資格を取っても孤独な人は、答えより話す場所が必要である
いつもはLINEに届く「レンタルできますか?」という問い合わせから始まるこの珍事だが、今回はSNSがきっかけだった。
無職note研究所というちょっと意味の分からないアカウントで展開しているあれこれから話が始まり、そこで知り合った相手から依頼をされた。依頼というか「一緒に飯に行きませんか」という、単なる誘いである。
待ち合わせの場所はポストで伝えた。
みやけんさんへ@miyaken_tyusho
— 無職note研究所 (@nojob_zz) May 12, 2025
今夜ここにしましょう。https://t.co/IaJtgiMwWl
昨今はどんなサービスや組織においても透明性が重視されているらしい。「個室でいかがわしいことをされた」とか、そういうあらぬ触れ込みが発生すると面倒なので、基本的にレンタル無職は個室には行かずオープンな場所での会合を主としている。
というわけで、包み隠さず会合場所を公開した。
なおおっさん二人の会合なので公開する必要などどこにもなかった。
待ち合わせの時間に遅刻して居酒屋に到着すると、そこには白いパーカーを着た好青年が待っていた。ぼくはSNSの印象と相変わらぬ様子の爽やかな彼とフランクな挨拶を交わし、隣同士でカウンター席に座った。
「どうも無職です」
「本当に来るんですね、すげえ」
事前にお願いしておいた烏龍茶が既にテーブルに置かれていた。
乾杯して、手始めに二人でもやしを食った。
今回はSNSから発展した会合だったので事前に相手の情報がある程度分かっている。いつもは全く何者かわからない相手と初めましてをしているので、こういうパターンはレンタル無職には珍しいケースだった。
「みやけんさん、中小企業診断士なんですよね」
「はい、一応そうです」
「国家資格でしょ、すごい。どういう仕事かよくわかってないけど」
そんな会話をしているうちに、みやけんさんが頼んでいた料理のあれこれが一気に運ばれてきた。ぼくは目の前にやってきた料理を粗雑に口へと運ぶ。ラストオーダー22時の店に21時45分に到着した無職の過失はだいぶ大きい。
「診断士って、助成金の申請とかやってる感じですよね」
「それは社労士の仕事なんですよ」
「じゃあ診断士って何するんですか」
「助成金の存在を教えたりはしますね」
「それだけ?」
「まあ助成金は専門外って感じです。補助金はやれます。業務的には平たくいうとコンサルですよね」
その潔さにちょっと笑ってしまった。
立場、線引き、役割。
こういう肩書きってのは案外狭い。
「どうして中小企業診断士になろうと思ったんですか」
ぼくが興味本位で質問すると、彼はニヤニヤしながらこのnoteを見せてきた。
たまにあるよな、こういうタイトルで勝利が確定している記事。
(「雑記」とか言ってる場合じゃなくてウケる)
不意に流れてくるヒゲ男のPretenderを聴いては「ギミのッ…運命のヒドは…ボグじゃない…!!あ゛ぁ…😭😭」となって急に泣き出したり
この記事は解散してから読んだんだけど、なんか会って感じていた通りのすごく良いやつなんだろうなあと思いました。
ちなみにぼくは女の子相手にマカロニえんぴつの「恋人ごっこ」を歌って「まあ俺ら恋人ごっこだもんね」などと言ってた側の人間です。地獄に堕ちるがいい。
「やば、これ実話ですか?」
「残念ながらマジです」
「コンサルに寝取られてコンサルになってるのめっちゃおもろい」
彼は白い液体を一口飲んで(あれ何飲んでたの?)箸でもやしをいじりながら話し始めた。
「こういうnoteとか自己啓発とか無縁だったんで、自分が国家資格を取るなんて思ってませんでした」
ちなみに中小企業診断士の合格率は4%。
普通自動車免許しか持っていない無職には「わあ、すごいなあ〜」というクソほど解像度の低い感想を抱くことしかできなかった。
「おっさんばっかりですよ、診断士の業界は」
「なんか床屋の匂いしそう」
「若い女性の診断士とかはめちゃくちゃチヤホヤされます」
「おっさん中心の界隈における女性のニーズってどこもそんなもんですよね」
復讐心で勉強を始めて、今ではちゃんと仕事にしている。それは勢いだけでは到底到達できない領域であることは間違いない。すごいことだ。
かつて好きだった女の子にフラれた悔しさでなぜかガリ勉をし、全国統一模試で国語1位を取ってしまった自分の姿が重なった。
話題はだんだん、仕事からSNSの話へ。
「胡散臭い商材って相変わらずたくさんありますよね」
「わかります。”月収100万円!”みたいなやつ、ああいうの本当に無理なんですよね!」
みやけんさんは語気を強めてそう言う。彼のnote記事でそういった話は拝読していたので、ぼくも深く頷いた。お互い稼げる系インフルエンサーに心が擦れてたらしい。
「ああいうのって”それができたら苦労しねえよ”みたいな内容ばっかりじゃないですか」
「本当にそんなんばっかりでした。大体どの記事でも言ってること同じですし」
ぼくたちは虚無を売る情報商材屋に対する文句で大いに盛り上がった。
参考書を買い集めても成績は伸びない。
野球の教則本を読み耽ってもホームランは打てない。
そういう当たり前の話なのに、どうして人は「稼ぐ方法」になるとまともな判断ができなくなるのか。不思議だなあ。
「実はSNSで人と会うの、これが初めてなんですよ」
「え、そうなんですか」
「そうです。SNSやってたらこんな面白いことも起きるんですね」
「今日の予定、奥さんになんて言って出てきたんですか」
「”無職とご飯に行ってくる”って言いました」
「絶対に心配されるやつじゃん」
__先日プロポーズをしたばかりの新婚ホヤホヤの彼が、ある日「無職と飯に行ってくる」とだけ残して家を出て行った。
何らかのミステリーが始まりそうな匂いがする。
みやけんさんは「無職なら変な営業とかもされなさそうだし」みたいなことを言ってた。
なんとなくわかる気もする。
無職という肩書きはある意味で“人を刺さない”。
安心感がある。戦わない前提だから。
他にもくだらない話をたくさんした。
引っ越し初日、土地感なさすぎてジョギングしてたら田んぼに落ちた話とかもしていた。意外とアホなんだなあと思うと好感が持てる。都会だから今夜は田んぼに落ちないだろう、きっと。
それからラーメンを食べた。
無職だと発券機からも舐めた態度を取られることがある。
無職(@nojob_zz )は発券も上手くされないらしい。 pic.twitter.com/Eu0XKGeaTo
— みやけん@中小企業診断士×note (@miyaken_tyusho) May 12, 2025
みやけんさんは新婚ホヤホヤということで、とにかくめでたい時期だ。そのめでたさに乗じて居酒屋もラーメンも奢ってもらった。言ってる意味がよくわからないと思うが、おれにもよくわからない。とにかくご馳走さまでした以外の言葉は必要ない。
彼はロードバイクに跨ると、颯爽と去っていった。
実は家同士が徒歩5分のご近所さんだという奇跡も判明した。こんな偶然、あるんだな。
次は近所で飯でも食いに行きましょう。
無職のレンタル依頼はこちらからどうぞ。
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