不動産業界の流行り言葉⭐︎源泉営業を「カッコいい」と言う不動産業者は消費者目線ではないから要注意
不動産業界でよく聞く言葉に「源泉営業」がある。
「自分で源泉を掘り起こす」「ゼロから1を生み出す」「攻めの営業」「物件を売るより源泉を抑える方が強い」——。
業界内ではこうした言葉が飛び交い、まるで先進的で戦略的な営業手法のように語られる。
大手から中小、果ては個人事業主まで「うちは源泉営業が強いんです」と胸を張る人が少なくない。
しかし、私ははっきり言いたい。
**源泉営業を美化し、ありがたがる不動産業者(大手でも中小でも)には、一定の警戒が必要だ。**
その感性は、極めて業界内向きで、社会的感性に欠けている可能性が高い。
### 源泉営業とは何か、具体的に
源泉営業とは、顧客からの問い合わせ(反響)を待つのではなく、営業側から積極的に見込み客を「掘り起こす」スタイルだ。主な具体例は以下の通り。
- **街頭キャッチ**:駅前、ショッピングモール、物件前の道路などで通行人に声をかける。「新築マンションいかがですか?」「近くで物件出ますよ」と呼び止める。オープンハウスグループが特に有名で、全契約の3〜5割を占めることもある手法。
- **飛び込み訪問**:個人宅や企業にアポなしで訪問。「家を売りませんか?」「相続の相談に乗りますよ」と直接声をかける。
- **テレアポ(電話営業)**:リストをもとに大量に電話。「投資用マンションで節税になりませんか?」「今、キャンセルが出たんですけど…」と営業。
- **投資用・ワンルームマンションの訪問・セミナー営業**:サラリーマン層を狙い、「資産形成」「相続対策」「減価償却で節税」と煽って購入を促す。
- **売却見込み客へのアプローチ**:戸建てやマンション所有者にDM・電話・訪問で「高く売れますよ」「今が売り時です」と媒介契約を取る。
これらを総称して「源泉営業」と呼ぶ。
一見すると「行動力がある」「開拓者精神」と聞こえるが、本質は**「まだ不動産に興味がない人、ニーズが顕在化していない人を自分から捕まえて案件化する」**ことにある。
### なぜこれを「カッコいい」と言うのか
業界内では以下のように美化される。
- 「反響待ちの受け身営業より、源泉できる方が一流」
- 「ゼロから売上を作れる男は凄い」
- 「源泉を抑えた者がイニシアチブを握る」
確かに、営業成績を上げ、高収入を得るためには有効な手法だ。歩合制が主流の不動産業界では、成果を出せば「稼げる男」として尊敬される文化がある。
しかし、ここに大きな問題がある。
### 消費者目線で見ると、まったく違う景色になる
一般の消費者(特に不動産取引に詳しくない人)から見れば、源泉営業の多くはこう映る。
- 突然道端で捕まる
- 興味もないのに電話が何度もかかってくる
- 知識格差を利用した畳みかけ
- 「今決めないともったいない」「この物件はすぐなくなりますよ」といった心理的プレッシャー
特に問題になりやすいのが、**投資用物件やリノベーション物件の販売**だ。
「サラリーマンでも大家になれる」「利回り○%」「節税効果抜群」と煽り、**本当の購入ニーズがない層**を案件化する。結果、空室や赤字運営で後悔する人が後を絶たない。
売主側でも同様だ。
「高く売れます」と言いながら媒介を取り、後で値下げを迫る、または三為契約などで中抜きするケースも少なくない。「源泉を抑える」というのは、時に弱みのある売主を狙った「安く叩くための情報収集」にもなる。
要するに、**「すれてない人(不動産に詳しくない人)ほどコントロールしやすく、都合よく転がしやすい」**という計算が背景にある手法なのだ。
### 士業を目指す資格との決定的な矛盾
宅建士は国家資格を持ち、「士業」の一角を担いたいと考える人が多い。
しかし、士業に求められるのは**「専門知識で顧客の利益を守る」「求められて提供する」**という品位と信頼だ。
道端でキャッチしたり、興味のない人に押し売りしたり、未顕在化ニーズを無理やり掘り起こして自分の成績にするスタイルは、**士業の理想像と真逆**である。
弁護士が街頭で「裁判になりませんか?」と声をかける姿を想像できるだろうか?
税理士が「まだ申告してないでしょ?」と飛び込み営業をするだろうか?
源泉営業を「うちの強み」「営業の原点」と美化する時点で、**その人の価値観は業界内の成功基準に強く染まっている**と言わざるを得ない。
### 大手だろうが中小だろうが関係ない
この問題は企業規模に関係ない。
大手は組織として源泉営業を推奨し、企業文化にしている場合がある。一方、中小や個人事業主は「生き残るために源泉をやらざるを得ない」と正当化する。
どちらも「源泉営業=正義・カッコいい」という感性を持っている点では同じだ。
そしてその感性は、社会全体から見ると**極めて内向きで、消費者軽視**に映りやすい。
### 本当に信頼できる不動産屋の条件
私は不動産取引を「押し売りするもの」ではなく、**「求められて提供する専門サービス」**であるべきだと考える。
- 顧客から「この人に相談したい」と思われる存在
- 知識と倫理観で選ばれる存在
- 強引さではなく、信頼で成約を取れる存在
源泉営業を過度に美化する業者に出会ったら、少し距離を置いて観察してほしい。
「この人は自分の成績のために私を案件化しようとしているのではないか?」という目を、持った方がいい。
不動産は人生で最も高額な取引の一つだ。
営業マンの稼ぎや行動量ではなく、**その人の人間性と職業倫理**で判断しよう。
業界人の皆さんへ。
源泉営業で成果を上げていることは否定しない。
しかし、それを「カッコいい」「一流の証」と胸を張る前に、一度、消費者目線で自分のやっていることを俯瞰してみてほしい。
そこに社会的感性があるかどうか。
