わりますよね?』
私『そりゃ見る目が変わると思うよ。これから長くいっしょに働いていくんだから』
彼『分かりました!もっと頑張ります!』
上手くいったか。こういうのは得意なんだ、なぜか。「よいしょする」という表現が正しいかは分からないが、これ以上私の仕事が増えてしまっても困る。彼のやる気を買おうではないか。
そこから、『処方箋原本は前からでも調剤室のカゴに入れられるようにしたら、渡さずに済むかもって』と言われれば、カゴ前の引き戸を開け、投薬台からも投入できるようにした。
『自分のところにカゴがあれば、原本を渡さずに済むかもって』と言われれば、足元にカゴを用意した。
正直この対応が合っていたのかは分からない。ルールを守っていればそんな対策打たなくても良いのだが、直らないのなら「施し」をするしかなかった。従業員は何も言わなかったが、疲れている私の背中をよくさすってくれた。
コミュニケーションの改善はなぜか私で試されていた。患者に使えよ、と思ったが質問が止まらない。『$$くんから聞いたんですけど』がお決まりだ。
彼が余計な話までしていることにも問題が出てきた。こんなに分別のない子だったのかとため息が出るほどだった。
なぜかというと、セクハラの被害に遭った子が今どこにいるかまで話していたのだ。これは…看過できない。私の後輩なのだ、私が止めなければ。
呼び出して、話をすることにした。
私『◇◇さんと関わってみてどう?何か変わってきたり、改善したり、自分の意識に変化があったりした?』
彼『そうですね!良くなってきていると思います!話もたくさんしてますし、もう仲良しですね』
私『(はぁ…)そうか。$$くんは従業員と仲良くしたいの?』
彼『店舗を回す上では必要なことだと思います』
私『そうだね。どんな人か知るためには、まず自分を開示するのが大切。でもね、ここは事業会社だよ。普段いる本社とは違う。雇用形態も給与も配属先も、全部違う。これはほとんどが個人情報だと思ってくれていい。というかそう思わなきゃいけない。それを傍から聞いたらどうだろう。気になるよね?◇◇さんはとくにそういうことが大好物。前にも言ったと思うけど、過去にたくさんの問題を起こしているし、$$くんの同期はツラい目に遭った』
私『話していいことと話してはいけないことの分別がつかないうちは、仲良くなんてなれないよ。それは上辺だけの話になる。だって何でも話してしまうんだから、信用されないよ。だから仲良くなれない。親しき中にも礼儀あり。これから社会人としていろんな店舗を経験するんだから、今のうちに「なんでも話してしまう」癖を直さないと痛い目に遭うよ。厳しいこと言っていると思うだろうけど、$$くんのことを思って言ってる。伝わっているといいんだけど』
彼『はい。すみません』
私『うん。もうこれ以上は言わないよ?一度で分かるね?◇◇さんとのコミュニケーションは続けてもらえるなら嬉しい。でも節度を持って付き合うんだよ?』
彼『分かりました』
それから、◇◇さんと$$くんの間に距離ができた。
彼は本社の意向で、その後すぐに異動となった。これで、店舗から薬剤師が1人減った。新規で派遣される薬剤師はもういないと言う。おおかた統括マネージャーの思惑だろう。社長が鼻息を荒くしていたが、私にはどうしようもなかった。ただただ、その人数差を埋めるために働いた。
どんどん疲れていくのが分かる。常に板挟みだ。
一度で話を聞き取れず、理解するのに時間が掛かった。『すみません、もう一回良いですか?』と聞き返すことが多くなった私をみんなが心配した。
「チルアウト」という飲み物にハマり出したのはこの頃だった。それとお菓子をいくつかロッカー前で食べて働き始める姿に痛ましさがあったのだろう。毎日、誰かが何かを差し入れしてくれた。『もっと食べないと』と。
休憩室の机の上は常に何かしらのお菓子が置いてあった。低血糖になりやすい私はトイレ休憩のついでに食べていた。ホッとしている姿を見られていたようだが、誰も何も言わなかった。
◇◇さんが私に『ブドウ糖ってほぼお菓子ですよね?持ち込んで良いんですか?』と突かれた。投薬台の後ろに常備してあるブドウ糖を指差す。
『あぁ、そうですね。前では食べないようにしていますが…気になるなら置かないようにしますよ』と返すと『僕も何か持ち込んでいいですか?』と聞いてきた。
面倒だ。事務員がガッと立ち上がる。目で説き伏せる。
『いや、衛生上よくないので、互いに止めときましょう。それで良いですか?』、相当疲れていた。このやり取りだって煩わしい。『分かりました。』、引き下がってくれて良かった。
私には唯一の楽しみがあった。それが社長との会食だ。まぁ、そんな堅苦しいものじゃなくて、ただの食事会だが。私はお酒をほとんど飲まない。
しかし、初めてご一緒させていただいたとき、日本酒を飲んだ。四国で有名な日本酒が置いてあったからだ。懐かしさでつい頼んでしまった。一口で皮膚が赤く染まる。水を飲んでは日本酒を、といった具合で飲み切ったが、昭和生まれの社長は『もう一杯いこう!』と頼みだした。弱った、正直キツい。
最悪の場合「失神」する。中には失禁してしまう人もいるようだが、私はただただぶっ倒れるだけだ。これは…水を大量に飲み干す。付き合いなのだから、負けられない。謎の対抗心で、3杯飲み切った。
基本私は残すのが嫌いだ。驚く程にマズいもの以外は、出されたものは平らげる。それが信条だった。それもあって3杯の日本酒は私の肝臓を壊しに掛かっている。目がチカチカするし、足元は覚束ない。社長にどんな話をしたのかも曖昧だ。失礼なことを言ったりしていないか、その確認さえできない。
帰り際に一人で帰ると頑なにタクシーを断った私に社長が『自分酔ったらオモロいな。また飲もな』と言われたのは覚えている。『お気を付けて』と言いながら、ヨタヨタと帰る。駅から徒歩7分がこんなに遠いなんて。買った水を飲みながら、やっとの思いで社宅に着いた。私は誓った、もう飲まない。
もうすぐ1年が経つ。社長は最後にご飯に行こうと誘ってくれた。密かに従業員何人か連れて行ったこともあったが、今回は2人でだ。
そこでこんな話が出た。
社長『配属されてすぐの頃さ、俺が関西戻るかもって話したやろ?』
私『あぁ、そんなこともありましたね。』
社長『そのとき何て言ったか覚えてる?』
私『まぁ大体は。怒ってます?』
社長『そりゃな!まだこーんな青い薬剤師に、あんなこと言われたら怒るわ。そのときは何も言わんかったけど、帰ってから缶ビール10缶開けて、壁にぶん投げたわ』
私「おぉ、怖…で、今復讐する気ですか?』
社長『いや、結局言ってることは正しいと思った。何も間違ってないって。そこから俺ができることって何やろうって考えるようになった、もっと深く、強く』
私『…』
社長『だから良かった。あんなこと言われて。感謝してる』
私『言いたいこと言っただけですけどね。私も社長と働けて良かったですよ。本心はどうなることかとヒヤヒヤしてましたから』
社長はよく飲むし、よく吸う人だ。旬の食べ物が好きで、お漬物の盛り合わせはとくに好んで食べた。好きな日本酒は「十四代」で、幻の日本酒と言われているらしい。私も好きな名酒・希少酒「勝駒」の話をよくしたものだ。
そこで、懐かしそうに話し出した。
社長『初めて俺の前で日本酒飲んだときあったやろ?』
私『あぁ、醜態晒したやつですよね、もう忘れてください』
社長『いや、いつまでも言ったる。あれは良かった。で、足元ヨロヨロで「一人で帰る!」って言って聞かんから、実は家まで見届けた』
私『へ?ストーカーじゃないですか!』
社長『失礼な!そりゃ女の子一人で帰らされんやろ。何かあったら嫌やし、部屋に入るまで見届けた…』
私『そのあとに、何度か残業していっしょに帰ったことありますよね?車で送り届けてくれたけど、毎回なんか「どこら辺?」みたいなやり取りありましたよね?あれ…演技ですか?』
社長『気持ち悪いやろ、家知ってたら。それとなく毎回聞いて、知らん振りしてた』
私『怖!どこに気遣ってんですか…笑』
そんなしょうもない話もできる仲だった。社長は妻子持ちだ。いつも酔うと子どもの話をする。会えてないのはツラいだろう。誕生日には帰るようにしていたが、学校行事にはほとんど行けていないと言っていた。育ち盛りの成長ぶりを見届けられないのは、なんというか父親をできていないように感じるのかもしれない。社長が稼いだお金で生活できているが、そんなこと関係ない。どんだけ同じ時間を過ごしたかが重要なのだ。
それにこう続ける。
社長『今までいろんな人間と仕事してきたけど…こんなに送られてきたメールの返信に緊張する相手はおらんかった』
私『そんな変なこと書いてましたっけ?』
社長『いや、違う。かなり練られた文章やと思った。本気で返さないと失礼になると思うほど。それで、スマホでメールを開いてチラチラ見ながら、PCで返信を書いてた』
私『私と同じことしてるじゃないですか』
社長『そうか。時折な、自分(私のこと)が言うことが刺さることがあるんや。本音っていうか図星っていうか痛いとこっていうか。今までそんなこと、あんまなかったから「どう返せばいいんや」って頭の中グルグル回る感覚があった。的確って言うんかな。自信持っていいで、鋭い視点持ってるし、泥臭く頑張れるのも良いことや。正直惜しい。もう居らんくなるの』
私『嬉しいこと言ってくれますね。言葉には気をつけるようにしてます。できるだけ失礼のないように。でも、言わなアカンときもあるでしょ?青くて何が悪いんですか。社長も相当泥臭いですよ』
2人で笑う。社長となら、どこまでも行けるような気がした。
その頃の社長は中国地方の店舗を奪われ続けるという窮地に陥っていた。本社から「任せられない」という理由で取り上げられていた。確かにすべてを完璧に統括することはできないだろう。だが、社長なりに努力はしてきたはずだ。その評価もなしに取り上げるとはなんて会社なんだと思った。
なので、最後の方はよく店舗に顔を出してくれていた。従業員も『今日も来たで、暇なんかな』と笑っている。以前も言ったが、上の人間が来るのは良いことだ。言いたいこと、伝えたいことが発散できる環境があるというのは、素晴らしい。
私はとある有名な観光地の「蔵」に来ていた。そこは全国から珍味を集めており、自社の日本酒をいっしょに販売しているのだ。それらを詰め合わせることも可能で予算に合わせて店員が見積もってくれる。
本当は「勝駒」をプレゼントしたいが、生憎手に入らない。県外どころか市からも出ない代物だ。ここの日本酒で我慢してもらおう。もう飲んだことのあるものかもしれないが、そこを心配していてはいつまで経っても詰められない。店員と決めた品々を指定した日時に取りに来ると約束して金額を払い、後にした。
従業員へのお礼も準備せねば。私はこういうのを考えるのが好きだ。相手の好き嫌いを把握して、それを見事に避けたブッ刺さるプレゼントを用意する。今回は全体ではなく個々に用意しよう。毎日スマホで情報収集して、相手を想像してはニヤニヤしていた。
従業員は従業員で何か怪しい動きをしていた。やたら年末の予定や好みなどを聞いてくる。
私はこの頃、現在のチームの在り方に疲れて、異動願いを出していた。もうここでは働けないと感じていたのだ。正当な評価も受けられない、と馬鹿正直に伝えたら直属のリーダーにキレられた。
次に行くのは、元直属のリーダーのいる部署だ。部署の活動を聞いても「え、いまさらそれに尽力するの?」と疑問だったが、自分の経験にはないことだったので興味が湧いた。
社長にもそのことを伝えたが、『これだけ辞める人間が出てきてるんやから、○○さんの異動をきっかけに見直してくれるとえぇんやけどなぁ』と嘆いていた。チームの人数は10人を切ろうとしていた。新入社員も入ってくれず、辞めていくばかりで「やれること」に限りが出てきた。
そのため、M&Aの際に「人員を確保する」という条件で契約した会社でも派遣を打ち切るなどの対応をしたため、そこら中でクレームが上がっていた。チームの上層部(長い間、地方でいくつもの店舗を管理し、現場との板挟みになっている一番大変な人たち)が議題に上げても、スルーされるという無意味な「会議」にまで成り下がっていた。
結局困るのは現場の人間、派遣される側の人間だ。トップダウンでもあれば良いが、『行け!』としか言われないのだから、事業会社から何を言われても答えることができず、これまた板挟みになる。それを報告書に書いても無視される現状は、「抜けたもん勝ち」に拍車を掛けた。
私は常々後輩たちにこんなことを伝えていた。
『仕事は大切やけど、プライベートも大切にね。彼女がいるとか彼氏がいるとか、結婚を考えているとかは早めに上に言っておく方が良いかも。出張や異動は仕事だから仕方ないけど、今後家庭を持つんなら働き方を考えなきゃいけない。その準備を怠っちゃいけないし、会社は尊重すべきだからね。』と。
それで『長期間地方で働きたくない』『パートナーと離れたくない』『責任のある仕事につきたくない』などと言う後輩で溢れた。すると会社側も無視できず、それでも湧いてくる案件に宛がうこともできず、結局「できない」と断る事態に陥ったのだ。
これは私が招いたことだろうか。当時パートナーがいなかった私にとって、『そんな甘っちょろい働き方で同じ給料を貰おうなんて、なんて虫のいい話をしているんだ』と思った。それとこれとでは話が違うからだ。
仕事は仕事。パートナーと少し離れたら死んでしまうのか?入社時に出張や年単位の異動ぐらい覚悟はしていただろう。それがいきなりどうした。たとえばもう結婚を控えていて、長期の出張や異動はできない。単発での派遣を続けて、地に足を付けて働きたいならば言い分としては悪くないだろう。子どもができれば尚更だ。
自分のライフステージやイベントに合わせて調整できる子は「全国職」から身を引いたり、転職活動をしたりして、環境を自分で整えた。
しかし、『パートナーが言うから』と仕事を制限する子らしか残っていなかった。結果、市内のヘルプにしか行かなくなった者、1週間の出張のみしか行かないと宣言する者が出てきて、チームは崩壊寸前。
コントロールできていないのは目に見えていた。私も早く抜けた方が良いと準備を急いだ。
従業員からのお礼はすさまじかった。お菓子、果物100%ジュース、ブドウ糖、好んで食べていた主食、私でも飲める日本酒。1週間に1箱ずつもらい、すべては持ち帰れないので消費しつつ、残りの日数を過ごした。
従業員でご飯にも行った。楽しかった。これからの人生についての講義が長時間に亘って行われたが、どれも参考になる話ばかりだった。『またおいで』、この言葉が一番嬉しかった。
そんな中、まったく空気の読めない人がいた。◇◇さんだ。
彼『相談したいことがあるんですけど。後で時間良いですか?』
私『良いですよ。珍しいですね(嫌な予感がする)』
彼『誰もいないですよね?あのー、僕もう辞めようと思っていて。来年の3月までかなって。けっこう限界が近くて、これでも頑張った方なんですけど。社長にはまだ内緒にしてもらえますか?』
私『あぁ、そうですか、分かりました。私は今年までなので、辞める頃のフォローができないのはご了承ください。しかし人事的なことで言うと、早めに伝えておくことで、社長は次の人員確保に早く取り組めます。まだ時間がありますが、社長にだけでも伝えておくのは、やっぱり◇◇さん的には厳しいですか?』
彼『いや、変に「まだいてくれ」とか言われるのも嫌なんで、来週中には言うようにします!」
私『(誰も引き止めないよ)そうですか、ありがたいです。じゃ、そのタイミングは◇◇さんが決めてください。ただ、社長が店舗に来る日を設定しないといけないので、自分の言葉でメールを作ってもらえますか?』
彼『え、僕がメール送るんですか?』
私『私から言うのもアリですが、その方が良いかなと思ったんですけど。』
彼『そうですね、そうします』
そして、彼は自分の言葉でメールを作り社長に送った。
『話があるので、来週中、店舗に来れますか?』、素っ気ない文だった。
もう私には関係のない話になるが、年内までは私の領分だ。しっかり見届けよう。人が一人、会社を辞める。そのイベントを不思議と他人事のように見ていたのは、今後の自分の人生を見通せていなかったせいかもしれない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回はここまで。またまた長い文章になりました。
店舗や部署って世界が狭いですよね。上司や仲間の機嫌次第で雰囲気は変わる。「仲良く」やる必要なんてないんですが、戦場を勝ち残る、食いしばって立ち上がるのって仲間がいないとなかなかできないことなんですよね。
皆さんはどうコミュニケーションを取っていますか?社会人たる者、仕事は選べませんが、人には得意・不得意があります。役割を割り振るだけで驚くほど進むことがあったりしますよね。それって相手のことをよく知っていないとできないことだと思うんです。
この文章を通して何か皆さんのヒントにでもなれば、本当に嬉しいです。
次回は、≪社会人編⑥≫です。ではまた次回。
