冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第六話 #DDDVM
「冒険者ギルド、実は初めて行くんです」
「む?そう言えばゴルオーンの時も君は一人だったね。冒険者に依頼をしようとは思わなかったのかい?」
「ええと……ゴルオーンさんの名前を出しただけで梨のつぶてになるかと思っちゃいまして」
「おそらく、その推測は正しいだろうね。しかしなんというか……ワトリア君はもう少し臆病になっても良いのではないだろうか」
「てへへ」
謁見の後、私達はその足で王都にある冒険者ギルドへと向かっていた。理由はもちろん、本件の調査隊として参加するメンバーに合流するためである。
陛下推薦の人物はすでに先方へと合流指示が出されており、ギルド施設にて合流する手はずとなっている。
王都特有の赤レンガの建築物が立ち並ぶ街路を一人歩きながらその場にはいない私と会話するワトリア君に、度々奇異の視線が向けられるのが少々申し訳なくも有り。さらに、彼女の胸元には似つかわしくない豪奢な勲章まで貼付されている。これはワトリア君がアルトワイス王家からの王命代行者であることを示す証だ。その事実がますます彼女の存在が与える印象を奇妙に落とし込んでいた。
「でもこれ、こんな目立つ付け方しても良いんでしょうか……」
「王命代行者の職務は公務として扱われ、それを妨害した場合は厳罰がくだされたはずだよ。だから目端の利くスリなら返って避けると考えられる。もっとも、高価そうというだけで眼をつけてくる輩もいるだろうから一長一短だね」
「うう……気をつけます」
ここまで会話した頃合いで、煉瓦街に溶け込む一つの建物の前に私達は到着した。ワトリア君の背丈を大きく超える門の上には、剣と斧が交差した紋章が刻まれている。元は傭兵ギルドから移行した冒険者ギルドが持つ、戦いと開拓を示す紋だ。
「緊張します」
「国家からの認定を受けた公的機関だから、そこまで怖いことはないはずだ。落ち着いていこう」
「はい!」
ワトリア君が如何にも重苦しい造りの木製の扉を開けようとした時、不意に内側から扉が開いた。
中から姿をあらわしたのは、陽の光を受けてみどりがかった翠金の髪を一束まとめて左側に流し、アルヴァ族特有の木々の樹皮を加工した衣服をまとい、その背に可憐な姿に不釣り合いな黒橙の滑車つき剛弓を背負った人物であった。
「ごめんなさいね」
ワトリア君とニアミスしたその女性は、涼やかな声色で行く手を塞いでしまったことを詫びると、自ら脇にどいて街に出ようと歩み出たのだが、私は迷わずそんな彼女を呼び止める。
「シャンティカ君!」
「ん?」
ワトリア君とは面識がない彼女、アルヴァ族の冒険者シャンティカ嬢は、不意に自分の名前が呼ばれた事に怪訝な顔を見せつつ振り向く。
「今、私の名前を呼んだのは、あなた?どう聞いてもあなたの声色じゃなかったけど……」
「それはその、私じゃなくて先生が……」
「先生?ああ、なるほど。道理でどこかで聞いた声だと思った」
「察しが早くて助かるよ。予定が空いているなら君に仕事を依頼したい、いかがかな?」
私の打診に、シャンティカ嬢は爽やかに笑った。
「ええ、何か急ぎの依頼があるわけでもないし、まずはあなたの話を聞きましょうか」
【冥竜探偵かく語りき~生体迷宮停滞事件~ 第六話:終わり|第七話へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
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