散文詩:証《#シロクマ文芸部》
……夏休み。
僕は『証』を求め続けていた。
『行ってきます』
『行ってらっしゃい』
『ただいま』
『おかえりなさい』
名前を呼べば、振り返る。
そんな、呼吸のような当たり前。
僕の色は、無色透明だった。
--あの夏、君は旅に出た。
ひっそりと。
誰も知ることのない旅路へ。
旅支度は、どうやらたった一人きりで
済ませたらしい。
何も持たずに。
そのままの姿で。
君の残したものは、
くだらないものばかりだった。
叶わなかった予定表。
色のない写真。
残酷なまでに時を刻み続ける時計。
そこは、僕の知らない
君の色で満たされていた。
僕は、そんなくだらないものの中から
今日も君の残した『証』を探す。
部屋に遺されていた、君の欠片。
聞こえてくるのは、僕の声だけ。
僕の透明は塗りつぶされていく。
後悔という名の色に。
もう戻ることのない、当たり前だった
あの日々に……。
だからこそ、君の欠片は
僕が拾っていくよ。
傷だらけになりながら。
……これが、
僕と君の『証』だ。
🍀今回、こちらのお題に参加させていただきました。
ありがとうございました。🙇♀️
