【ショートストーリー絵本】ぬいぐるみのウサギと野生のリス
ある日のお昼過ぎのことです。
魔女に命を吹き込まれたぬいぐるみのウサギは木の実をせっせと集めていました。
仲良しの野生のリスにあげるためです。
あとをちょこちょことついてくるリスは本当にかわいくて、お話が出来たら楽しいだろうなと思うのですが、ぬいぐるみのウサギには人間の言葉しか理解できないのでした。
「チュ、チュ」
リスが鳴き声を上げながらしきりと上を見上げています。
その視線の先には大きくて美味しそうな赤い果物がなっていました。

ウサギは身振り手振りで、
「待ってて。取ってくるから」
と伝えると、ひょひょいと木を登っていきました。
その美味しそうな赤い果物は枝の先に実っていました。
ウサギはゆっくりと慎重に綱渡りでもするように進みます。
「もうちょっと」
ウサギの手が果物にふれようとしたとき、枝が折れてウサギはそのまま木から落ちてしまいました。
しかも、運の悪いことに落ちた地面は急斜面で、ウサギはゴロゴロと転がって落ちていきました。

「イタタタ」
ウサギの右ひざのあたりから綿が飛び出してしまいました。
ウサギは落ちてきた斜面を見上げます。
どうもこの足では登れそうにありません。
ウサギは仕方なく回り道をして魔女の家を目指すことにしました。
新しい綿を魔女に詰めてもらうためです。
「よいしょ、よいしょ」
足を引きずりながらなんとか進みますが、道もよくわからず、どちらに行けばいいのか迷ってしまいました。
とうとうウサギは疲れ果てて座り込んでしまいました。
日が暮れて、あたりはだんだんと暗くなっていきます。

「一人ぼっちになっちゃった。リスさん、どうしたのかな……」
「チュ、チュ」 突然、草むらから聞き馴染みのある声がしました。
見ると仲良しのリスが木の実を差し出すような仕草をしています。
ウサギはお礼を言って木の実を受け取りますが、ぬいぐるみのウサギには固くて食べられそうにありませんでした。
「お腹すいたなぁ」
あたりはすっかり真っ暗です。
今日はここで眠るしかありません。
「チュ、チュ」
リスが今度は、あの大きくて美味しそうな赤い果物を小さな体で一生懸命に引きずって持ってきました。
ウサギはそっと手を伸ばし、リスと果物を自分のお腹の上に抱き寄せました。
じわりと涙がこぼれました。
うれしくて、ちょっぴり寂しくて。

果物をリスと半分こして食べるとウサギは安心したのか、すーすーと寝息を立て始めました。
リスもウサギの腕の中で丸くなって一緒に眠ります。
しばらくして、ウサギは鼻をピクピクさせながら目を覚ましました。
とても懐かしくて温かい匂いがするのです。
「……魔女のスープだ!」
ウサギが跳ね起き、ちょこっと首を伸ばしてあたりを見回すとなんとすぐ目の前に見慣れた魔女の家がありました。

うれしさと安心感で胸がいっぱいになったウサギは、ギュッとリスを抱きしめました。

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