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研究職こそJTBD(ジョブ理論)を学べ。さもなくば「誰にも使われない最高品質のゴミ」が完成する

「何ヶ月もかけて最新のシミュレーションツールを導入したのに、現場は結局『手動の実験データがないと信用できない』と言って使ってくれない」
「妥協なく最高品質の製品を開発したのに、いざ売り出したら従来の『そこそこの品質』の旧製品と売上が変わらず、ROI(投資対効果)が壊滅した」

製造業やR&Dの現場で、一度は目にしたことがある光景ではないでしょうか。

どれだけ高い技術力を注ぎ込んでも、どれだけ計算精度を高めても、「誰にも使われず、1円も生まない最高品質のゴミ」が作られてしまう。

この悲劇の原因は、研究者やエンジニアのスキル不足ではありません。「JTBD(Jobs To Be Done:ジョブ理論)」という視点が抜け落ちたまま、技術の自己満足(オーバースペック)に走ってしまうことにあります。

今回は、現役の理系研究員である私が、技術のドブ捨てを防ぎ、AIを使って「本当に売れる・使われるプロダクト」を作るためのJTBD思考法を解説します。

1. 顧客は「技術」を買っているのではない

マーケティングの世界には、有名な言葉があります。
顧客が欲しいのは『3/8インチのドリル』ではない。『3/8インチの穴』だ

しかし、技術開発に熱中する研究職やエンジニアは、無意識にこう考えてしまいます。
「もっと回転数が高くて、ブレない超高性能ドリルを作ろう」
「最新のAIを搭載したスマートドリルを開発しよう」

ここに致命的なズレがあります。顧客の「片付けたい用事(Job)」は、穴を開けることすらなく「壁に絵を飾りたい」だけかもしれません。もしそうなら、粘着フックを渡された方が顧客にとっては正解なのです。

JTBD(ジョブ理論)とは、顧客の属性やスペックではなく、「顧客がどんな状況で、どんな用事(Job)を片付けたくてそのプロダクトを『雇う(Hire)』のか」に着目するフレームワークです。

2. 現場で起きた2つの「過剰品質の悲劇」

JTBDの視点を欠いた技術開発がどのような結末を迎えるか、2つの具体例を挙げます。

事例①:放置された最高峰の「シミュレーションツール」

  • 提供した技術: 物理現象を極限まで精度高く計算できる高度なシミュレーションシステム。

  • 開発側の思い: 「これで実験回数を減らせて、開発スピードが劇的に上がるはずだ!」

  • 現実の結末: 習熟コストが高すぎること、そして何より「意思決定者(上層部)が『シミュレーション結果だけでは不安だから実測データを提出しろ』と求めたこと」により、誰も使わなくなりました。

開発側が提供したのは「高度な計算力」でしたが、現場と上層部が本当に欲しかったJobは「リスクなく安心して意思決定できる証拠」でした。ツールの導入によってかえって「シミュレーション+実測」の二重手間が発生し、現場の課題を悪化させたのです。

事例②:ROIが崩壊した「最高品質製品」

  • 提供した技術: 妥協なく品質・物性を追い求め、業界最高水準を達成した新製品。

  • 現実の結末: 市場に出すと、既存の「そこそこの品質」の製品と売上がほぼ変わらず、開発コストを回収できずROIが惨敗。

顧客が求める Job は「業務トラブルが起きない最低限の品質を、安く安定して手に入れること」でした。顧客にとって過剰な品質向上は「無価値」であり、高価格や開発遅延というデメリットでしかなかったのです。

3. 生成AIを使って「顧客のJTBD」を爆速で抽出するプロンプト術

「技術者の自己満足」を防ぐためには、要件定義や企画の段階で、顧客の本当のJTBD(片付けるべき用事)を炙り出す必要があります。

ここで強力な相棒になるのが生成AI(ChatGPT / Gemini / Claude)です。

顧客の声、アンケートの自由記述、あるいは「現場からの要望メモ」をAIに読み込ませ、以下のプロンプトを実行します。

【目的】
提供されたテキストから、顧客が表面上で求めている「要望(Task)」と、その背後にある「真の課題(JTBD: Jobs to be Done)」を分離・抽出してください。

【入力データ】
[ここに顧客の要望文や業務課題のメモを貼り付け]

【出力フォーマット】
1. 表面的な要望(何を作ってほしいと言っているか):
2. 状況(どのような場面で困っているか):
3. 片付けたい真の用事(JTBD):
  - 機能的ジョブ(実務で解決したいこと):
  - 感情的ジョブ(不安の解消、精神的ストレスの軽減など):
4. 技術提案の注意点(やってはいけない過剰スペック):

このプロンプトがもたらす効果
「Excelの自動化ツールを作ってほしい」という要望を入力した場合、AIは単にツールを作る提案ではなく、以下のようなJTBDを導き出します。

  • 表面的な要望: Excelの自動化ツール作成

  • 機能的ジョブ: 毎月の集計作業時間を2時間から10分に減らしたい

  • 感情的ジョブ: 「ミスをして上司に怒られる恐怖」を無くしたい

  • やってはいけない過剰スペック: 複雑なコードを書いて社内でブラックボックス化させること

顧客の感情的ジョブ(安心したい、怒られたくない)が見えれば、「複雑な自動化ツールを作る」のではなく、「単純なフォーマットの共通化とチェックシートの作成」で十分解決できることが分かります。
注:AIが出力したJTBDは、あくまで「有力な第一仮説」に過ぎません。前回の記事で解説した「実験思考」と同様、この仮説をベースに実際の現場観察やヒアリングを行い、真のJTBD(検証結果)へと磨き上げていく姿勢が不可欠です。


4. おわりに:技術は「ジョブ」を解決するための手段に過ぎない

理系研究者やエンジニアにとって、技術を磨くこと、高いスペックを追い求めることは非常に楽しい作業です。

しかし、どれほど優れた技術も、顧客の「片付けるべき用事(Job)」に合致していなければ価値はゼロです。

  • プロダクトを作る前に「どんなJobを解決するのか」を定義する

  • AIを活用して、顧客の表面的な要望から「真のJob」を抽出する

  • 過剰スペックを捨て、最小の労力でJobを解決する

このJTBD思考を身につけるだけで、あなたの技術やノウハウは「誰にも使われない自己満足」から「世界で正当に評価される価値」へと変わります。

💡 この思考法を応用して外貨獲得・業務自動化を達成したロードマップ

私がこのJTBD思考を武器に、海外クライアントの真の課題を解決してUpwork初月で時給$50を獲得した全記録や、M365×AIで本業の業務時間を80%削減した具体的手順は、以下の固定記事にまとめています。

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