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夜明けの海

2010年1月1日
パチュアップキリカン ⇒ トラン 626Km

 元日。パチュアップキリカンから終着トランまで、626キロ。年をまたいだばかりだというのに、休む間もなく長距離である。

 出発は夜明け前だった。海沿いを走りながら、まだ低い太陽が水平線からじわじわと顔を出す。あまりに絵になるものだから、車を停めては何度もシャッターを切った。あとで写真を見返すと、ほとんど同じ構図の朝焼けが十枚近くも並んでいて、我ながら呆れる。元日の朝日というのは、そんなに人を素直にさせるものらしい。

パチュアップの日の出

 しばらく走ると「424」という距離標識と、道端の小さな祠が目に入った。この国では、道端の祠というのはいちいち律儀にお参りされていて、供え物が絶えない。誰が管理しているのかは知らないが、少なくとも忘れ去られてはいなさそうだった。

チュンポンまで83Km

 チュンポン県に入ると、いきなり巨大な鶏の像が現れた。ガソリンスタンドの前に、翼を広げて今にも鳴きそうな姿で立っている。チュンポンは闘鶏で名高い土地で、この鶏はいわば地元のシンボルらしい。それにしても、ガソリンスタンドの看板と並んで屹立する巨大な鶏というのは、なかなかシュールな眺めだった。同じような鶏の像が、この先何度も現れることになる。

ガソリンスタンドの軍鶏

 次に立ち寄ったのは、海軍の父として今も慕われているという皇族、クロムルアン・チュンポン殿下を祀った祠だった。長い階段を上ると、なぜか本物の大砲と魚雷がでんと展示されている。こんな場所に武器が並んでいる光景に、最初は面食らったが、殿下がタイ海軍を近代化させた人物だと知って、ようやく腑に落ちた。階段の先には殿下の像が立っていて、参拝する人々の姿もちらほらあった。

Chumphon Shrine

 その先、Wat Thu Phrasongでは、道路からでもはっきり見える巨大な黄金の仏像が待っていた。近づいてみると、これがなんとも不思議なポーズをしている。片手を顔のあたりに添えて、何かを思案しているような、あるいは目元を拭っているような、そんな仕草に見えた。屋根つきの祭壇の下で読経する僧侶や参拝客、赤い立て札に書かれた文字は、私には読めなかった。

Wat Thu Phrasong

 昼を過ぎて向かったWat Tam Khaokriabは洞窟寺だった。「Khao Kriab Cave 1km」という看板を横目に、線路の枕木のような道を抜けると、木製の階段が延々と続いている。山頂の洞窟入口までは370段もあるという。数えながら上ったわけではないが、途中で何度も休憩した記憶はある。洞窟の中には仏像が安置され、鍾乳石が幾重にも垂れ下がり、お供え物の入ったバスケットが置かれていた。頂上からの眺めは、階段の苦労に見合うだけのものではあった。

Wat Tam Khaokriab

 最後に立ち寄ったカオプルー洞窟も、また別の趣のある場所だった。アーチ状の入り口をくぐり、温泉のある敷地を抜けて、森の中の階段をさらに上る。傘をさした参拝客の一団とすれ違いながら、鍾乳石だらけの洞窟内を歩き回った。

Khao Plu Cave

 鶏、大砲、仏像、そして洞窟。元日からずいぶん盛りだくさんな一日だった。
 無事トラン・トラート往復 3,668Kmの旅が終わった。

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