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ソニー、売上ほぼ横ばいなのに利益37%増。数字を分解したら見えてきたこと

ソニーのゲーム事業は、売上がほとんど増えていない。

それなのに、営業利益は約37%増えた。

どういうことなのか。

今週の決算を見ていると、似たような「数字だけでは分からないこと」が他にもあった。

リクルート傘下のIndeedでは、米国の求人掲載数が前年同期比で約4%減ったのに、米国HRテクノロジー事業の売上は30%増。

楽天では、モバイル事業が331億円の赤字なのに、グループ全体の営業利益は420億円の黒字だった。

どれも一見すると、少し計算がおかしく見える。

でも数字を一度ばらしてみると、やっていることは意外と単純だった。

掛け算、引き算、足し算である。

リクルート 計算が合った。いや、合って当たり前だった

Indeedでは、米国の求人掲載数が約4%減った一方、「US ARPJ」という指標が35%増えていた。

その結果、米国売上は30%増え、16.4億ドルと四半期最高になった。

前年の求人掲載数を100とすると、4%減って96。そこに35%増を掛けると、

96 × 1.35 = 129.6

ほぼ30%増になる。

最初は「なるほど、ちゃんと計算が合う」と思った。

でも資料をもう少し読むと、そもそも合って当たり前だと気づいた。

US ARPJは、米国HRテクノロジー事業の売上をIndeed上の米国求人掲載数で割った数字だからだ。

つまり、

求人掲載数 × ARPJ = 売上

になるのは偶然ではない。

そういう式でできている。

ここで見るべきだったのは、「ARPJが35%増えた」という結果より、その35%が何でできているのかだった。

しかもARPJは、求人広告を1件出す値段そのものではない。分母には有料求人だけではなく、Indeed上に掲載されている無料求人なども含まれる。

リクルートは米国売上の伸びについて、Premium Sponsored Jobsを中心に収益化が進んだことが大きいと説明している。

さらに中小企業については、ARPJ上昇の背景として、

  • お金を払う企業が増えた

  • 有料で出すSponsored Jobsの数が増えた

  • 1件あたりの単価が上がった

この3つが、現状ではおおむね3分の1ずつ効いているという。

「求人が減ったのに売上30%増」という数字だけを見ると不思議だったが、分解すると話は変わる。

求人の数だけでなく、誰がお金を払い、何件にお金を払い、いくら払うようになったのか。それが動けば、求人掲載数そのものが減っていても売上は伸びる。

ARPJという言葉を覚えるより、何を何で割った数字なのかを見る方が早かった。

では、売上がほとんど増えていなければ、利益も増えないのか。

ソニーを見ると、今度は実際に数字を引いてみたくなる。

ソニー 「売上ほぼ横ばい」から817億円を引いてみる

ソニーのゲーム&ネットワークサービス事業の4〜6月期売上は、

9,365億円 → 9,371億円。

増えたのは6億円。ほぼ横ばいである。

ところが営業利益は、

1,480億円 → 2,020億円。

会社開示では541億円、約37%増えた。

売上はほとんど変わらないのに、利益は大きく増えている。

そこで売上の中身を見る。

ソニーが開示している為替のプラス影響は817億円だった。

現在の売上9,371億円から、この817億円を単純に差し引くと、

9,371 − 817 = 8,554億円

になる。

前年の9,365億円と比べれば、約811億円、8.7%低い水準だ。

もちろん、これはソニーが正式に開示している「為替一定ベース売上」を作っているわけではない。開示された為替影響を単純に外して、数字の構造を見るための計算である。

ただ、「売上ほぼ横ばい」という一言だけとは、かなり違う景色になる。

実際、ソニー自身も減収要因として、他社製ゲームソフトの売上減少や、販売台数減少によるハード売上の減少を挙げている。

では、利益はなぜ約37%も増えたのか。

営業利益の増加額541億円のうち、為替のプラス影響は191億円だった。

さらにソニー自身が増益の主因として挙げているのが、米国関税の還付である。第1四半期に計上した関税還付の大半は、ゲーム事業に反映されたと会社は説明している。

一方で、次世代プラットフォームへの投資や構造改革費用は利益を押し下げている。

こうして分けてみると、

「ゲーム事業の利益が約37%増えた」=「ゲームが約37%好調になった」

ではないことが分かる。

売上や利益の数字は正しくても、その理由までは「37%増」の一言では分からない。

何を足して、何を引いた結果なのか。

そこまで見て、ようやく数字の意味が見えてくる。

そして一つの事業ではなく、会社全体になると、また違う算数が出てくる。

楽天は足し算だった。

楽天 モバイル331億円赤字。それでも全体では420億円黒字

楽天の4〜6月期、モバイルセグメントのNon-GAAP営業損益は331億円の赤字だった。

前年より41億円改善しているものの、まだ大きい。

ここだけ見れば「やっぱり楽天はモバイルが重い」と感じる。

ところが楽天グループ全体のNon-GAAP営業利益は420億円の黒字。前年同期比109.6%増で、MNOサービス開始後の過去最高となった。

各事業を見ると、

インターネットサービス +231億円

フィンテック +692億円

モバイル −331億円

連結調整 −171億円

となっている。

表示された数字だけで計算すると、

231 + 692 − 331 − 171 = 421億円。

会社開示は420億円なので1億円ずれる。

これは各セグメントの数字が表示単位で丸められているためである。

中身を見ると、インターネットサービスの利益は前年同期比68.6%増、フィンテックは60.1%増。一方、モバイルの赤字も41億円縮小した。

つまり、

儲かっている事業がさらに稼ぎ、赤字事業の穴も少し小さくなった。

その結果として、グループ全体では420億円の黒字になった。

「楽天モバイルが赤字」と「楽天グループが赤字」は同じ話ではない。

そして楽天には、もう一つ面白い数字があった。

272億円の利益。そのうち77億円は何の数字なのか

楽天の税引後の四半期利益は272億円だった。

ここだけなら「楽天、272億円の最終黒字」と読める。

ところが、その内訳を見ると、

非支配持分に帰属する利益 195億円

親会社の所有者に帰属する利益 77億円

となっている。

計算すれば、

272 − 195 = 77億円。

楽天銀行など、楽天グループが100%保有していない会社には、楽天以外の株主もいる。そのためグループ全体で生まれた利益のすべてが、楽天グループの親会社株主に帰属するわけではない。

親会社の所有者に帰属する四半期利益は77億円で、2020年第2四半期以来、6年ぶりの黒字となった。

272億円だけ見ていたら、ここを見落とすところだった。

利益が出たかどうかだけではなく、その利益が誰に帰属するのかまで見ると、同じ決算でも数字の意味が変わってくる。

難しい言葉の前に、いったん式に戻してみる

リクルート、ソニー、楽天。

まったく違う3社だが、今回やったこと自体は難しくなかった。

リクルートでは、

売上 ÷ 求人掲載数 = ARPJ

という式に戻して、分子と分母の中身を見た。

ソニーでは、

9,371億円 − 為替影響817億円

と実際に引いてみた。

楽天では事業ごとの利益を足し合わせ、さらに、

272億円 − 非支配持分195億円 = 親会社帰属77億円

まで見た。

決算資料にはARPJ、Non-GAAP、EBITDAなど、慣れない言葉が普通に出てくる。

全部覚えてから読もうとすると大変だ。

それより最初に、

「この数字、どうやってできた?」

と考えてみる。

売上30%増なら、何が動いて30%になったのか。

利益37%増なら、何を足して、何を引いたのか。

利益272億円なら、そのうち親会社の株主に帰属するのはいくらなのか。

数字を一度ばらしてみると、会社が何で稼ぎ、何に苦しんでいるのかが少しずつ見えてくる。

最近は増収率や増益率を見たあと、数量や単価、コスト、為替、一時要因などに一度分けて考えるようになった。楽天のような会社なら、事業ごとの利益や、その利益が誰に帰属するのかも見る。

「30%増」という数字だけでは、会社の話はまだ分からない。

その30%がどうやってできたのかを、一度ばらしてみる。

数字は結果。式には、その会社の仕組みが出る。

そう考えると、決算書は前より少し読みやすくなった。


主な確認資料

リクルートホールディングス

  • FY2026 Q1 Earnings Call transcript

ソニーグループ

  • 2026年度 第1四半期 連結業績概要

  • 2026年度 第1四半期 業績説明会 Q&A(要旨)

楽天グループ

  • 2026年度 第2四半期 決算ハイライト

  • 2026年度 第2四半期 決算説明会 プレゼンテーション資料

※本記事は各社の公開資料をもとにした個人的な分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。

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