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ルアンプー・トゥアット

パチュアップキリカン県ホアヒン近郊の「ワット・フアイモンコン(Wat Huai Mongkhon)」に鎮座する、あの巨大で威厳に満ちた像。その方は、タイで最も崇拝されている伝説の高僧、ルアンプー・トゥアット(Luang Pu Thuat)です。

彼が生きた時代は、タイがアユタヤ王朝として繁栄を極めていた16世紀末から17世紀。日本でいえば、戦国時代から江戸時代へと移り変わる激動の時代でした。


黄金の蛇と真珠

ルアンプー・トゥアット(本名:プー)は、タイ南部のソンクラー県で、貧しい農家の夫婦の間に生まれました。彼の誕生にまつわる有名なエピソードがあります。

ある日、両親が田んぼで仕事をしている間、赤ん坊のプーを木陰の揺りかごに寝かせていました。ふと両親が様子を見に戻ると、なんと巨大な黄金の蛇が揺りかごに巻き付き、赤ん坊をじっと見守っていたのです。驚いた両親が祈りを捧げると、蛇は静かに去り、赤ん坊の胸元には光り輝く「蛇の真珠」が遺されていました。

この出来事は、彼が後に「聖者」となる運命を予感させる最初の奇跡として語り継がれています。


海を甘くした足

青年となった彼は出家し、修行のためにアユタヤへと旅立ちます。その航海中、彼の名を一躍有名にした伝説が生まれました。

船が激しい嵐に見舞われ、何日も漂流して飲み水が底をついた時のことです。乗組員たちが喉の渇きで絶望する中、ルアンプー・トゥアットは静かに祈りを捧げ、足を海に浸して円を描きました。すると、驚くべきことに彼が描いた円の中の海水が、喉を潤す「真水」に変わったのです。

この「塩水を真水に変えた(Stepped on Fresh Seawater)」という逸話は、今もタイの人々の心に深く刻まれており、彼が持つ無限の慈悲と神通力の象徴となっています。


国家の救世主

アユタヤの王宮に滞在していた際、彼は知恵によって国家の危機をも救いました。

ある時、隣国セーラーン(現在のスリランカ)の使者が、「黄金の板に刻まれた数千の経典の文字を、7日以内に完璧に並べ替えなければ、アユタヤを属国にする」という無理難題を突きつけてきました。アユタヤ中の高僧が頭を抱える中、ルアンプー・トゥアットはわずか15分ほどで、欠けていた数文字までも指摘し、経典を完璧に完成させたといいます。

この功績により、当時の王から最高の位を与えられましたが、彼は名声を求めることなく、晩年まで人々の苦しみを救うための旅を続けました。


結び:現代に息づく記憶

現在、ワット・フアイモンコンに建つ世界最大級のルアンプー・トゥアット像(高さ約11.5メートル)は、2004年にシリキット王妃の命によって建立されました。

彼がこの世を去ってから約400年が経ちますが、その記憶は薄れるどころか、より鮮やかにタイの人々の生活に息づいています。彼の姿を模した御守り(プラクルアン)は、「持つ者をあらゆる事故や災難から守る」として、タイ国内だけでなく世界中の信徒から大切にされています。

パチュアップキリカンの空の下、巨大な像を見上げるとき。私たちは、厳しい修行と深い慈悲、そして揺るぎない知恵によって一つの国と多くの人々を救い続けた、偉大なる魂の記憶に触れることができるのです。

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