双子座、沼恋編 届かないと分かっているのに、爽やかすぎるアイドルに恋をした。気づけば私の生きがいは「推し」になっていた
この物語は、恋愛フィクション小説です。皆様楽しんでくださいね💗
1.出会った瞬間、心を奪われた
アイがハヤトを知ったのは、ほんの偶然だった。
その日、何気なく見ていた動画に、ひとりのアイドルが映っていた。
爽やかな笑顔。
明るい声。
誰にでも優しく接する姿。
その人の名前は、ハヤト。
「なんだろう、この人……」
アイは、思わず画面を止めた。
もちろん、アイドルなのだから、手の届かない存在だということは分かっている。
それなのに。
胸の奥が、きゅっと締めつけられた。
その日から、アイの毎日は少しずつ変わっていった。
2.最初は「ちょっと気になるだけ」だった
最初の頃、アイは自分に言い聞かせていた。
「別に、推しってほどじゃないし」
動画を一本見る。
SNSを少しチェックする。
新しい写真が投稿されていたら、眺める。
ただ、それだけ。
そう思っていた。
けれど、人の心というものは不思議だ。
「もう寝よう」
そう思ってスマートフォンを置いても、数分後にはまた手に取っている。
ハヤトの新しい投稿がないか確認する。
今日は何をしているのだろう。
今、どこにいるのだろう。
そんなことばかり考えてしまう。
気づけばアイは、ハヤトのことを考えない時間のほうが少なくなっていた。
3.いつの間にか、沼の中
ある日、ハヤトがテレビに出演していた。
アイは、その姿を夢中になって見つめていた。
歌っている。
笑っている。
メンバーと楽しそうに話している。
そのすべてが眩しかった。
「好き……」
アイは、ぽつりと呟いた。
その瞬間、自分でも分かってしまった。
もう、後戻りできない。
アイは完全にハヤトという沼に落ちていた。
どれだけ見ても、もっと見たくなる。
知れば知るほど、もっと知りたくなる。
届かない存在だと分かっているのに、心だけはどんどん近づいていく。
それが、アイには怖くて。
そして、たまらなく幸せだった。
4.届かない恋だと分かっている
アイは現実を分かっている。
ハヤトは人気アイドル。
たくさんのファンがいる。
毎日のように仕事があって、たくさんの人に囲まれている。
そんなハヤトと、自分が恋人になるなんて。
きっと、夢のまた夢。
だから、アイは最初から期待なんてしていなかった。
「私のことを知ってもらわなくてもいい」
そう思っていた。
ただ、ハヤトが笑っていてくれればいい。
元気でいてくれれば、それでいい。
自分の人生とは交わらない世界にいる人。
それでも、その人を好きになったことだけは、誰にも否定されたくなかった。
5.推し活が、アイの生きがいになった
ハヤトを好きになってから、アイの生活にも小さな変化が起きた。
朝起きたら、まずハヤトのSNSを確認する。
仕事が終わったら、新しい動画を見る。
休日には、過去のライブ映像を何度も繰り返し見る。
新しいCDが出れば予約する。
雑誌に載っていれば買う。
グッズが発売されれば、少しずつ集める。
それは、他人から見れば単なる「推し活」かもしれない。
でもアイにとっては違った。
ハヤトを応援する時間は、生きることそのものだった。
疲れた日も、落ち込んだ日も。
ハヤトの笑顔を見るだけで、また明日を頑張れる。
それは、とても大切なことだった。
6.「好き」が心を救ってくれる
アイには、何もしたくない日もあった。
仕事で失敗した日。
人間関係で傷ついた日。
自分に自信をなくした日。
「私って、何のために頑張っているんだろう」
そんなふうに思ってしまう日もある。
でも、そんな夜には必ずハヤトの動画を見る。
ステージの上で輝くハヤト。
一生懸命歌うハヤト。
ファンに向かって笑うハヤト。
その姿を見ると、不思議と心が軽くなる。
「明日も頑張ろう」
そう思えるのだ。
届かない恋でもいい。
一緒になれない恋でもいい。
自分の心を救ってくれる存在がいる。
それだけで十分だった。
7.会えないからこそ、恋しくなる
それでも、時々寂しくなることがある。
ライブの映像を見ながら、アイは思う。
「一度でいいから、直接話してみたいな」
もし会えたら。
もし目の前にハヤトがいたら。
何を話すだろう。
「ずっと応援しています」
きっと、それしか言えない。
たったそれだけの言葉を伝えるために、アイは何度も想像する。
でも現実には、ハヤトは遠い。
テレビの向こう。
ステージの上。
スマートフォンの画面の向こう。
手を伸ばしても届かない。
その距離が、逆にハヤトへの想いを強くしていた。
8.双子座のアイは、恋すると止まらない
双子座のアイは、本来なら好奇心旺盛で、ひとつのことに執着しすぎないタイプだった。
新しいものを見つけると興味を持ち、楽しいことがあればすぐに飛び込む。
でも、そんなアイがここまで夢中になる相手は珍しい。
それがハヤトだった。
好きだと思ったら、とことん知りたくなる。
昔のインタビューまで探してしまう。
過去のライブ映像を見つければ、夜遅くまで見てしまう。
「こんなに好きになるなんて……」
自分でも笑ってしまうくらいだ。
けれど、アイはもう分かっていた。
これは一時的な熱ではない。
自分の心の中に、ハヤトという特別な場所ができてしまったのだ。
9.恋人にはなれなくても、特別な人
ある夜、アイはハヤトのライブ映像を見ながら考えていた。
「この人と私は、きっと交わらない」
そう思うと、少しだけ胸が痛んだ。
でも、そのあとでアイは笑った。
「それでもいいか」
恋人じゃなくてもいい。
名前を覚えてもらえなくてもいい。
ハヤトの人生に、自分が登場しなくてもいい。
自分の人生に、ハヤトがいてくれる。
それだけで、十分なのかもしれない。
恋とは、必ずしも結ばれることだけが答えではない。
好きな人がいる。
その人を応援できる。
その人を見ることで、明日を頑張れる。
そんな恋の形があってもいい。
10.推しは、心の中にいる
それからもアイの毎日は続いていく。
朝、ハヤトの写真を見る。
昼、仕事を頑張る。
夜、ハヤトの動画を見て笑う。
時々、ライブに行く。
時々、グッズを眺める。
そして、また明日を迎える。
「ハヤト、今日も頑張ってね」
スマートフォンの画面に向かって、アイは小さく呟く。
もちろん、その声がハヤトに届くことはない。
それでもいい。
自分の「好き」は、自分の中にちゃんとある。
誰かを好きになることで、毎日が少し楽しくなる。
誰かを応援することで、生きる力をもらえる。
それは、とても素敵なことだと思う。
11.沼から出るつもりはない
友達からは、よく言われる。
「アイ、ハヤトにハマりすぎじゃない?」
「ちょっとは現実の恋もしなよ」
その言葉に、アイは笑って答える。
「分かってるよ」
もちろん分かっている。
ハヤトはアイドル。
自分とは違う世界に住んでいる。
それでも。
「好きになっちゃったんだから、仕方ないじゃん」
そう言って笑う。
沼に落ちたなら、もう無理に抜け出さなくてもいい。
だって、その沼の中には、たくさんの幸せがあるから。
12.届かないからこそ、大切にしたい
アイは思う。
恋には、いろいろな形がある。
実際に付き合う恋。
一緒に未来を作る恋。
別れても忘れられない恋。
そして、永遠に届かないかもしれない恋。
そのどれが正しいということではない。
ただ、自分の心が誰かを好きになった。
その気持ちは、それだけで本物なのだ。
だからアイは、これからもハヤトを応援する。
ハヤトが幸せなら、それでいい。
ハヤトが笑っていてくれたら、それでいい。
そして、自分もその笑顔から元気をもらいながら、自分の人生を生きていく。
13.いつか恋が終わる日が来ても
もしかしたら、いつかアイはハヤトを追いかけなくなる日が来るかもしれない。
新しい人生の出来事が起きて、別の何かに夢中になる日が来るかもしれない。
でも、そのときもきっと忘れない。
毎日がつらかった時期に、ハヤトの笑顔に救われたこと。
何も頑張れなかった日に、推しの存在が自分を立ち上がらせてくれたこと。
誰にも言えなかった寂しさを、ハヤトの歌がそっと埋めてくれたこと。
恋が終わったとしても、思い出まで消えるわけではない。
心を支えてくれた時間は、ずっと自分の中に残っている。
14.今日もアイは、ハヤトに夢中
夜。
ベッドに入ったアイは、最後にもう一度だけハヤトの写真を見る。
爽やかな笑顔。
きらきらした瞳。
「おやすみ、ハヤト」
もちろん返事はない。
それでもアイは笑った。
届かない恋。
叶わないかもしれない恋。
それでも、こんなにも誰かを好きになれる自分を、少しだけ誇らしく思う。
人生には、心を動かしてくれる人が必要なのかもしれない。
アイにとって、それがハヤトだった。
恋人にはなれなくても。
直接会えなくても。
名前を呼んでもらえなくても。
ハヤトを好きになったことで、アイの毎日は確かに輝き始めた。
だから今日も、アイは沼の中。
幸せそうに笑いながら、大好きなハヤトを応援している。
「明日も頑張ろう」
そう思わせてくれる人がいる。
それだけで、アイには十分だった。
(了)
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