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恐竜と赤いポスト

2010年2月27日
トラン ⇒ スラタニー 296Km

 トランの自宅を朝早く出た、急いでいる訳じゃなく早く起きただけ。特に予定があるわけでもなく、ただ次の町まで移動するだけの一日である。こういう日に限って、妙なものに出くわす。

 トゥンソンという町に差しかかったところで、恐竜が現れた。もちろん本物ではない。

ガソリンスタンドの恐竜

 ガソリンスタンドの張りぼての恐竜像で、二頭がこちらを睨むように口を開けている。タイを走っているとこの手の唐突なモニュメントに何度も遭遇するが、毎回理由はわからずじまいだ。恐竜の隣には、これといって特徴のない役所らしき建物があるだけで、町全体としては特に何もない、というのが正直な感想である。

 スラタニーに入ると、とたんに車の数が増えた。渋滞というほどではないが、二車線の道に軽トラックとセダンがびっしり並ぶ光景は、それなりに都会だ。まっすぐな道路標識を頼りに進み、まず目についたのが青い屋根のバスターミナルだった。長距離バスがずらりと停まっている。オレンジ色のバスも、青いバスも、行き先も様々で、これから乗る予定もないのに、しばらく眺めてしまった。

スラタニー第一バスターミナル

 町の中心部は、川沿いに古い建物が並ぶ、いかにも地方都市らしい佇まいだった。水上に浮かぶ小屋のような家々、その向こうに役所とおぼしき白い建物。市場の通りにはテントが並び、人と屋台がひしめいている。歩いていると、TAT(ツーリズム・オーソリティ・オブ・タイランド)にぶつかった。タイ観光局なんだが大した事は無いだろうとスルー。

タイ観光局

 少し行くと郵便局が、タイの郵便局は全国同じようなデザインだ。

郵便局

 バスターミナルをもう一つ抜けると、今度はソンテウやトゥクトゥクがひしめく市場通りに出た。青いソンテウが列をなし、露店の屋根がひしめき合っている。その先には極彩色の華僑廟が二つ、隣り合うように建っていた。

Hai Lam Ban Don Shrine

 一つは龍の彫刻が屋根まで這い上がるような賑やかさで、もう一つは朱塗りの門構えが妙に落ち着いている。どちらも線香の煙が絶えず、地元の信仰の厚さがうかがえた。

Hokkien Shrine

 日が傾く頃には空港に着いていた。タイ国際航空の機体が並ぶ滑走路の向こうに、芝生と水路が幾何学的に区切られている。車窓の外が見事な夕焼けに変わった。オレンジから紫へ、飛行機の翼越しに空が焼けていくのを、ただぼんやり眺めていた。

Surat Thani Airport

 夜になって、エアアジアの機体にライトが当たる。滑走路の向こうに空港のターミナルが灯りをともし、一日の終わりを告げていた。296キロ、恐竜からポスト、廟から夕焼けまで、これといった目的もなく通り過ぎただけの町だったが、こうして振り返ると、案外覚えているものだ。

(今、あの恐竜はまだあそこに立っているのだろうか。)

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