履いちゃえばいいじゃない
私が“おさぼり事務員”を務める我が社には、今どき珍しい昭和の慣習がいまだに残っている。
「社員旅行」である。
毎年、ボーナスがものすごくしょぼいのを旅行で還元する(ごまかす)かのように高級旅館に連れて行かれるのだ。
だが、今年は違った。
業績は昨年同様で悪化してもいないのに、
ケチりやがったのだ。
だって、日帰りバスツアーになったのだから。。。
「ケッ!経費浮いたならよぅ、ボーナスに還元しやがれっ!!ケチが!!えぇい!!こうなったら経費で買ったアルコールを全部飲んだるわい!」
悪態をつきまくる私は、普段ろくに仕事もしないでnoteばっか書いてる不真面目事務員のくせに、
いっちょ前にやさぐれて・・・・
朝6時半の集合から軽快にビールをがぶ飲みしはじめた。。。
そう。。。私はアルコールを愛し、アルコールに愛された女。つまりのんべぇなのだ!
誰よりも酒に強い体を持っているため、うら若き20歳の頃、新入社員として配属された日に開催された私の歓迎会で、いくら飲まされても最後まで正気を保ち、最後はラスボスの部長までブッつぶしたという伝説を持つ女なのだ。
「酔っ払っちゃった」と可愛くしなだれかかる技術も持ち合わせぬまま非モテ街道を爆進し、気づけば誰にも心配されない『悲しきモンスター』として裏街道を歩んできたわけだが、まさか三十数年後、会社の経費回収の最終兵器として役に立つとは、人生分からないものである。
ところが、こんな自慢の肝臓を持っている私も、膀胱は人並み・・・いや。50過ぎて人並み以下に落ちぶれていたのだということに、缶ビールを立て続けに2本飲んでから気が付いてしまったのだ!!(危機管理能力ゼロ)
ちなみに午前中の目的地はお隣静岡県の、『久能山東照宮』。我が社から2時間ほどのドライブ。
2時間よ、ほんの2時間。
途中1回サービスエリアでのトイレタイムがあれば、余裕だと思ってたの。
なのに、そのトイレタイムから30分も経たぬうちに、あの、モゾモゾが来ちゃったのだ。ヤバいと思ったので一応到着予定を聞くと、あと40分ほどだという。。40分ね。。うん。充分やばい。。。
中年の膀胱はストッパーがない。
力を緩めればもう激流が押し寄せるのだ。
落ち着けわたし。スゥ~ハァ~。
外を眺めて気を落ち着けようとする。。。
あ。コンビニ!駐車場広いなぁ。バス停められるかも。。
あ。パチンコ屋。観光バス行けそうじゃね??
と外の景色を全部「観光バスが停まれるトイレ」基準で見てしまう。
せめて同僚と話して紛らわそうとしたら
彼もぽつり「俺トイレいきたいんだよね」。。。。んもう、会話もトイレかい!!
30分我慢したころには心も体もトイレトイレトイレトイレ!!
鼻かんだら鼻から出てきそうなぐらい全身が膀胱になっていた。限界だ!決壊間近!鳥肌まで立ってきた。スーハ―・・・スーハ―・・・ヒィヒィフゥ
するとバスはそんな私をあざ笑うかのような、うねうねカーブの山に入ってきた。なにせ久能山。ここにきての最終のカーブ!!頑張れ私、もうすぐよ!!だけど耐えられるのか?
いっそここで停めてもらって山道に。。いや、ダメよ。ここで力を抜いて立ち上がって決壊したら、(社会人として)まずい!職を失うわ!失業よ!
もうこうなったら。。と、
恥も外聞も、53年のプライドもすべて窓から投げ捨て、座席から渾身の悲鳴をあげた。
「運転手さん!!マ~~~ジでヤバいんでトイレ横づけで頼みます!!!」
運転手さん、よほど鬼気迫るものを感じたのか、あたしのまなざしにハイジャック犯のような危険な匂いを感じたのか、願いを聞いて観光バスを横づけ状態で到着。降りた私はウサイン・ボルト並みのダッシュで事なきを得たのだ。。。
という話を実家で母にしていた。
母は数年前の脳梗塞で左麻痺。車椅子生活だ。でも、トイレは自力で行くし、不自由な体で食事作りから何からこなし、イケメンには目がない、少女のようなひとだ。
そんな元気で明るい母だが、その日は悲しそうな顔をしてこう言ったのだ。
「膀胱といえばね、あたし。
夜、トイレに間に合わないことが増えてきてね。
ヘルパーさんに相談したら、紙パンツを勧められちゃった。。。」
年を取ったおのれへの絶望。
そして女としての恥じらい。悲しみ。。。
きっと母は私に寄り添ってもらいたかったのだろう。。。
だがすまない。
あなたの娘は普通じゃないんだ。
様子がおかしいんだ。
「え!いいじゃん。パックで買ったらあたしに何枚か分けてくれ!!」
「お母さん!あれはいいもんだよ!!なんならあたしゃ、毎日履いてもいいぐらいだね、もはやあたしにスカートめくりするやつもいないし!カッカッカッ」
怒涛の勢いで、前のめりに母のおこぼれを狙いに行く!!
そう。あたしはアレの経験者なのだ。先輩なのだ。
だって嵐の札幌ドーム公演に行ったのだから。。。。
オタク三種の神器よ。
ボンタンアメ
大福
紙パンツ
5万人収容のうち女9割の恐ろしい状況。
札幌ドームのトイレの数。。
周辺の店の少なさ。。。
冬の札幌の寒さ。。。
出発前、どうしよ、どうしよ!!とあわあわしている私に1級土木施工管理技士の資格を持つ姐さんが言ったのよね。
「履いちゃえばいいじゃない。トイレのない現場なんて普通に使うわよ」
え!!ぽろり。。。目からうろこ。
そうなの?あれは高齢者だけのものではないのか!?
え?待てよ。。あの何万人の中にはたくさんの同志がいるのでは?
みんな精一杯のお洒落をしながらも中身は。。。
そうかそうか。そうなのか!
いや。アレに全力で出そうと思っているわけじゃない。まさかの時のお守りなんだもの、あくまで!そうよ!!気に病むことないわ。
・・・結果。お守りの効果は素晴らしく無事ライブを楽しめたわけです。
そして、はたと思った。
久能山でも履いていたら、苦悩しなくてもよかったのでは。くのうざんだけに。。。
・・・・。
今のは忘れてください。照
とにかく、そんな斜め上の私の力説に母は
「そっか。そうよね!!」
嬉しそうに笑った。
そうだよ。恥ずかしいことなんかじゃない。
履けばいいじゃない。
すべては人生を楽しむための装備なのだから。
ところで。
そういえば私、あの日、久能山東照宮で大吉を引いたんだった。
あれか。ご利益はこれか。
漏らさずに済んだことと、
母が笑ってくれたこと。
なるほど。
手を合わせて
「世界平和それと。どうぞ金運を!!カネカネカネカネ、金を!!おねがいします」
と、ほぼ9割がた「よこしまな願い事」をした酔っ払いなのに、見事に大吉を賜ったわけです。
東照大権現様、ありがとう。
あ。でも、、、
次の社員旅行も日帰りバスツアーなら。
金運より先に紙パンツをください。
いや、やっぱり…。
カネカネカネの方もお忘れなく。。(強欲)
東照大権現様、どうかお忘れなきよう。
。。あと、世界平和も
ちゃんちゃん
追伸:
紙パンツ業界の皆様。この推し活全盛の昨今、
あなた方は金脈を逃してはいけません!
今こそイメージアップの為にCMを作るのです!
「推し活にはこれ!」
「だよね~。ドームにはマストじゃね??」
推し団扇とペンライトを持ったかわいいオタク女子がほほ笑む。これよ!!
ほらほら、アレを全年齢対象とするべき時ですよ!
さすれば高齢者もヤングもウィンウィンなのです!
さぁ!さぁ!!
今こそ、紙パンツをお洒落アイテムに!!
