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山の暮らしの物語38 野いちごを摘む


< このシリーズは
  戦後、ある山村に実在した一家をモデルとして、創作したものです >   

「わぁ〜 ここにいっぱいあるよ」

林のそばの茂みで
メイちゃんが、はずんだ声をあげた。

木洩れ日のさす茂みに
赤い実があちこち見え隠れしている。

従姉妹どうしの ゆきちゃんとメイちゃんは
ゆきちゃんちの谷川沿いの小径で、野いちごを探していた。

メイちゃんは春から一年生になって
二年生のゆきちゃんといっしょに小学校に通っている。

「うぁ〜 ようけある!」
ゆきちゃんも、大喜びで駆けよった。

二人は、小さな青竹の筒を手にしている。
ゆきちゃんの父さんが作ってくれたものだ。

苺をとっては、竹筒にポイッと放りこんでゆく。

野いちごは、畑の苺と違って小さな粒々なので
この竹筒に入れると、持ち歩くにもちょうどいい。

苺が少したまったら
細い棒で グッチュン グッチュン と突っついて
つぶれた甘い苺が赤くからまった棒を、ペロペロなめる。

ちょっとお行儀がわるいけど、これが楽しいのだった。

「あはは、ゆきちゃん 口が真っ赤!」
「メイちゃんだって、ほら こぼしてる〜」

二人は、水辺に腰かけて、笑いながら苺を味わった。
小さな魚が群れになって泳いでいる。

谷の向こうに咲いているのは、ピンクのつつじみたいだ。
どこかでウグイスが鳴いている。
夏も近いというのに、なんだか下手くそだ。
まだ練習中らしい。

あたりは、むせかえるような新緑で、お日様がまぶしい。

さんざん歩きまわって、帰って来ると
縁側では、母さんとメイちゃんちのおばちゃんの話が、はずんでいた。

弟の文ちゃんは、座敷をはいまわっているし
メイちゃんの妹 結衣ちゃんは 庭先をよちよち歩いている。

今日は日曜日で、おばちゃんは結衣ちゃんをおんぶして
メイちゃんを連れ、母さんに会いに来たのだ。

三人は、夕方近くまで遊んで、帰って行った。
メイちゃんの家までは、山道を歩いて1時間近くかかるだろう。


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