レモンは最後に|片思い文芸部
ナルさんの下記記事に参加させていただきました。よろしくお願いします。
小説(のようなもの)に初挑戦です。
温かい目でお願いします、笑。
「サクレ、好きなんだ?」
そう言った彼の声は、少しだけ笑っていた。
コンビニで何も買わずに出てきた彼と、公園のベンチに並んで座って、わたしは1人でサクレを食べていた。
「うん、好き。レモンは最後に食べる派。」
わたしはふたを外して、シャリシャリと音を立てながら、いつも通り氷の部分から崩していく。
その夜、あくびをしたのは彼のほうだった。

その日は珍しく、2人きりで飲みに行く流れになった。うれしさをごまかすように、心の中で小さくガッツポーズをした。
彼は2つ年下で、やわらかい髪にゆるいパーマ、メガネ越しの瞳が知的で、笑うと少しあどけない。
惹かれるのに、時間はかからなかった。
でも、素敵な人には素敵な人がいる。
世の中ってだいたいそうなっている。
わたしはその現実を、なるべく早く飲み込むタイプだ。そうすることで自分を守ってきた。
思いは、一瞬で心の奥にしまいこんだ。
——そのつもりだった。
でも、飲み終わって、帰ろうとしたとき。
「良かったら、もう少し歩かない?」
自分でも驚くほど自然に、わたしはそう言っていた。
帰りたくない。まだ、いっしょにいたかった。
しまいこんだ思いが顔を出した。
「いいよ。」
彼は、そう答えてくれた。嬉しい。
ドキドキして、顔がほてる。
わたしはコンビニでサクレを買った。
彼は何も買わずに、わたしの横を歩いていた。
公園のベンチに腰を下ろして、シャリシャリとサクレを食べた。冷たい。
「レモンは最後にって決めてる」
なんて、わたしは言った。
食べ終わるのを見計らったように、彼がふと近づいてきて、そのままわたしにキスをした。
少し笑って、「レモンの味」と言った。
無邪気な彼になんで?とは聞けなかった。
何事もなかったように立ち上がって、
「行こっか」と彼が言った。
どちらからともなく、手をつないだ。
時々彼は小さくあくびをして、それがわたしにうつった。こういうつながってる感じが嬉しかった。
そのときふと、
“ファーストキスの味はレモンの味”って言うよな、と思った。
そんな夜だった。
その後、彼とは何もない。
きっと、何もないほうがいい。
でも、公園の夜と、サクレのすっぱさだけは、
どうしても忘れられない。
サクレを見かけるたび、彼の気の抜けたあくびがあたまに浮かぶ。
切ない、彼のあくび。
少し自分の体験も含まれています。
読んでくれてありがとうございます。
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