掌編小説:満ちる光、還る夜#3つのお題に空想のひらめきを【第26回】
かつて、彼女は愛と美を司る女神だった。
彼女のモチーフは、宇宙の誓いを編んだ星屑のティアラ。
ある時、理不尽は風となって神殿を吹き荒れた。
彼女は女神の座から引きずり下ろされ、すべての権能を奪われた。
その瞬間、頭上にあったティアラはきらめきを散らしながら砕け散り、ただの冷たい残骸となって足元に転がった。
広大な廃墟となった夜の神殿。
彼女はそこに座り、夜ごと、遠い月に祈りを捧げることしかできなかった。
「どうか、再び光を取り戻せますように…」
ある満月の夜。
祈りの声に誘われ、どこからか紅の羽をもつ時鳥が彼女の元に舞い降りた。
ふと目を落とすと、時鳥は小さな魔法瓶を咥えていた。
彼女がその魔法瓶を手に取ると、時鳥は月の方へ飛び去ってしまった。
フタを開けると、瓶にはこぼれた月の光がそっと宿った。
それ以来、彼女は泣くことをやめ、少しずつ月の光を集めることにした。
それは、失った権能ではなく、自らの手で集める希望の営みだった。
こぼれ月の魔法瓶が満ちた頃、その清らかな光を一滴、砕けたティアラの残骸に注いだ。
月の雫がティアラに触れた瞬間、星屑は月の光と溶け合い、形は変わり、新たな力強い光を放ち始めた。
「私は進む」
自らの手で再生した光を手に、彼女がそう決意した瞬間、どこからともなく時鳥の鳴き声が空に響き渡った。
愛と美の女神はここに終わった。
その名は、夜空にひそやかに刻まれた。
かつて愛を司った彼女は、いまや理不尽と戦った者の象徴として。
了
今回、片桐みかんさんの
『3つのお題に空想のひらめきを 第26回』
に参加させていただきました。
お題はこちら。
第26回 3つのお題
お題①:「星屑のティアラ」
お題②:「紅(くれない)の羽を持つ時鳥(ほととぎす)」
お題③:「こぼれ月の魔法瓶」
ありがとうございました😊
#3つのお題に空想のひらめきを 【第26回】
