なぜあなたの会社のSNSは三か月で止まるのか
知られていないのは、存在しないのと同じ。
だから「伝える」を学ぼう。
日本中の中小企業のSNSアカウントには、共通の墓標が立っている。
「新年度もよろしくお願いします!」という威勢のいい投稿を最後に、更新が止まったまま数年が経過しているのだ。
心当たりのある読者も多いだろう。
なぜ、こうなるのか。
担当者が怠け者だからではない。
最初に立てた目標が間違っていたからである。
その間違った目標とは「バズらせる」「フォロワーを増やす」だ。
まず、身も蓋もない現実から確認しておこう。
企業アカウントの投稿がフォロワーに届く割合は、多くのSNSでほんの数%にすぎない。しかもフォロワー数と売上のあいだに、はっきりした相関はない。数十万フォロワーを抱えて商品がまるで売れないアカウントなど、いくらでもある。
そしてバズは、構造的に宝くじである。
何が拡散するかはプラットフォームのアルゴリズムと偶然が決めるのであって、努力の量ではない。
宝くじを目標に据えた組織がどうなるかは自明だろう。
当たらない日々が続き、成果が見えず、三か月で心が折れる。
冒頭の墓標は、怠慢の証ではなく、間違った目標に真面目に取り組んだ痕跡なのだ。
では、中小企業にとってSNSの正しい目的とは何か。
拍子抜けするかもしれないが、一言で言うとこうだ。
「実在の証明」である。
考えてみてほしい。
前回学んだプレスリリースが実を結び、あなたの会社が新聞に載ったとしよう。読者が次に取る行動は決まっている。
社名で検索するのだ。
そのとき、最終更新が三年前のアカウントが出てきたらどうなるか。
「この会社、まだやっているのか?」――せっかく生まれた興味は、灯りの消えた店の前で立ち尽くし、そのまま帰ってしまう。
つまりSNSとは、知らない人に見つけてもらう拡声器ではなく、一度あなたを知った人が確かめに来る「受け皿」なのである。
灯りのついた店であること。それだけで役割の大半は果たされている。
バズが打ち上げ花火なら、中小企業に必要なのは常夜灯だ。
派手さはないが、消えないことに意味がある。
目的をこう定め直すと、運用の悩みは面白いように消えていく。
まず、頻度。
常夜灯に瞬発力は要らないから、週に一度で十分だ。
無理のない頻度こそが、前シリーズで学んだ単純接触効果を複利で効かせる唯一の道である。
次に、ネタ。
「投稿することがない」という悩みは、完成品を見せようとするから生じる。
人間には奇妙な性質があって、完成したものより作りかけのもの、舞台裏に強く惹きつけられる。テレビのメイキング映像や料理番組の厨房が人気なのはこのためだ。
あなたにとって退屈な日常業務――朝の仕込み、機械の手入れ、検品の様子――は、外の人間にとっては覗き見したい舞台裏である。ネタは探すものではなく、毎日足元に転がっている。
最後に、声。
「中の人」は会社の公式見解を読み上げる広報官ではなく、働くひとりの人間でいい。
前シリーズを思い出してほしい。ヒトは統計より、顔の見えるひとりの物語に心を動かす生き物だった。
「本日の豆腐、うまく固まりました」という一文には、どんな企業理念より雄弁な実在感がある。
つまりだ。SNSで挫折する会社は、宝くじ売り場に通っている。
続く会社は、毎晩灯りをつけている。
目標を「当てる」から「消さない」に変えること――実践編の二回目にして、これが最も費用対効果の高い方針転換かもしれない。
さて、受け皿が整ったところで、次回はいよいよ本丸だ。取材の電話が鳴ったとき、どう振る舞うか。
世の中には「テレビに出たのに売上が変わらなかった会社」が山ほどある。その分かれ目は、放送の前にすでに決まっているという話をしよう。
(加々本裕樹)
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