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【第2話】頭が真っ白になった初登校の日、それでも言えた"My name is ○○."

「いよいよ、この日が来た。」

台湾の公立小学校(現地校)への初登校の日。

緊張しているのは子どもだと思っていました。でも、振り返ってみると、一番緊張していたのは私だったかもしれません。

前の日まで、「行きたくない」と言い出すことも覚悟していました。でも、朝になって子どもは何も言いませんでした。いつもより少し口数は少ないものの、制服に着替え、リュックを背負い、静かに家を出ました。

その表情からは緊張が伝わってきます。それでも、「嫌だ」とは一度も言いませんでした。親として、その姿だけで胸がいっぱいになりました。


まさかの、親も教室へ

登校前、事務の先生から連絡がありました。担任の先生が、初日は保護者も教室で一緒に過ごしてほしいと言っている、とのことでした。

先生がどんな意図でそう言ったのか、本当のところは分かりません。ただ、日本の感覚では、親が教室に入って一緒に過ごすというのは、あまり一般的ではないと思います。台湾は日本よりも、子どもを大事に、心配深く見守る文化なのかもしれません。

当日、学校に着くと、まず職員室へ案内されました。事務の先生が笑顔で迎えてくださり、「こちらへどうぞ」と教室まで案内してくださいました。

子どもだけでなく、親にとっても初めての学校。親子ともに緊張しながら教室に向かいます。

子どもたちは一斉にこちらを見ています。

「日本から来た子だ。」

そんな視線を感じながら教室に入りました。

言葉は通じなくても、伝わる優しさ

担任の先生は笑顔で迎えてくださいました。ただ、英語はほとんど話せません。私も中国語は話せません。

席へ案内されると、すぐに先生の心遣いに気づきました。机の上に、きれいにラミネートされた一枚のプリントが用意されていたのです。

そこには、

  • 座る

  • 立つ

  • トイレ

  • 疲れました

  • 分かりません

など、学校生活で必要になる言葉が、日本語・英語・中国語の3か国語で書かれ、かわいいイラストまで添えられていました。

「準備してくださっていたんだ。」

そして、我が子の席の周りには、英語が得意なクラスメートを集めてくれたと、先生から説明を受けました。もちろん、わが子は英語が得意というわけではありません。それでも、中国語だけよりは安心できます。

「この子たちが助けてくれるんだ。」

先生の気持ちが本当にうれしく、胸が熱くなりました。

大きな声で言えた、それだけで十分

しばらくすると、先生が子どもに声をかけました。どうやら自己紹介の時間です。

教室の前へ立つわが子。

家では、中国語で自己紹介ができるように何度も練習してきました。独学の片言の中国語ですが、名前、日本から来たこと、趣味が言えるように、短い文章を一生懸命覚えました。

でも、何十人ものクラスメートを前にすると、頭が真っ白になってしまったのでしょう。練習してきた中国語は出てきませんでした。

その代わり、

"My name is ○○."

そう、大きな声で言いました。

その瞬間、私は思いました。

「それで十分。」

中国語で話せなかったことなんて、どうでもいい。たくさんの知らない友達の前に立って、大きな声で自分の名前を伝えられた。それだけで100点満点でした。

「もう、お母さんは帰っていいですよ」

事前に言われていた通り、私は教室に付き添うつもりでいました。

ところが、しばらく様子を見ていた担任の先生が、笑顔でひとこと。

「お母さん、もう大丈夫ですよ。」

その一言で、私はすぐに教室を出ることにしました。

実は、保育園に入園したばかりの頃、親子で離れるのが本当に苦手だった時期があります。子どもが泣き、私も後ろ髪を引かれる思いで園を出る。そんな朝を何度も繰り返してきました。

だからこそ、分かるのです。親が長くそばにいるほど、子どもの気持ちはかえって揺れてしまう。

本当は、もう少し見ていたい。大丈夫かな、と気になって仕方ない。

それでも、その気持ちをぐっと飲み込んで、私は教室を後にしました。笑顔で手を振って、あとは振り返らずに。

たった4時間が、こんなに長いなんて

その日の下校は、お昼12時。たった4時間。でも、私にはとても長く感じました。

「困っていないかな。」 「誰かと話せただろうか。」

そんなことばかり考えながら、迎えの時間を待っていました。

そして、校門から子どもが出てきました。私を見つけると、少し照れくさそうに笑いました。

泣いていませんでした。

その笑顔を見た瞬間、肩の力が一気に抜けました。

「よかった。」

その一言しか出てきませんでした。

初日を笑顔で終えられた。私たち親子にとって、それは何より大きな一歩でした。

次回は、「何を言っているのか、一つも分からない。」そんな状態で過ごした最初の1週間についてお話しします。

台湾の公立小学校(現地校)への入学手続きについては別の記事で詳しくまとめています。これから入学を検討されている方は、ぜひ合わせて読んでみてください。参考になれば嬉しいです。

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