直売所が閉店していた。それでも「新米だけは」と開いた扉
久しぶりに、農産物の直売所へ出かけました。
ところが、着いてみると店は閉まっていて、入口には大きな貼り紙がありました。
「7月31日をもって閉店しました」
えっ、閉店?
思わず、貼り紙を二度見しました。
毎年、弟へ送っていた新米
ここで販売されていたミルキークイーンは、とてもおいしいお米です。
毎年、新米が出るころになると、ご先祖さまのお盆に間に合うように、千葉に住む弟へ送っていました。
「今年は、もう送れないのか……」
残念な気持ちで店の周りを見ていると、搬入口のほうに明かりが見えます。
近づいてみると、そこにも貼り紙がありました。
「新米だけ販売します。4日・8日・11日」
今日は、なんと4日!
閉店の貼り紙を見て沈んでいた気持ちが、一気に明るくなりました。
店内に並んでいたのは、新米だけ
そっと戸を開けると、お母さんと娘さんでしょうか。お二人が笑顔で招き入れてくださいました。
店内に並んでいたのは、新米だけ。
いつものように野菜が並ぶにぎやかな光景はなく、がらんとした店内が寂しく感じられました。
「閉店されたのですね。寂しくなります」
そうお伝えすると、気候の影響で、野菜に雨が必要な時期に降らず、思うように入荷しなくなったのだと話してくださいました。
暑い、暑いと言いながら過ごしてきた今年の夏。
野菜が高くなったり、育ちにくくなったりしていることは知っていました。
けれど、まさかその影響が、地域の農産物直売所の閉店にまで及んでいるとは……。
驚きを通り越して、言葉を失いました。
店の奥に残っていた市指定のごみ袋
店の奥を見ると、市指定のごみ袋が並んでいました。
生活に必要なものですから、新米と一緒に買うことにしました。
すると、お二人はどこか気の毒そうな表情をされました。
閉店した店内で、残っている商品を買う私。
その光景を、お二人はどのような思いで見ておられたのでしょう。
長く続けてこられた直売所を閉めることになり、どれほど悔しく、寂しい思いをされていることか。
そう考えると、かける言葉もありませんでした。
直売所は、買い物だけをする場所ではなかった
直売所は、野菜やお米を買うだけの場所ではありません。
季節の移り変わりを感じたり、珍しい野菜に出会ったり、生産者さんの顔を思い浮かべたりできる場所です。
「今年も新米が出たね」
そんな何気ない会話ができる場所がなくなるのは、やはり寂しいものです。
それでも、「新米だけは販売します」と戸を開けてくださったお二人の笑顔に、温かな気持ちになりました。
今年も、弟へふるさとの新米を
閉店を知って驚き、今年は弟に送れないのかと落ち込み、最後には新米を手にしてホッとする。
ほんの短い間に、気持ちは上がったり下がったり。
まるでジェットコースターのような買い物になりました。
今年も、ご先祖さまのお盆に合わせて、千葉の弟へ新米を送ることができます。
届いたお米を囲みながら、弟もきっと、ふるさとの味を懐かしく思うことでしょう。
「当たり前」ではなかった直売所のある風景
いつも当たり前のように買えていた野菜やお米。
けれど、その当たり前は、天候に向き合う生産者さんや、販売してくださる方々の努力に支えられていたのだと、改めて気づかされました。
猛暑や少雨の影響は、気温や降水量の数字だけでは見えてきません。
地域の小さな直売所が静かに扉を閉じたことに、この夏の厳しさを突きつけられた気がしました。
新米を買うことができた喜びと、もうこの直売所へ来られない寂しさ。
二つの思いを抱えながら、店をあとにしました。
