Photo by
mitsukisora
季節外れの桜
その人は古く、病気になってしまった
街路樹を抱きしめて泣いた。
病気だから、って切らなくても
いいじゃない。。と
「撤去予定」の紙を剥がし
テープを乗り越え、
その木を優しく抱きしめた。
それは大きな桜の木だった。
僅かな土に滴り落ちる涙
それを受けてまた
抱きしめたあなたを
抱きしめるかのような
桜の木を
私は忘れない。
──これは私の古い友人のお話です。
彼はその桜の木を抱きしめながら、
「ごめんね」、「ごめんね。」と
何度も謝って泣きました。
私は未だかつてあんなに
綺麗な涙を見た事がなく、
そして
人間の罪を全て引き受けて
涙を流すような姿には
声を掛けるすべもなく
ただ黙って見ているしか出来ませんでした。
