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六本指の仏像

 バンコクの南、バスだと二時間ちょっと。ペブリという町に来た、お菓子の産地として有名らしく、そこらじゅうの店先に甘いものが並んでいる。だが今日の目当てはお菓子ではなく、Wat Yai Suwannaram(ワット・ヤイ・スワンナラーム)と言う古いお寺だ。

Wat Yai Suwannaram

 このお寺は町の中心部から歩いていける距離にある。門を入ると、まず大きなチーク材の建物が目に入る、扉に近づくと太い傷跡がある。深く抉れていて、素人目にも「これは刃物だ」とわかる。案内板によると、昔ビルマ軍が攻め込んで来たときについた刀傷だという。

扉の傷跡

 本当かどうかは怪しいらしいが、そんなことはどうでもいい。三百年前の人々の慌てふためく気配が、なんとなく伝わってくる気がした。 この建物、もともとはアユタヤにあったものをわざわざ船で運んで来た物らしい。
 アユタヤが戦火で滅びるとき、大事なものを積んで逃げてきたのだろう。扉の傷もひょっとしたらそのときのものかもしれない。などと勝手に想像しながら、中に入った。 薄暗い堂内の四方の壁に、古い壁画がびっしりと描かれている。三百年前の絵だという。

びっしりと描かれている壁画

 色は褪せているが、びっしり並んだ神様たちの顔は一体一体ぜんぶ違っていて、眺めているだけで飽きない。 そして仏像の指を数えてみると、たしかに六本ある。造り間違えたのか、それとも何か意味があるのか。近くにいたお坊さんに片言のタイ語で聞いてみたが、何かを言ってくれたものの、半分も聞き取れなかった。ありがたいお話だったのかもしれないし、「酔った職人が作った」だったのかもしれない。

水上書庫

 境内の池に、経典を収める高床の蔵が建っていた。シロアリよけだ、危なっかしい橋で繋がっているように見えるが、建物とは繋がっていない。のんびりした午後の光が水面に揺れて、なかなか悪くない眺めだった。
 何やらタイの音楽が聞こえる、行ってみると、奉納の踊りだろうか、子供達が踊りの練習をしているようだ。

 六本指の謎は解けなかったが、次の目的地へと向かった。

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